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はじめに

ポルシェオペルの長い歴史を振り返ると、創業当時も今もたいして違わないクルマを作り続けていることがわかるはずだ。ポルシェは相変わらず高級スポーツカーメーカーであり、オペルは中級実用車のブランドのままである。

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いっぽうで、想定以上の守備範囲拡大を、比較的短期間に行うものもある。スウォッチメルセデス頭文字、そしてアートを組み合わせて命名されたブランド、すなわちスマートもそのひとつだ。当初は、大手自動車メーカーとスイスのお手頃ウォッチメーカーが、その腕時計の精神を具現化したシティカーを作るのが目的だった。

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テスト車:スマート#1プレミアム    JACK HARRISON

GoogleやAppleが証明したように、クルマづくりというのは門外漢の副業としてはタフすぎる。そこでスウォッチは、経験豊富なメルセデスをパートナーに選んだのだ。それでも、クルマづくりの厳しい現実が身に染みたスマートは、徐々に求めていたものとは異なるプロジェクトへと変化しつつあることに気づいた。

やがてスマートは、全面的にメルセデス・ベンツの管轄となり、凝ったミニマムなクルマだけのラインナップから、三菱のメカニズムをベースにしたコンパクトカーのフォーフォーも加えたものへと移行していく。その後は、ジーリーが50%出資する合弁会社となった。

この新体制下で最初の製品である今回の#1は、フォルクスワーゲンID.3やプジョーe−308などと競合するハッチバックEV。中国や韓国のメーカーも参入する競争の熾烈な市場だけに、かつてのフォーフォーが当時得ていた評価以上のものを求められている。

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

ベースとなるのは、ジーリーのサステイナブル・エンジニアリング・アーキテクチャー(SEA)。これは、ボルボEX30やジーリーの高級ブランドであるジーカーで使用され、ある意味ではロータス・エレトレとも関連する。

もちろん、それらのプラットフォームはまったくの同一ではなく、サイズも設計も大きく異なるので、#1とエレトレが同じコンポーネンツで作られているわけではない。しかし、EX30やジーカーXとはかなりの共通点がある。これらはリアに271psのモーターを積むベーシック版と、フロントにもモーターを追加した428psの高性能版が用意される。

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プレミアムとローンチエディションは共通、プロ+は別デザインの空力形状ホイールを装着。ブラバスはよりスポーティなものだが、すべて19インチだ。    JACK HARRISON

総容量66kWhというバッテリーは、それら関連モデルよりやや小さいが、ニッケルマグネシウム・コバルトという組成は同じ。エントリーモデルは総容量51kWh/実容量49kWhのリン酸鉄・リチウムとなるが、これはボルボでも使用されるものだ。最大充電性能は66kWh版が150kW、51kWh版が130kWだ。

ストラット/後マルチリンクというサスペンションの仕立ては予想の範疇内だが、フロントよりリアのディスク径が大きいブレーキセッティングは一般的ではない。これはEVが重いこと、またフロントにより大きいディスクを備える2モーター仕様と部品共用していることが主な理由だ。

メカニズムはジーリー由来だが、エクステリアはメルセデステイストが色濃く、V字型の前後ライトをライトバーで繋いだスタイルはEQモデルに似たもの。ただし、メルセデスほどお堅い感じではなく、遊び心が感じられる。シェイプはより丸みを帯び、ベースボールキャップのようなルーフラインや、フレームレスのウインドウ、上反りしたサイドシルなどを備える。

空力を意識した処理も多く、ほとんど開口部がないホイールやボディパネルとツライチのドアハンドルなどを採用。そのわりに0.29というCd値は高めだ。

これは、ボディサイズが一因だろう。スマートは#1をシティSUVと呼ぶが、大きなホイールと低めの地上高はハッチバック的だ。ところが、クプラ・ボーンよりやや短いものの96mmも背が高い。よりSUV的なキア・ニロと比べても、66mm高いのである。

内装 ★★★★★★★★☆☆

全長は、MG4やルノーメガーヌE−テックより長く、クプラ・ボーンやキア・ニロEVより短いが、室内は広い。後席レッグルームは、クラス最大とはいえないが、大人が過ごすには文句なしだ。

とはいえ、荷室は物足りない。313Lという容量は、キア・ニロの475Lどころか、MG4の363Lにも及ばない。それでも形状はスクエアで、床下には使い勝手のいいスペースがある。後席スライドも、多少はプラスになっている。シートを前に出した際の荷室とのギャップは、カーペットでカバーされる。それでも、これより実用性の高いライバルは多い。

