もう「軽自動車で十分」の声多数! 凄すぎる最近の軽の前に「リッターカー」の存在価値はあるのか比較してみた

この記事をまとめると

軽自動車と国産のリッターカーを比較した場合、どちらに優位性があるかを考察してみた

軽自動車のほうが経済性だけでなく快適性や多様性など多くの面で優れている

軽自動車は各メーカー同士で凌ぎ合いが行われているため商品力が飛躍的に高められている

日本でもっとも売れる軽自動車は車種の選択肢も多い

 日本でもっとも売れているクルマは、たとえば2023年4~9月の上半期では、軽自動車ホンダN-BOX(2代目)。その販売台数は10万409台にもなり、コンパクトカーを含む登録車を含めても第1位だったのだ。

軽に押されっぱなしの国産リッターカーの存在意義はどこにある

 つい最近、先代(2代目)N-BOXの最終型に試乗したのだが、乗り心地、巡行時の静かさ、走り全体の質感の高さに改めて驚かされたものだ。まだ未試乗だが、3代目となる新型N-BOXの商品力、走りはさらに進化し、磨かれているはず。

 スズキ・ハスラーも、現行型登場時点でクラス最上の乗り心地を示し、東京~軽井沢往復をなんなくこなし、下手なリッターカーを上まわる快適性、実用性を実現していたことを思い出す。ターボモデルならなおさらである。

軽に押されっぱなしの国産リッターカーの存在意義はどこにある

 税金、維持費面でも有利な(お得な)軽自動車は、なるほど日本市場専用車として、日々の足からちょっとした遠出までをこなしてくれる国民車であることは言うまでもない。車種も豊富で、筆頭人気のスーパーハイト系、ハイトワゴン系、セダン系、そしていまではダイハツ・コペンだけになってしまったが、オープンスポーツまで揃い、ホンダ軽自動車メインの自動車メーカーであるスズキダイハツだけでなく、トヨタなどからもOEM車が販売されている。

 一方、国産リッターカーは軽自動車に押されているのか、いまでは少数派だ。新車で買えるのはトヨタヤリストヨタ・パッソトヨタ・ライズトヨタ・ルーミー、ダイハツ・ブーンダイハツ・ロッキーダイハツトールスズキ・クロスビーぐらいのもの。ちなみにホンダ・フィットは1.5リッター、スズキ・スイフトトヨタ・ルーミーと同種のスズキ・ソリオは1.2リッターだから、リッターカーとは呼べない……。

軽に押されっぱなしの国産リッターカーの存在意義はどこにある

 では、軽自動車と国産リッターカーを比較するとどうなのか? まず異なるのはすでに説明した税金面はもちろん、ボディサイズとエンジンの排気量で、軽自動車は全長3400mm、全幅1480mm、全高2000mm以下、エンジンは3気筒が主で排気量は660cc以下に規定されている。コンパクトカーに属するリッターカーはいわゆる登録車のカテゴリーに属し、5ナンバーとなるサイズは全長4700mm、全幅1700mm、全高2000mm以下。エンジンの排気量は2000cc以下(リッターカーは1000cc前後)となる。

 しかし、室内空間のゆとり、後席の広さでは、小型車のリッターカーに対して、むしろ軽自動車のスーパーハイト系やハイトワゴン系が勝っている逆転現象が起こっている。たとえば2代目(先代)ホンダN-BOXは、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、前席頭上に290mm、後席頭上に265mm、後席膝まわりに驚愕の最大420mm(シートスライド位置後端)ものスペースがあり、車内は前後席ともに解放感、広々感たっぷり。ただし、限られたボディ全長から、ラゲッジスペースの奥行は後席膝まわり空間とバーターとなり、N-BOXの場合、最小410mmとなる(後席スライド位置によって最大600mmまで拡大可)。

軽に押されっぱなしの国産リッターカーの存在意義はどこにある

 一方、リッターカーを見てみると、さすがにトヨタ・ルーミーのような、スーパーハイト系軽自動車をサイズアップして小型車化したような両側スライドドアを持つハイトワゴンなら、同、前席頭上に270mm、後席頭上に190mm、膝まわりに最大385mmものスペースが確保され、先代N-BOXには敵わないものの、室内に十分以上のスペースがあり、その上でラゲッジスペースの奥行は500~740mm(後席スライド位置による)と十分すぎるほど。

