仮面ライダーシリーズ最新作『仮面ライダーガッチャード』のオンエアを記念して、ファンが待ちに待ったスペシャルイシューが今年も発売! 10月16日に発売された『週刊プレイボーイ』44号では「歴代仮面ライダーヒロインが大集合!!」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちがこぞって登場。水着グラビアの最新撮り下ろしやインタビューなど、それぞれの仮面ライダー愛がほとばしる内容となった。

その特集より歴代ヒロイン5名のインタビューを、週プレNEWSに再掲載。今回は『仮面ライダービルド』(2017~2018年)で滝川紗羽を演じた滝裕可里さんが登場。各方面から情報収集をして、主人公・戦兎たちの戦いを陰でささえるジャーナリスト。かつては敵組織のスパイとして仮面ライダーの情報を探っていたこともある。今回の取材では、作品から得たものや当時の心境などを語ってくれた。

【画像】滝裕可里さんが演じた滝川紗羽

――滝さんは、東映Vシネマ作品『仮面ライダーW RETURNS』(2011年)への出演が『仮面ライダー』シリーズとの出会いだそうですね。

 はい。あれは『週刊プレイボーイ』がきっかけなんですよ。

――え? そうなんですか?

 たまたま出たグラビア(2010年32号)を坂本浩一監督が目にして、オファーをくださったんです。しかもその後、東映さんから『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(2012年)、再び坂本監督から『ウルトラマンギンガS』(2014年)に呼んでもらって。だから『仮面ライダー』シリーズをはじめ、特撮作品の関わりは週プレさんが原点なんですよ(笑)。

――それはなんとも嬉しいお言葉です。では『仮面ライダービルド』はどんな経緯で出演することに?

 オファーをいただきました。『ビルド』は主要キャストが全員20歳過ぎと、珍しく大人ばかりの作品だったんですけど、中でもまとめ役というか、よりお姉さん的な存在が欲しかったらしくて。「(滝さんと)一緒にいると現場の雰囲気がよくなるよ」と関係者から聞いて、声をかけてくださったみたいです。そんなふうに人柄で選んでいただけたのはすごく嬉しかったですね。

滝裕可里さんが演じた滝川紗羽 ©️石森プロ・東映
滝裕可里さんが演じた滝川紗羽 ©️石森プロ・東映

――滝さんが演じた滝川紗羽は、犬飼貴丈さん演じる主人公・桐生戦兎らをサポートするフリーのジャーナリスト。どんなイメージで演じられました?

 最初、台本に細かな設定は書いてなかったんですけど、滝川だし、滝川クリステルさんみたいにクールでデキる女だと思ってました(笑)。でも全然違ってて。ママチャリを漕いで戦いに駆けつけたり、アントニオ猪木さんの物真似で戦いの実況をしたり。あと変装して潜入したり、カーアクションをしたり、やたらドタバタというか、アクティブなキャラでした。明るいキャラは大好きなので、演じていてひたすら楽しかったですね。

――特に印象に残っているエピソードはあります?

 なんといっても第11話(『燃えろドラゴン』)と第12話(『陰謀のセオリー』)です。

――紗羽の正体が敵のスパイだったことが明かされ、さらに紗羽はスマッシュ(怪人)に変身して仮面ライダーと戦うという、じつに衝撃的なエピソードでした。

 台本を見た時は「そうきたか!」と(笑)。仲間だとばかり思っていた紗羽が裏切り者で、怪人にもなるなんてびっくりです。演じるにあたっては、視聴者に「とんでもないヤツだ!」と思われるよう目線の置き方や話し方の抑揚など、"イヤなヤツ感"を意識しました。あと第12話はラストもすごく印象に残っていますね。

――怪人から人間に戻った紗羽を、戦兎たちが再び仲間に迎え入れるシーン。みんなが夕食を取っている場に半べそをかきながら「おなかすいた~」と叫んで、その輪に加わります。

 「許してくれてありがとう」などでなく、「おなかすいた~」ってパンチがありますよね(笑)。演出をした諸田(敏)監督と現場で相談して決めたセリフなんですけど、リアルに家族同士のやりとりをしているような暖かい感じがしました。

――キャスト間は仲がよかったんですか。

 めちゃくちゃよかったです。犬飼くん、赤楚衛二くん、ガボちゃん(高田夏帆)ら主要キャストとはすぐ打ち解け、ご飯にもよく行きました。特にガボちゃんとはディズニー、ユニバはもちろん、旅行にも行ったし、今でもよくウチに来ます(笑)。もはや家族くるみの付き合いをしていますね。

――ライダーの現場はとりわけ厳しいと聞きますけど、滝さんは苦労されたりしました?