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メルセデス的なデザインだが、スマートらしい明るさを感じるキャビン。タッチディスプレイも使いやすいが、ミラー調整くらいはハードスイッチにしてほしいところだ。    JACK HARRISON

前席は、エクステリアと同じテイストがあり、メルセデスらしさを強く感じさせる。丸みを帯びたセンターコンソールに小物入れが3つ並ぶ眺めはじつにメルセデス的だ。しかし、スマートらしい明るさが盛り込まれている。

実用性は高く、フロアには大きなものを置けるトレイが設置されている。パールホワイト仕上げも斬新で、グロスブラックのように指紋が目立たない。なお、ホワイトのシートを選ぶと、メタリックグレー仕上げになる。

たしかに、硬いプラスティックも多用されているが、12万ポンド(約2244万円)のEQSではないので、それも仕方ないことだ。全体的には、ソフトなマテリアルが表面の広範囲を覆っていて、そこはクプラやMGには見られない要素だ。

インテリアの各部には、白いつぶれたドーナッツのようなモチーフが多用されている。ヘッドレストの横やダッシュボード、充電ケーブルのハンドルにもそれが見受けられる。テスト車は黒革を張った仕様だが、それでも明るく開放的で楽しげな雰囲気のキャビンだ。

そのフィーリングをもたらしているのが、立ち気味で大きなガラスハウスだ。その点で、メガーヌE-テックとは正反対といえる。

荷室が小さいのを別にすれば、大きな不満はひとつ。最近のクルマではよくあることだが、実体ボタンが不足している。ディスプレイを介しても空調や二次的機能へダイレクトにアクセスできるので、操作性はいいほうだ。それでも、サイドミラーの調整にメニューを呼び出さなくてはならないのでは、イライラしてしまう。

走り ★★★★★★☆☆☆☆

ライバルの多くが150kW=204ps程度にとどまる中、スマート#1はプラットフォームを共用するボルボなどと同じく、271psを発生する。必要かと問われれば、絶対ではないのだが、あって悪いというものでないのはいうまでもない。そのため、直線加速ではライバルたちを易々と退ける。

0−100km/hの公称タイムは6.7秒だが、われわれのテストではやや湿り気味の路面でも5.9秒をマークした。7.2秒だったクプラ・ボーンが161km/hに達するタイムで、#1は180km/hのリミッターが作動する。ギア比がとくに低いわけではない。1000rpmで11.3km/hというのは、キア・ニロEVと大差ない。

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パワーはあるが、スロットルもブレーキもペダル操作に対するレスポンスが予期しづらく、運転しにくさにつながっている。    JACK HARRISON

テストコースの路面が整ったストレートでは、ブレーキ性能は模範的だが、現実的なコンディションでは綻びが見えはじめる。バンピーな路面でのハードブレーキングでは、ABSが効いて、不安とは言わないが、奇妙なジャークが出てしまう。

もっとおかしいのが、スロットルペダルのチューニング。はっきりいって、並外れてプアだ。なによりもまずリニアではない。ストロークの残り半分は、ほとんど無駄になっている。操作に対するレスポンスの遅れが常にあり、それから望んだパワーが出る。そのパワーの出方も、スポーツモードではかなり早く、エコモードでは苦痛なほど遅い。そのため、ドライバーは正確なスロットル操作の感覚を身体で覚えることができないのだ。

回生ブレーキセッティングは3段階で、スタンダード/ストロング/E−ペダルから選べる。最初のふたつは文字どおりの内容で、3つめはワンペダル運転が可能になるが、コースティングモードがないのはデメリットにつながる。

加速と同じような遅れが、減速でも生じる。セッティングとは無関係に、ペダルを離すと、1秒ほど空走したのちに回生ブレーキが効きはじめる。その後は、回生量を調整することができるものの、それを可能にするペダルトラベルの範囲はきわめて狭い。

結果的に#1は、運転が疲れるクルマになっている。回生がゆっくり効きはじめる上、わずかに減速したり、50km/h前後を維持しようとするとガツンと制動してしまうからだ。

使い勝手 ★★★★★★☆☆☆☆

インフォテインメント

今年はじめに左ハンドル車を試乗した際、英国導入時にはApple CarPlayとAndroid Autoが採用されると確約を得たので、この10月に借りたテスト車でスマートフォン接続を試みたのだが、なにも起こらなかった。その後のOTAアップデートで追加されたかもしれないが、われわれはそれを試すことができなかったのである。