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 が、トヨタヤリスのような容量系、ハイト系ではないコンパクトリッターカーになれば、前席はともかく、後席はいまどきの軽自動車に比べ、圧倒的に狭いのも事実。目の前にN-BOXヤリスが並んでいて、後席乗車限定でドライブに出かけるとしたら、筆者を含む多くの人が、後席の居住性から軽自動車N-BOXを選ぶに違いない……はず。

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国産リッターカーの優位性はかなり限定的

 動力性能では、さすがに排気量の大きい(といっても1リッターだが)リッターカーが圧倒有利……と思うのは間違い。たしかに1リッターガソリンエンジンと660ccの軽自動車のエンジンをNAエンジン同士で比べれば、リッターカーの1リッターエンジンが有利だ。

 しかし、軽自動車のエンジンがターボになると話は別。たとえばトヨタヤリスGの1リッターNAエンジンのスペックは車重970kgで69馬力、9.4kg-m。ヤリスと同じリヤヒンジ式ドアの軽乗用車ホンダN-WGNカスタムのLターボは車重870kgで64馬力、10.6kg-m。パワーで接近し、トルクでは軽ターボが上まわり、なおかつ車重が軽いため、シーンによっては軽ターボ優勢となったりする(ターボ同士ならまた話は別だが)。

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 ただし、N-WGNカスタムのLターボ(FF)の価格はけっこう強気な178.42万円。ヤリスG、CVT(FF)は164.5万円と、N-WGNターボの場合、リッターカーのほうが安くなるケースもままあるのだ(N-WGNのNAモデルなら130万円~だが)。ここは悩ましい……。

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 もっとも、軽自動車の魅力として、N-BOXスペーシアタントルークスのような両側スライドドアを備えたスペース系からデリカミニ、タフト、ハスラーのようなクロスオーバーモデル、そして新車ではコペンのようなオープンスポーツカー、さらに日産サクラ、三菱ekクロスEVといったいまをときめく先進の電気自動車、ホビーユースとしてスズキスペーシアベース、ホンダN-VANダイハツ・アトレーといった軽商用車までが選べる選択肢の幅広さがある。リッターカーだとハッチバック、ハイトワゴン、クロスオーバーモデルが選べるものの、その選択肢は、軽自動車に対してかなり限られてしまう。

 さらに、いまの軽自動車は下手なリッターカーより先進運転支援機能が充実し、たとえばリッターカーのクロスビーにない電子パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能などまで装備する車種(ホンダ、日産、ダイハツ、三菱)も数多く、軽自動車は安全装備などでリッターカーに劣る……ということはまったくないのである。

軽に押されっぱなしの国産リッターカーの存在意義はどこにある

 よって、価格、維持費、扱いやすさを含め、街乗り中心なら圧倒的にリーズナブルに乗れ、しかも室内空間広々のNAエンジンの軽自動車で十分だし、たまに高速道路を走るのであれば、先進運転支援機能のACCまで備わる軽乗用車ターボモデルを選択すれば、かなりの満足度が得られる時代になっている。

 とくにセカンドカーとして選ぶのであれば、ランニングコストでの優位性が際立ち、リッターカーにないサクラやekクロスEVのような電気自動車はさすがに高価だが、補助金によって価格はグンと下がり、時代の先端を行く選択ともなる。

軽に押されっぱなしの国産リッターカーの存在意義はどこにある

 そのうえでリッターカーの優位性を考えれば、ライズ、ロッキーにあるリッターターボモデルの人数乗車でも高速走行、山道の登坂路を楽々こなす動力性能のゆとりナンバープレートが黄色じゃなく白い……ことなどだろうか。

 言い方を変えれば、ここ最近、国産車があまり力を入れていないリッターカーに対して、車種が圧倒的に多い軽自動車は全方位の商品性を各自動車メーカーが凌ぎあい、飛躍的に高めてきている、とも言えるのだ。最新のN-BOXや、ジャパンモビリティショー2023で初公開され、11月に発売される新型スペーシアに触れれば、それも納得できるのではないか。

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