 私自身、芝居で何か言われたことはないですね。ただ他のキャストで厳しく指導されていた人はいました。もちろんスタッフ全員、作品愛があるから時折、厳しくなるのはわかるんですけど、その厳しさが逆に場の空気を暗くしているなと感じたこともあって。そういうときは私から皆さんに「ちょっと休憩しません?」みたく言うことはありました。

――まさにお姉さん的存在というか。それこそ当初の期待通り、滝さんがいたことで現場が明るくなったことも多かったんじゃないですか。

 だったら嬉しいけど、どうでしょう(笑)。そういえば、『ビルド』は途中から、武田航平くん、水上剣星さんが主要キャストに加わったんですけど、その二人と私は、犬飼くん、赤楚くん、ガボちゃんらより年上で。物語の最終盤に差し掛かった頃、三人だけで食事に行って、"大人会議"をしたことがありました。仮面ライダーは一年間の長丁場。疲れもあるし、やはりずっといい雰囲気ってわけにはいかないんです。で、誰かがネガティブなモードになると、それが伝染して、さらに悪い雰囲気になっちゃう。そこで若い三人の負担を減らそうって。

――何かしたとか?

 具体的に何かとかではなく、要所でさりげなく声をかけたりするとか。少しでも彼らが気持ちを楽に演じられるよう常に配慮しました。そうしたら現場の雰囲気はよくなって、キャスト陣の結束はさらにかたくなりました。

――そんな舞台裏があったとは。見事なチームワークです。滝さん自身にとって『仮面ライダービルド』はどんな位置付けですか?

 役者というより、人生そのものの中でも最大の転機になった作品です。現在、私はヨガのインストラクターもやっているんですけど、そのきっかけとなったのは『ビルド』なんです。

――そうなんですか!?

 当時は毎日、早朝から夜まで過酷な撮影。しかもそれが一年以上も続く。ある時、何もしないままだと自分がただすり減っていく気がしたんです。そこでジムにでも行って体を動かし、リフレッシュしようかと思いましたけど、なかなかそういった時間も取れない。そんな時、ヨガと出会いました。ヨガなら自宅で無理なくできますから。毎朝、ヨガをして心身をしっかりリセット。また現場まで1時間かけて自転車で通いました。おかげで万全の状態を保ち、一年間の撮影を完走できました。もし『ビルド』に出演していなければ、その後の人生も大きく変わっていたと思います。

――ちなみに『仮面ライダー』『ウルトラマン』の2大シリーズに出演した滝さんにとって特撮の魅力は?

 ファンタジーの世界だから人生の根幹を表現できることですね。たとえば「正義とは何か?」とかみたいなセリフも、普通のドラマでは気恥ずかしくてなかなか言えないけど、特撮だったら堂々と言えますから。しかもそれを子供が見る。幼い時期に生き方の指針を学べるのもいいと思います。役者としては、特撮はスタッフたちが熱いことが魅力です。ディテールにこだわり、空想の世界を現実のものに見せようと奮闘している。現場にいて自分もその熱にほだされ、とりわけいいものを作ろうという気持ちになりますね。

――滝さんは特撮の中でも「スーパー戦隊」シリーズだけレギュラー出演されていないんですよね。やはりいつかは出たいと思います?

 すごく思います。しかも悪役のレギュラーをやってみたいです。これまでヒロインやヒーローの関係者、あるいは途中からヒーロー側につく悪役などは演じたことはありますけど、完全な悪役をやったことってじつはないんです。でも悪役がいるからこそ、ヒーローたちは輝くわけで。これまで数多くの特撮作品に出演させていただいた経験を生かし、今度は周りが輝くためのポジションをやってみたいと思っています。

●滝裕可里(たき・ゆかり)
1987年10月14日生まれ 大阪府出身
○13歳で映画『Star Light』に主演し、デビュー。映画『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(2012年)、ドラマ『ウルトラマンギンガS』(2014年)ほか特撮作品へも数多く出演。現在は女優以外に、ドッグトレーナー、ヨガインストラクターとしても活動している

取材・文/大野智己 撮影/荻原大志

『仮面ライダービルド』に出演した滝裕可里さん