本部長マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

11月8日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「拡大続く“デジタル赤字”と右肩上がりの“金の価格”その訳」というテーマでお話を伺いました。

(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保


◆金利の上昇で私たちが受ける影響は?

浜崎:宗さま、今回は「拡大続く“デジタル赤字”と右肩上がりの“金の価格”その訳」についてお話しいただけるということですが。

やしろ:国の金利が本格的に上昇というニュースを最近よく目にしますが、私たちの生活にどのような影響がありそうでしょうか。

宗正:個人レベルで影響が一番大きいのは、住宅ローンでしょうね。借入額が大きいので、ほんの少し金利が上がるだけでも、かなり影響が大きくなります。

やしろ:(ローン利息だけで)何百万円、何千万円単位だったりもしますよね。

宗正:住宅ローンの借入期間は35年くらいのものが多くて、金利が上昇すればする程、返済額は1.1倍、1.2倍、1.3倍……というように、すぐに膨らんでいきます。個人以外にも金利の上昇で借入金の多い企業は支払利息が増えて、業績の悪化につながる可能性があります。

金利が上昇すれば株式市場も上値を抑えられがちです。金利が上がれば預金利息も連れて増えるので、安心安全な預貯金に資金が移動しやすくなるからです。

国家レベルでも、金利が上昇すると日本の国債価格は下がります。そうなると日本の信用力の低下につながり、引いては円安につながる。つまり、金利の上昇は日本の財政赤字問題にも直結しています。

やしろ:今のお話を伺っていると、利上げは良くないことのほうが多い印象を受けますが、その辺りはどうなのでしょうか?

宗正:本来は物価高(対策)と、景気の過熱感を抑えるための利上げです。金利を引き上げて、世の中の資金の動きを落ち着かせる、抑えることがその目的なのですが、今の局面では「利上げ=マイナス」の面ばかりが目立ちます。

それは物価高に賃金上昇が追い付いていない、追い付く前に金利の上昇が始まったからです。金利が動くことに違和感を抱く人が多いのは、今まで数十年間ずっと金利が動かなかったからです。ただし、今までの方がイレギュラーで、動き始めた今が通常の状態だということを認識する必要がありますね。

やしろ:通常の状態に戻った?

宗正:その通りです。本来、物価が上昇する、金利が上がるということは、一国の経済成長に不可欠な要素です。だからこそ日本を含む先進国の多くは、物価上昇率2%を目標にしています。物価が上がれば企業業績が改善します。改善すれば働く人の賃金が増えて、賃金が増えれば、個人消費が活発になって景気が良くなる。このサイクルが上手く回る水準が物価上昇率2%です。

やしろ:物価上昇に賃上げを追い付かせなきゃいけないという話は、ここ1~2年ずっとされていますよね。今やっと物価上昇と利上げが重なって、本当に後は賃金が上がれば、いよいよいろいろなことの条件が揃ってくるという訳ですね?

宗正:はい、いよいよそのタイミングです。

やしろ:是非とも景気の良い状況を見たいです。僕らの世代は社会人としてバブルを経験していないので。

宗正:私は最後のほうのバブル末期の時代を経験しています。金利が高い水準から下がってきて、その後の横ばいの期間が日本は長かったのですが、そこから金利上昇に転じた。ここまでが金利循環の1サイクルなんですよ。

だから、本部長の今のお話の通り、金利が上がる経験をしたことのない若い世代が圧倒的に多い。でも不安にならないでください。金利が動いてこそ、通常の状態に戻りつつあるということです。

やしろ:景気が良くなることを信じて、ということですね。

宗正:ええ、信じてください。私も付いています。

やしろ:それは頼もしい(笑)

◆海外のITサービスに課金すればするほど膨らむ「デジタル赤字」

やしろ:私は今の円安で海外旅行を取り止めましたし、個人レベルでは既に円安の影響が出ています。円安になると、国と国との間のやり取りでもその影響は大きいですよね?