もっとも、車載システムの出来がじつにいいので、ミラーリングなしでもほとんど問題はなかった。ホーム画面は開いたスペースに、簡潔なナビゲーションやトリップコンピューター、メディア情報などを見やすく表示。空調パネルは常時表示される。ショートカットはレーンキープやエネルギー回生、ESCなどを素早く切り替えできる。純正ナビの出来もいい。

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テスト車にスマートフォンのミラーリング機能はなかったが、必要を感じさせないほど車載システムが優秀。ただし、音声操作はあまり使えなかった。    JACK HARRISON

カートゥーンフォックスは見送ったほうがいい。だいたい5つくらいのアニメーションには、1日くらいで飽きてしまう。音声操作はほとんど役に立たない。初見の人物に応対するロボット的な音声は薄気味悪い。

燈火類

プレミアムとブラバスの各仕様は、サイバースパークスLED+と銘打ったマトリックスヘッドライトを備える。ただし、パワーに特別なところはなく、アダプティブビームの制御は荒いので、あえてアップグレードする必要は感じない。

ステアリングとペダル

配置はきわめて一般的。オルガン式のスロットルペダルは、ライバルの多くが備える吊り下げ式より、長距離運転がやや楽になる。

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

後輪駆動で前後重量配分は49:51、しかも低重心とくれば、優れたドライバーズカーの構成要素が揃っている。AMGではないメルセデスにファンな要素がしっかりあることはレアだが、しつけが行き届いていて、B級道路を飛ばしても満足できるものになっていがちだ。#1は、そこがやや不足している。主要な点は悪くないのだが、とにかく独特な走りの個性に欠けている。

ボディコントロールについては、特筆するような欠点はない。まずまず水平を保ち、バンプの扱いも平均的だ。グリップも適度にあるが、今回のコンチネンタルより、以前に試乗したダンロップSPスポーツマックスのほうが上だった。ステアリングは、ギア比も手応えも直感的で、大きな負荷をかけるとわずかに硬くなるが、フィードバックを多く伝えてくることはない。

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ESCを切らなければ、コーナリングは穏やかで、抑えが効き、想定の範囲内。スイッチオフにすると、スロットルを緩めたりブレーキをかけたりしたときに、リアが外へ出る。    JACK HARRISON

路面が濡れた峠道風のテストコースでは、ESCへの依存度が高い。完全には切れないが、部分的にオフにすると、スロットルを抜いたりブレーキをかけたりすると回ろうとする動きが強まる。湿ったコーナーの脱出では、リニアでなく遅れのあスロットルペダルを踏み込んでからやや間を置いてクラッチを蹴飛ばしたようにパワーが出て、急激で予測できないオーバーステアが発生する。

それもスキッドパッドでは楽しめるが、とにかく予測不能に起きるので、スロットルでアジャストできるクルマにはなっていない。そうはいっても、それに気づくドライバーはほとんどいないだろう。ESCオフボタンに触れなければ、電子制御はスムースにパワーを抑えて、ドラマティックな状況には持ち込めないからだ。

そのため、普段の走りは地味で印象に残らない。シャシーにとってもっと悪い事態はもちろんあるが、BEVであればモーターでは生み出せないなんらかの個性をシャシーで出してほしいと求められるものだ。MG4やクプラ・ボーンといったライバルは、それを実現している。

快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆

乗り心地は特別硬くも柔らかくもないし、制御はタイトでもルーズでもない。もう少しダンピングのクオリティが高ければ、乗り心地のいいクルマになるはずだ。

現状はおおむね穏やかだが、やや減衰が足りず、アンジュレーションではボディの動きが多少大きすぎるときがある。タイヤも、路面の穴を踏むとぎこちなくガタガタした走りとなる。

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静粛性は高いが、乗り心地に際立ったところはない。シートは、形状や調整機能に改善の余地ありだ。    JACK HARRISON

全体的にみれば、洗練性はかなり高いのだが、その要因は優秀な遮音性だ。113km/h巡航時の室内騒音は、このクラスではとくに静かだったクプラ・ボーンと同レベルだ。それでも、テスト時には雨が降っていたので、窓に打ちつける雨粒が1dBAくらいはうるさくしていたかもしれない。

