円谷プロダクションの創立60周年を記念して円谷プロの代表的な作品をセレクトして上映する「円谷映画祭2023」が開幕。11月17日には、セレクションを担当した庵野秀明によるトークイベントがTOHOシネマズ池袋で行われた。イベントでは、庵野が楽しそうに“ウルトラセブン愛”を熱弁。会場を大いに盛り上げた。

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11月17日〜30日にパート1、12月1日〜14日にパート2が行われる「円谷映画祭2023」では、55周年を締めくくる企画として庵野がセレクトした4エピソードを4K上映する「4K『ウルトラセブン』」や、今年で放送開始50周年となる「ウルトラマンタロウ」の特別上映のほか、「ウルトラセブン」製作の裏側に迫る貴重なドキュメンタリー作品など、魅力的なラインナップが揃った。

「4K『ウルトラセブン』」では、全49話のなかから、第4話「マックス号応答せよ」、第8話「狙われた街」、第14話「ウルトラ警備隊西へ 前編」、第15話「ウルトラ警備隊西へ 後編」がセレクト上映された。上映後には拍手が沸き起こるなど高揚感に包まれた会場に姿を現した庵野は、スクリーンを見あげながら「4:3なのが残念ですね。ちょっと横が足りない」と話し、観客も大笑い。「でもこの大きさで観られるのはいいですね」と目尻を下げた。

1967年10月から1968年9月まで放送された「ウルトラセブン」を、小学校低学年のころにリアルタイムで楽しんでいたという庵野。当時は「ウルトラセブン」に込められた社会的なメッセージは「難しいなと思って観ていた」そうで、大人になるにつれて本作の魅力を深く感じるようになったという。とりわけ等身大で登場する頻度が高い点が好きだと明かし、「僕がセブンの好きなところは、登場した時は等身大であるところ。ウルトラマンみたいに大きくなるものだと思っていた。人間と同じ大きさで活躍しているのが、衝撃だった。正直、子どものころはそれが不満だったけれど、大学のころに『これがいいんだ!』と気づきました」と膝を打ち、「ようやくそのよさに気づいた。19、20歳にならないとあのおもしろさはわからない」と持論を述べた。

さらに「セブンのよさって、ちょっと年を取らないとわからない」と続けた庵野は、「アニメの監督では押井守という人が、『ウルトラセブン』を大好きなんですね。放送当時、あの人は中学生。なんで中学生がこれを観ているんだって話ですから」と声を大にして再び会場を笑わせつつ、「小学生が観るのは普通。なんで中学生が…。でもそれくらい『ウルトラセブン』は魅力があったんですね」と押井監督のファン心理に寄り添っていた。

セレクトした4作品は、「大画面で観ておもしろそうなものを選んだ。特撮が大画面向きなもの」とのこと。「等身大だと、アイスラッガーもそんなに威力がないんだと思った。たいした殺傷能力がないのが衝撃だった」、「モロボシ・ダンは女性に弱い。まんまと騙される」など魅力とも言えるツッコミどころもたっぷりと語り、会場も大盛り上がり。「ウルトラセブン」初の長編となった14、15話に触れると、「子どものころに、今回のセブンはなんとなく構え方が違うと思った。構えがグーじゃない。後で中に入っていた人が違うと知った」と少年時代から細かいところまで凝視していたことを明かし、「そういうところばかり見ていました」とコメント。前編が危うしセブンというところで静止画で終わる場面も、「興奮した。萌えますよね」と強力な敵との戦いにシビれたという。

幼少期から愛している特撮について、庵野は自身の創作の原点であると公言している。「ウルトラセブン」は「どのような影響を与えのか?」と聞かれた庵野は、「侵略テーマにきちんと触れたのは、これが初めてだった。防衛軍という組織が存在して、宇宙人が攻めてくるのがパターン。そういった侵略テーマにすごく惹かれたのは、セブンからかなと思います」と吐露。「一番大きなインパクトがあったのは、最初のウルトラマンになってしまう。セブンは、そこから外そうとしている作り手の皆さんの苦悩も含めて、いいなと思う。セブンは、“真っ赤な人が夜にポツリと立っている”という画が、すごくいい」と終始“ウルトラセブン愛”をあふれさせた。最後には「『ウルトラシリーズ』は本当におもしろい。『A(エース)』も『タロウ』も『レオ』も『80』『ティガ』も。『ティガ』以降は観ていないのですみません」と正直に語りながら、「円谷さんにはいろいろおもしろいものがある。『ミラーマン』とかもおもしろいです。ダメな回もあるんですが(笑)。『怪奇大作戦』もいい」と作品をどんどんあげ、円谷ファンが集った会場から大きな拍手を浴びていた。

取材・文/成田おり枝

終始楽しそうに“ウルトラセブン”への想いを語り、会場も大盛り上がり!