宗正:分かりやすいのは貿易です。例えば家電や自動車などの輸出額が輸入額よりも大きいと貿易黒字、逆が貿易赤字ですね。昨年2022年の貿易収支は、約20兆円の貿易赤字でした。つまり、海外にものを売るよりも、輸入するほうの金額が大きかったということです。その最大の要因は、円安でした。

貿易収支の他に、注目すべき収支にはサービス収支があります。サービスって、目に見えないですよね。例えばサービス収支には旅行があります。日本から海外旅行に行って旅行者が海外にお金を落とせば、サービス収支はマイナスの赤字。逆に日本国内への旅行者が増えるインバウンド増加では、サービス収支は黒字になります。

近年、国際収支の中のサービス収支の赤字額がどんどん膨らんでいますが、主な要因の1つが「デジタル赤字」です。日本から海外のITサービスへの支払いが増えれば増えるほど、「デジタル赤字」は膨らみます。

やしろ:「デジタル赤字」って何だろう? と思っている方も多いと思います。具体的には、GoogleやAppleなどのサービスに私たちが支払っているお金も含まれますか?

宗正:含まれます。一般にGAFAM(Google、Apple、Facebook<現:Meta>、Amazon、Microsoft)と呼ばれる海外のIT大手企業への支払いも「デジタル赤字」につながります。定額で見放題のサブスク動画、スマホで聴く音楽アプリなど、その多くは海外企業への支払いが伴います。

やしろ:そうか。私たちが使っているITサービスの支払いの多くが、海外に流れているんだ。

宗正:パソコンやスマホなど、リスナーの皆さんのワンクリック・ワンタッチが「デジタル赤字」になってしまいます。

◆「金」の価格が右肩上がり その理由と具体的な投資方法を解説

やしろ:最近、資産運用や投資の分野で注目を集めている金(きん)。その金の価格が、ずっと上がり続けていますよね。

宗正:過去の金価格の推移を見ると、あのときに投資をしておけば良かったと感じる方も少なくないと思います。金の価格が上がる主な要因は大きく5つです。

まず1つが需要に対する供給量が少ないとき。野菜や魚と同じ価格形成です。2つ目が経済情勢や金融の先行きに不安要素があるとき。3つ目が、地政学リスクが表面化したときで、最近ではイスラエルパレスチナ情勢がそうですよね。4つ目は海外から金を輸入するケースが多いので、円安・ドル高のとき。そして5つ目が世界的に金利の水準が低いとき。

つまり、コロナ禍以降で、いま挙げたほぼ全ての条件が揃っています。金の価格は株式や債券と異なる値動きをします。しかも安定的なので、他の投資対象と一緒に保有すればリスク分散にも効いてきます。金って、そのもの自体にも価値があるじゃないですか、そもそも全体の量にも限りがある。だから金の価格は上がり続ける訳です。

やしろ:今、地政学的リスクが表面化したときに金の価格が上がるというお話がありましたが、金の価値が上がれば上がるほど、本当に戦争などのリスクがあって危険だよっていう見方をしている人もいますよね。

宗正:有事の金って言いますよね。不測の事態のときこそ金だと。ただ、安く買って高くなったときに売るのが投資の鉄則です。不測の事態に買うのではなく、金投資の場合は不測の事態で売ってください。意外と誤解している人が多いです。

やしろ:僕もたまに考えちゃいます、金を保有してみようかと。金投資を始める場合、どんな方法がベストなのでしょうか?

宗正:金といえば金の延べ棒をイメージしますよね。

やしろ:金投資は金の延べ棒を買うのかなって思います。

宗正:どんな金投資も、直接的・間接的にあの金の延べ棒に投資する形にはなりますが、金の現物管理って、難しいですよね。

やしろ:そうですね。延べ棒を渡されても……っていうところはあるかもしれないです。

宗正:金の延べ棒は盗難リスクもありますし、災害などで無くなったり傷ついたりもします。触っていると(価値が)目減りするリスクもありますよね。

金の投資を始めようと思った方には、金の価格に連動するETF(上場投信)や一般的な公募投資信託が、物理的なリスク回避の面からも良いかなと思いますね。

実際の投資額の何倍もの売買ができる金の先物取引の話もよく聞きますが、あれは難易度も高いので、金の取引に慣れてからのほうが良いと思います。

金の積み立て、純金積立なんていうのもよく見たり聞いたりします。一定の手数料はかかりますが、現物管理は不要で安全性は高いですね。その他に、金の投資は株式や債券と税金の支払い対応などが違うので要注意、取引業者の現物の保管方法にも注意してください。

やしろ:ありがとうございます。もっともっといろいろなお話を聞きたい方は、AuDeeにて毎月10日、20日、30日に「宗正彰の愛と経済と宗さまと」を配信しておりますので、そちらもチェックして頂けたらと思います。宗さま、今月もありがとうございました。

宗正:ありがとうございました。

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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「拡大続く“デジタル赤字”と右肩上がりの“金の価格”その訳」を解説