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気候に左右されないため、安定した栽培・供給が可能な豆苗

「えっ、トマトがこんなに小ぶりで1個200円!? 少し前は120円ほどだったのに……」

主婦でもある記者は、新宿区のスーパーを数店舗回って確認し、トマトの値段の高さにガックリ肩を落とした――。

このところの野菜の価格高騰が止まらない。スーパーの青果コーナーに行くと、あっと驚くような価格が並ぶ。

たとえば現在、ほうれん草は1束200円以上。ほんの数カ月前は確か130円前後だったはず。しかも以前より量が減っている。ほかの野菜も高額がズラリ(表参照)。これは家計を守る主婦にとっては頭が痛い。

「価格高騰の理由は、夏の猛暑の影響です。夏の高温のせいで種をまくのが遅くなったり、水不足や強い日差しによる日焼けもあり、発育不良などで売り物にならなくなる野菜が増えたからなのです」

こう話すのは愛国学園短期大学家政科准教授でナノ・ライフ創新研究機構招 聘研究員である古谷彰子先生だ。

そんな値上がりする野菜が多い中、今もっとも注目を集めているのが「豆苗」だ。1パック約100(70〜120)g以上あるものが、どこのスーパーでも98円くらい。記者が足を運んだスーパー数店でも、いずれも100円を切る値段だった。いずれの店舗も豆苗の売り上げが2~3倍以上アップしているという。

■生産元の売り上げはこの9~10月は約8割アップ

豆苗の生産大手である村上農園の広報マーケティング室・石田奈々子さんによると、

「豆苗は、一年中安定して高品質な品をお届けできるのです。当社では最新鋭の設備を備えた工場で豊富な水と徹底した温度管理のもとに豆苗を作っています。気候に左右されないため、安定した栽培ができます」

村上農園で豆苗を手掛けたのは1995年。2012年ごろから大きく生産が伸び始めたという。

「現在の売り上げですが、この野菜高騰の中で野菜相場が平年並みだった8月と比較して、9月・10月は約8割アップしています」(石田さん)

まさに“野菜高騰の救世主”ともいえる豆苗だが、栄養価も高い。

豆類に豊富なタンパク質やビタミンB群、緑黄色野菜に豊富なβ-カロテンやビタミンCなど、栄養バランスがバツグンの野菜なのだ。

「えんどう豆としての側面と新芽としての側面を持つため、豆でありながら緑黄色野菜という多面性を持った食材が豆苗です。動脈硬化や発がん作用の予防に役立つと知られるβ-カロテンとビタミンC小松菜とほぼ同程度に含まれています」(古谷先生)

■豊富なビタミンK骨粗しょう症や転倒を防ぐそして、古谷先生がさらに着目すべきだと言うのが、豆苗が持つ栄養素ビタミンKだという。

ビタミンKは丈夫な骨を作るのに不可欠な栄養素です。

本来、健康的な骨にはカルシウムビタミンD、タンパク質などが必要ですが、ビタミンKには、骨を作ってくれるオステオカルシンというタンパク質に働きかけて、カルシウムを骨に沈着させる作用があるのです。

豆苗およそ50Gで女性が1日に必要なビタミンKが補えてしまいます。骨粗しょう症が進みやすい更年期以降の女性には、カルシウムとともに特に摂っていきたい栄養素ですね」(古谷先生)

骨粗しょう症や、骨の弱さによる転倒などは寝たきりにつながる。そのためにも、骨を丈夫にし、健康な体を維持するのはとても重要なこと。

安くて栄養豊富な豆苗は、まさに“コスパ最強”野菜というわけだ。

今回、骨をさらに強くする豆苗レシピを、食のアドバイザーで栄養士の成田和子さんに提案してもらった。

「さまざまな健康効果が非常に高い豆苗ですが、料理のバリエーションも広いのです。炒めてよし、サラダによし、スープによし。さっと手早く調理するだけなので、とても便利な食材でおすすめです」(成田さん)

豆苗で“野菜・冬の時代”を乗り切ろう!

■栄養効果をパワーアップする最強豆苗レシピ!

<豆苗と卵・きのこのかき油ソース炒め>

▼材料(2人分)

豆苗 1パック卵 3個
塩 小さじ1/4A
牛乳 大さじ3
片栗粉 小さじ1しめじ 1/2パック
エリンギ 2本にんにく薄切り1片分オリーブ油大さじ2酒 大さじ1B
かき油ソース大さじ1
塩・こしょう 各少々

▼作り方

【1】豆苗は根を切り、4~5cmに切る。
【2】しめじは小房に分ける。エリンギは斜め薄切りにする。
【3】ボウルに卵を割りほぐしAを入れて混ぜる。
【4】フライパンオリーブ油大さじ1を熱し【3】を入れていり卵の要領で大きく混ぜながら八分火が通ったらボウルに戻す。
【5】フライパンに大さじ1のオリーブ油を追加し、にんにくを炒め香りが立ったら(2)を入れて炒め合わせ、きのこがしんなりしたらBを入れて混ぜる。
【6】【4】をフライパンに戻し、豆苗を入れて手早く炒める。

※骨を丈夫にするにはビタミンKのほか、タンパク質、カルシウムビタミンDなどが必要。卵にはタンパク質やカルシウム、きのこ類にはビタミンD、豆苗にはβ-カロテンも豊富。

<豆苗とじゃこのカリカリサラダ>

材料(2人分)

豆苗 1/2パック玉ねぎ薄切り 30gカニかま40gじゃこ 20g
ごま油 適量A
ポン酢しょうゆ 適宜塩・こしょう 各少々

作り方

【1】豆苗は根を切り、3~4cmに切る。
【2】フライパンごま油を熱し弱火でじゃこをカリッと炒める。
【3】豆苗、玉ねぎ、カニかまを混ぜて器に盛り、【2】を上からかける。
【4】混ぜたAをかける。※ビタミンKを含む豆苗と、タンパク質やカルシウムを含むカニかま、カルシウムたっぷりのじゃこが骨を強化する。なお、豆苗は生で食べるとビタミン類が失われずに取れる。

スーパーの野菜売場には、価格高騰のため、2分の1、4分の1にカットして販売している野菜も多い。

豆苗を食べて骨を強くして寝たきりを防ごう。