Netflixで配信スタートしたアニメ『PLUTO』より、このたびメインキャストの藤真秀らが「演じる際に意識したこと」と「PLUTOの世界観に近づきつつある未来に期待すること」について語るインタビューが解禁された。

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 1964年手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』の一編として絶大な人気を博した『地上最大のロボット』は、2003年に漫画家・浦沢直樹と長崎尚志のプロデュースによって『PLUTO』としてよみがえった。日本初のテレビアニメ『鉄腕アトム』の放送から60年となる2023年、『鉄腕アトム』の制作スタッフにも名を連ね、気鋭のスタジオ・MAPPAの創設者でもある丸山正雄の手によってアニメ化が実現した。

 声の出演では、主人公ゲジヒト役にスパイ映画の金字塔『007』シリーズや映画『ナイブズ・アウト』シリーズで好演を博したダニエル・クレイグ吹き替えを担当している藤真秀アトム役には『SHAMAN KING』(2021)の主人公・麻倉葉や『けいおん』の秋山澪など幅広い演技経験を持つ日笠陽子、そしてウラン役は『マクロスΔ』にてヒロインのフレイア・ヴィオンを演じ、今年歌手活動5周年を迎えた鈴木みのりら人気・実力ともに兼ね備えたキャストが名を連ねる。さらに、ゲジヒトやアトムと同じ世界最高水準の7人のロボットたちであるモンブラン役を安元洋貴、ノース2号役を山寺宏一、ブランド役を木内秀信ヘラクレス役を小山力也エプシロン役を宮野真守、物語の鍵を握るロボット・プルートゥ役に関俊彦と、浦沢直樹が描いたサスペンスドラマを実力派声優が彩る。

 作中では、<人間と同じように感情を表現するロボットたち>や<ロボットのみで構成された家族>、<ロボットと人間を識別するゲート>といった、現代には“まだ”存在しないテクノロジーが登場し、観る者の期待と興奮を高める要素となっている。一方で人工知能(AI)の進歩が日々進み、あらゆる産業で導入・活用され始めた私たちの生きる世界は『PLUTO』の世界観に加速度的に近づいているとも言える。本作で描かれるロボットの中でも特に高度な人工知能を持つ<7人の世界最高水準のロボット>を演じたメインキャスト達が「演じる際に意識したこと」と「PLUTOの世界観に近づきつつある未来に期待すること」について教えてくれた。

日笠陽子、“アトム”を演じる苦労を明かす「考えないとできないし、考えすぎてもできない」

 まず演じる際に意識したことについて、主人公であるユーロポールの特別捜査官ロボット・ゲジヒトを演じた藤は「お話をいただいた時のイメージとしては、高性能の刑事ロボットであり、ちょっと高圧的な印象を与えるような感じなんじゃないかなと思っていました。それと何に感情が動き、動かないのか、少し段階をつけた方がいいのかなと考えていました。人間からかけられる言葉にも、パッと分かることと、分からないことがある、変化をつけた方がいいのかとか、色々思っていましたが、現場で監督を含めて話した際に「いや、もっと人間としてやりましょう」という方向で進めていくことになったので、自分が思っていたよりも、ロボットというよりも人間にかなり近いところから始めたという印象はありますね」と非常に困難を極めたであろう高性能ロボットの演じ方を語っている。

 難しさについては日本が有する最高水準のロボット・アトムを演じた日笠も「(音響監督から)感情が伴ってないとすぐ見抜かれます。演じる時に全部考えた上で忘れて、それを全部感情でぶつけるっていうのが、私の中でも理想なのですが、考えることにとらわれすぎると、今度はロボット的なお芝居になってしまうし、考えないとできないし、考えすぎてもできないし、難しかったです」と語り、人間とロボットの違和感ない中間点を探っていたことがうかがえる。

 またアトムの妹・ウランを演じた鈴木と軍用ロボットでありながら、戦場を嫌うノース2号を演じた山寺からは、音響監督から共通のディレクションが。鈴木「誰であろうがなんであろうが、相手の気持ちに寄り添い、なんとかしてあげたいという優しさを持ちなさいと指示がありました」、山寺は「ノース2号の過去、そしてダンカン(ノース2号が仕える人間)との関係性の変化をしっかり考えて演じて欲しいと指示をいただきました。音響監督の三間さんは表面的な事よりも心の内を大事になさる方なので、安心して身を任せ、最終的には気持ちで演じたつもりです」と両者とも現代科学ではロボットにはないとされている心や気持ちの表現に重きを置いたことで、人間とほぼ変わらないロボットを見事に演じた。

 『PLUTO』の世界に近づくことで期待する未来について、藤は「色々な業種の人手不足や様々な問題をロボットに助けていただきながら、仲良くやっていければと思います」、鈴木「立場や役割を当たり前に共有し、人間もロボットも平等に生活できるようになったら、楽しいのではないかと思います!」、山寺「ニ次災害の可能性がある人命救助等の危険な作業・活動はロボットに期待したいです」と各々ロボットとの共生していく明るい未来を口にした。

宮野真守が「某ロボットのパイロット」として未来社会に期待することとは

 またオーストラリアが生んだ最高水準のロボット・エプシロンを演じた宮野は、仕事で感じたことを教えてくれた。「とあるロボット技術特集の番組のナレーションをさせていただいた時に、今の技術の進歩に衝撃を受けました。人間のように滑らかに動くし、激しい動きもする、しかも失敗をくり返して、プログラミングをし直してさらに出来る動きを学習していくんです。ロボットが失敗している姿を見ると、ロボットも努力しながら失敗を繰り返して経験値を積んで、今の驚異的な姿があるんだなと感じました。その時にこれはアトムの世界、そして『PLUTO』の世界だなと思ったんです」。

 さらに自身が過去演じたとある作品を引用し「アニメに登場するような巨大ロボットを作るには、本来はとてつもなく足を太くして、顔はちょこんとした作りじゃないと成立しないと、子どもの時に何かの雑誌で読んだことがあって、夢のまた夢なんだなって思っていたら、今はそれこそ僕が乗っていた某作品のロボットに近いものが出てきているんです!」と興奮気味に語っていた。

 インタビュアーの「そういった未来はワクワクしますか?」という問いには「します。やはり某ロボットのパイロットとしては思いますよね(笑)」とファンも思わず二ヤついてしまうような回答も。ロボットと人間、それぞれの感情を通して生まれるヒューマンドラマとしての一面も存分に感じられる本作は、混迷の時代である今、私たちが刮目すべき作品と言える。

 Netflixシリーズ『PLUTO』は、Netflixにて独占配信中。

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