それに比べて、シートはあまりよくない。エントリーグレードのプロでも電動調整は備わるが、座面は短くチルト機構がないので、背が高いテスターは落ち着かなかったようだ。

また、背もたれはフラットすぎて、ランバーサポートも十分ではない。調整式ではあるが、かなり大雑把で、シート形状そのものの不足を埋め合わせるほどではない。

購入と維持 ★★★★★★★★★☆

価格は、3万5950ポンド(約672万円)のプロ+からで、テストしたプレミアム仕様は3万8950ポンド(約728万円)。オプションは1262ポンド(約24万円)の牽引パッケージのみで、有償ボディカラーの設定もない。プロ+でも装備は充実していて、同じような内容でこれより安いのはMG4くらいだ。

それでも、残価予想が芳しくないので、クプラやキアに比べてコストパフォーマンスは劣る。とはいえ、プジョーe−2008ジープアヴェンジャーよりは上で、マイナーチェンジしたテスラ・モデル3ともいい勝負だ。

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残価予想は適度なものだが、クプラには勝てない。さらに、安価なMGにもコスパで敵わない。

充電性能は上々。ピークの150kWからは早々に低下するものの、平均すればルノーメガーヌE−テックを上回り、MG4に追随できる。クプラ・ボーンやキア・ニロEVの充電速度は測っていないが、少なくとも72kWというキアには余裕で勝てるはずだ。

テスト車の電費計は不安定で、かなり効率的な数字とその正反対との間を行ったり来たりしたが、いつものルートを走った後の充電量から割り出した平均電費は6.0km/kWh。クプラやキアには及ばないが、それでも勝負になるレベルだ。現実的な航続距離は、369kmとなる計算だ。

スマートの保証は全車3年。バッテリーは8年もしくは20万kmで新車時の70%という保証内容となっている。

スペック

レイアウト

プラットフォームは、ジーリーグループが新開発したSEAで、ボルボEX30などと共用する。エントリーモデルはリアにシングルモーターを積み、高性能版のブラバス仕様はフロントにモーターを追加する。

このプラットフォームはさまざまなサイズのバッテリーに対応可能だが、現時点では1種類のみが導入されている。前後重量配分は49:51だ。

パワーユニット

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プラットフォームは、ジーリーグループが新開発したSEA。モーターはエントリーモデルがリアシングル、高性能版のブラバス仕様が前後各1基。前後重量配分は49:51だ。

駆動方式:リア横置き後輪駆動
形式:永久磁石同期電動機
駆動用バッテリーリチウムイオンニッケルマンガン・コバルト)・392V・66kWh(グロス値)/62.0kWh(ネット値)
最高出力:271ps/-rpm
最大トルク:35.0kg-m/-rpm
最大エネルギー回生性能:-kW
許容回転数:-rpm
馬力荷重比:152ps/t
トルク荷重比:19.5kg-m/t

ボディ/シャシー

全長:4270mm
ホイールベース:2750mm
オーバーハング(前):794mm
オーバーハング(後):726mm

全幅(ミラー含む):2025mm
全幅(両ドア開き):-mm

全高:1636mm
全高:(テールゲート開き):1900mm

足元長さ(前):最大1065mm
足元長さ(後):730mm
座面~天井(前):最大1055mm
座面~天井(後):940mm

積載容量:313~976L

構造:スティールモノコック
車両重量:1788kg(公称値)/1861kg(実測値)
抗力係数:0.29
ホイール前・後:8.0Jx19
タイヤ前・後:235/45 R19 99V XL
コンチネンタル・エココンタクト6Q
スペアタイヤ:なし(パンク修理剤)

変速機

形式:1速リダクションギア
ギア比
リダクション比:11.6:1 
1000rpm時車速:7.0
113km/h/129km/h時モーター回転数:9950rpm/11380rpm

電力消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:6.0km/kWh
ツーリング:4.5km/kWh
動力性能計測時:4.0km/kWh

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):-km/kWh
中速(郊外):-km/kWh
高速(高速道路):-km/kWh
超高速:-km/kWh
混合:6.0km/kWh

公称航続距離:439km
テスト時航続距離:369km
CO2排出量:0g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラットコイルスプリング、スタビライザ
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザ

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.7回転
最小回転直径:11.0m

ブレーキ

前:322mm通気冷却式ディスク
後:333mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS
ハンドブレーキ電動式・自動

静粛性

アイドリング:-dBA
全開走行時(145km/h):79dBA
48km/h走行時:54dBA
80km/h走行時:59dBA
113km/h走行時:65dBA

安全装備

AEB(歩行者自転車検知)/後方AEB/前後クロストラフィックアラート/死角アシスト/センターエアバッグ
Euro N CAP:5つ星
乗員保護性能:成人96%/子供89%
交通弱者保護性能:71%
安全補助装置性能:88%

