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(写真:時事通信

「劇団側の会見には、落胆したファンも少なくないようです。Aさんの遺族は“上級生から額にヘアアイロンを押し付けられた”と主張しましたが、劇団側はパワハラやいじめを否定。故意だとは認めませんでした。遺族側は再検証を求めましたが、新理事長に就任する村上浩爾取締役(56)は『証拠があるならお見せいただきたい』とコメント。このような対応は解決に導くどころか、火に油を注いでいます」(全国紙記者)

今年9月に宙組に所属する劇団員のAさん(享年25)が急死した問題を受け、11月14日に会見を行った宝塚歌劇団

公表された調査報告書では「いじめやパワハラは確認されなかった」と結論付けられたが、遺族側の代理人弁護士が「事実認定と評価は失当であり、劇団と上級生の責任を否定する方向に誘導している」と反論するなど波紋は広がるばかり。

入団7年目だったAさんは、下級生のまとめ役である「長の期」を務めていた。しかし亡くなる直前の1カ月間、労働時間は400時間以上に。1日の睡眠時間はわずか3時間で、実質的な休日はなかったという。

Aさんが置かれていた環境が明るみになるなか、劇団側と交わしていた契約内容が“ブラック過ぎる”として物議を醸している。

「劇団側は過密スケジュールによる過重労働や上級生による指導で、Aさんの心理的負担を増大させた可能性を認めました。いっぽうでAさんが劇団側と結んでいた契約は、業務委託契約。劇団では入団5年目までは労働契約を締結し、6年目以降は業務委託に移行するとのことです。

しかし遺族側の代理人弁護士は11月10日の会見で、『実質的には労働契約だった』と指摘。本来であれば、業務委託契約を交わした契約者間の関係は対等とされるはず。しかし実際の契約内容には“劇団が決定した方針に従わなければならない”“劇団の許可を得ずに他所で演技や歌唱をしてはいけない”など、時間的・場所的に拘束力の強い規定が並んでいたのです」(前出・全国紙記者)

“劇団側と従属関係にあった”とみなされかねない契約内容に、ネット上では改めて批判が続出。

《令和の奴隷契約》
《時代錯誤やなぁ。”伝統”のアクの部分をうまく取り除ければよかったけど》
《こういうの契約の種類がどうであれ人間扱いしていないかのような働かせ方を強要する人間の遵法意識ってどうなってんだよ人の心とかないんか?

さらに《このままだと娘を宝塚受験させない親が絶対に増えると思う。受験生の大幅減は質の低下に繋がるので、120周年はなんとも言えないが、130周年はもう迎えられないかもしれないね…》、《娘とか身内が入りたいとか言い出したら、喜んで送り出すんかなぁ。入団者減りそうよね》と、劇団の衰退を危惧する声も上がっている。

「娘役だったAさんは、衣装やヘアアクセサリーまでも自作していたそうです。タカラジェンヌになるには宝塚音楽学校に合格する必要があり、入学後はダンスや声楽、日本舞踊などを2年間特訓。受験生の多くはスクールに通うなどし、狭き門を突破するために努力を重ねています。しかし華やかなステージの裏では、劣悪な労働環境が待ち構えているとなれば失望するのでは。“娘を預けられない”と考える保護者もいるでしょうし、このままでは入団希望者も減ってしまうかもしれません」(舞台関係者)

14日の会見では、「伝統の中で守っていくべきものも間違いなくある」と断言していた村上取締役。初公演から109年にわたって「清く、正しく、美しく」を掲げてきた伝統はいま、大きく揺らいでいる。