文=酒井政人 写真提供=アディダス ジャパン

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正月の駅伝を意識したコレクション

 アディダスが『ADIZERO EKIDEN COLLECTION 発表会』を開催。女子マラソンで従来の世界記録を2分以上も塗り替えた〝爆速ブランド〟が国内のシェア拡大を目指して、新たな一手を打ってきた。

 ADIZERO EKIDEN COLLECTIONはアディダス初となる「EKIDEN」の名を冠した包括的なアパレル&シューズのコレクションだ。年末年始の駅伝レースを強く意識しており、レッドとゴールドのアクセントを基調としたデザインが共通している。これは日本の最高峰である富士山が、朝日に照らされて赤く染まる「赤富士」をモチーフにしているという。

 コレクションに含まれているシューズは全7モデルになる(価格は税込)。爆速レーシング厚底モデルの『ADIZERO ADIOS PRO 3』(26,400円)、ハイパフォーマンスモデルの『ADIZERO BOSTON 12』(18,700円)、幅広いシーンで活用できる『ADIZERO SL』(14,300円)、エントリーモデルの『ADIZERO DURAMO SPEED』(9,350円)、タフな走り込みをしたいランナーに向けた『ADIZERO RC 5』(11,000円)、ルール度外視の超爆速モデル『ADIZERO PRIME X 2 STRUNG』(39,600円)。残り1足は今後発表予定のアップデートモデルだ。

 近年、アディダスは躍進を続けている。箱根駅伝のシューズシェア率は2021年に1.9%まで落ち込んだが、2022年は13.3%、2023年は20.0%と拡大中。ワールドマラソンメジャーズでは2022年大会の優勝者50%が『ADIZERO ADIOS PRO 3』を着用していたという。今年も絶好調で、ボストン、東京、ニューヨークシティを制すと、ベルリンでは超軽量厚底レーシングモデルの『ADIZERO ADIOS PRO EVO 1』を履いたティギスト・アセファ(エチオピア)が2時間11分53秒という驚異的な女子の世界新記録で突っ走った。

 世界のマラソンシーンで高いシェア率を誇っているだけに、箱根駅伝に向けても、「50%を中期的なベンチマーク、目標として、ランニングカテゴリーを強化していきたい」(アディダス マーケティング事業本部 ブランドアクティベーション シニアディレクター山本健氏)と気合と自信に満ちていた。なおADIZERO EKIDEN COLLECTIONは12月1日から順次発売となる。

平林は油そば、上原は猫が好き

 発表会にはアディダスとパートナーシップを結んでいる國學院大の前田康弘監督、平林清澄(3年)、上原琉翔(2年)が登壇。トークセッションでは両選手が「お互いに尊敬している点」と「誰も知らないお互いの素顔」についてボードに書き込んだ。

 上原から見た平林は、「競技一筋」で「油そばが好き」という印象があるようだ。

「平林さんは競技第一で、毎日夜遅くまでケアなどをしている。そこは見習うべきところだなと感じています。走ること以外好きじゃない、そんな人です。ただ土曜日は距離走が終わった後に、寮の近くにある油そば屋さんに毎週のように行っていますね。普通だったら食べやすいものを食べると思うんですけど(笑)」

 一方、平林は後輩の上原を「隠れた努力家」で「すごい猫好き」と分析している。

「上原は面白いやつなんですけど、練習は負けず嫌いで、すごく努力もしている。夜はトレーニング室にずっといてケアなどをしているんです。あと合宿に猫の写真集を持ち込むくらい猫が好きなんです。競技に向かう鋭い一面と、かわいくて平和な一面を持ち合わせている。すごくバランスがとれた選手なのかなと思います」

 11月5日全日本大学駅伝では上原が前半のポイント区間である3区を区間3位と好走。平林はエースが集結した7区で区間賞を獲得した。両選手はチームが「表彰台」を目標に掲げる箱根駅伝でADIZERO EKIDEN COLLECTIONのモデルを着用予定。「箱根もエース区間で勝負したい。個人としては区間賞の走りをして、てっぺんを狙っていきたいなと思います」と平林が言えば、上原も「前回は復路でしたが、今回は往路でまだ大学駅伝では手にしていない区間賞を目標に頑張っていきたいと思います」と頼もしかった。

 

前田監督が考える「てっぺん」を目指す戦略

 昨季は出雲2位、全日本2位、箱根4位。今季は出雲4位、全日本3位と國學院大は学生駅伝で〝主役〟の座に着々と近づいている。そのなかで前田康弘監督は今年の全日本大学駅伝の結果をどうとらえているのだろうか。

「全日本は『表彰台』という目標は達成できたんですけど、心のどこかにもっと上を目指したかったという悔しさがありました。ただ、箱根駅伝でもう一回チャレンジできる機会がある。前回は4位で表彰台に立つことができませんでした。箱根の借りは箱根で返すという気持ちが強いですから、今回は絶対に3番以内。できれば紫のチームをしっかり追いかけたいなと思っています」

 紫のチームとは前田監督の母校である王者・駒大だ。昨季は駅伝3冠を達成して、今季も出雲と全日本を完勝している。國學院大は正月決戦をどう戦うのか。

「今回は山で勝負したい。1~3区はある程度のメンツを置けると思いますし、6区は区間記録近くで走る可能性がある。ポイントは5区ですね。7~10区は駒大の方が上なので、その前にチャンスを作りたい。あとは前回のようなミス(主力選手が直前に故障)を起こさないように、箱根駅伝に向けてコンディションをしっかり整えていきたいです」

 目標の「表彰台」を確保する戦略を取りながら、さらに上を目指していく。アディダスユニフォームをまとう國學院大がナイキを着用する王者・駒大にチャレンジするときがやってきた。

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左から國學院大の上原琉翔、平林清澄