発進加速

テスト条件:やや湿潤路面/気温12℃
0-30マイル/時(48km/h):2.5秒
0-40(64):3.4秒
0-50(80):4.4秒
0-60(97):5.6秒
0-70(113):7.1秒
0-80(129):9.1秒
0-90(145):11.5秒
0-100(161):14.4秒
0-402m発進加速:14.3秒(到達速度:160.5km/h)
0-1000m発進加速:26.5秒(到達速度:180.2km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
クプラ・ボーン58kWh 204PS V3(2022年)
テスト条件:乾燥路面/気温15℃
0-30マイル/時(48km/h):2.7秒
0-40(64):3.7秒
0-50(80):5.0秒
0-60(97):6.7秒
0-70(113):8.9秒
0-80(129):11.6秒
0-90(145):15.1秒
0-100(161):20.7秒
0-402m発進加速:15.4秒(到達速度:146.1km/h)
0-1000m発進加速:29.9秒(到達速度:163.8km/h)

キックダウン加速

20-40mph(32-64km/h):1.7秒

30-50(48-80):1.9秒

40-60(64-97):2.2秒

50-70(80-113):2.7秒

60-80(97-129):3.5秒

70-90(113-145):4.4秒

80-100(129-161):5.4秒

90-110(145-177):7.0秒

制動距離

テスト条件:やや湿潤路面/気温12℃
30-0マイル/時(48km/h):8.6m
50-0マイル/時(80km/h):23.0m
70-0マイル/時(113km/h):46.0m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.82秒

ライバルの制動距離

クプラ・ボーン58kWh 204PS V3(2022年)
テスト条件:乾燥路面/気温15℃
30-0マイル/時(48km/h):8.8m
50-0マイル/時(80km/h):24.1m
70-0マイル/時(113km/h):47.2m

結論 ★★★★★★★☆☆☆

過去10年ほどで、TVゲーム携帯電話の業界は変化し、完成形に達する手前の商品でも市場へ投入されるようになった。あとからネット経由で改善するのが簡単になったからだ。

それが問題の原因となっているのがスマート#1というクルマだ。発売時点では、スマートフォンのミラーリングや予期しづらいスロットルペダル、信頼度の低いアダプティクルーズコントロールなどがそのままになっている。おそらくこれらは、ソフトウェアのOTAアップデートで修正するつもりなのだろう。おそらく、ミラーリング機能はすぐに追加される。

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結論:ドライバビリティに、ほかの長所を損なうくらいのフラストレーションを感じる。    JACK HARRISON

それらが是正されれば、総合評価は7から8へ星ひとつ向上する。それでも補えない星ふたつは、小さい荷室や出来のよくないシート、印象に残らないシャシーによる減点だ。

同時に、おおいに納得できるクルマでもある。印象に残らない点は、むしろクセがなくて心地いいと受け止めるユーザーも多いはずだ。競合車と勝負できる価格や、経済性と航続距離、充電性能も高評価できる。

荷室の問題を別にすれば、室内は入念にデザインされていて、個性的なスタイルも兼ね備えている。そして、静粛性は高い。

BEV市場に、高級車ならばBMWのiXやi7、中型SUVではキアEV6やヒョンデ・アイオニック5といった定評あるモデルが揃いつつある中で、まだ決定版を見つけられずにいるカテゴリーがハッチバックやクロスオーバーだ。スマート#1もそこを埋めてはくれなかったが、急成長するセグメントにあって、魅力的な選択肢のひとつだということはできる。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

プリプロダクションモデルをクプラ・ボーンやBYDアット3と比較した際、スマートは僅差ながら優位性を見出せた。今回、英国内でより長く乗って、シャシーの不足が露呈し、期待した改善が果たされていないこともわかった。

マット・ソーンダース

フロントワイパーは、メルセデス水準の開発がなされていなかった。高速道路では吹き上げが軽くなり、160km/hを超えると完全にクリアな視界が得られなくなる。雨の降るアウトバーンでテストしていないのは明らかだ。

オプション追加のアドバイス

プレミアムにはヒートポンプをはじめ、レザーシートや高速AC充電が備わるため、われわれはこれを選びたい。最廉価なプロの価格は未発表だが、小容量ながら信頼性の高いLFPバッテリーを搭載するため、値付け次第では有力な選択肢となる。

改善してほしいポイント

スロットルペダルの設定は修正を。OTAアップデートで対応できるといいのだが。
・ミラー調整にはハードスイッチがほしい。
・アダプティクルーズコントロールと車線追従は改善を。あと、通常のクルーズコントロールを追加してほしい。


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