インターネットの普及により、誰でも簡単に他人とと交流できるようになりました。便利な一方、子どもがトラブルに巻き込まれる危険性も無視できません。そうした被害から子どもたちを守るために、保護者はどうすればよいのでしょうか。自身も1児の母であり、出産・子育てに関わる法律問題に詳しい弁護士・高橋麻理氏の著書『子育て六法』(日東書院本社)より、一部抜粋してご紹介します。

子どもがSNS上で「見知らぬ大人」とやりとりしていたら

よくある相談内容の一つに、子どもがSNS上で、見知らぬ大人と交流しているというケースがあります。保護者としては何らかのトラブルに繋がるのではないかとの心配が先に立ち、今すぐその相手との関係を断ち切るように迫ったり、スマホを取り上げたりしたくなるかもしれません。そのような緊急の対応が必要な場面もありますが、かえって親への反発心から、親にばれないようにしようとしたり、心を閉ざしてしまったりする可能性もあります。

まず、子どもに、そのやりとりにどんな魅力があるのか聞いてみるとよいかもしれません。友人関係に悩んでいて、知らない人とのやりとりが気楽なのかもしれないし、単に暇つぶしかもしれない。身近な人には話せない悩みを相談して救われているのかもしれません。子どもの思いを否定せずにじっくり聴きたいところです。

その上で、過去にSNSをめぐって未成年の誘拐、児童ポルノ被害、ストーカー被害などの事例があったことを説明しながら、親としての不安を伝えてみましょう。

たとえば、相手は「20代女性」と名乗っているが、その素性を信じることができるのか? 素性を隠して子どもの悩みにつけこみ、交流を重ね、信頼を得て、その信頼に乗じて犯罪行為に及ぶ者も存在します。そういった「どのような意図があるのかまったくわからない相手」と親密なやりとりをしているという事実を伝えるのです。総務省HPで、子どもにもわかりやすい「インターネットトラブル事例集」が公開されているので、一緒に見てみるのもいいかもしれません。その上で、今後について話し合うのがよいでしょう。

すぐに関係を断たせる以外にも、親にやりとりの内容を見せることや、万一「会おう」などと誘われたらただちに連絡を断つことを約束させるなど、ルールを決めてしばらく継続することも含め、いろいろな選択肢の中から、一緒に考える必要があると思います。

また、「身近な人たちには相談できないときのための信頼できる相談先」を一緒に調べて確保しておくことも大事なことだと思います。厚生労働省のホームページでは、電話やSNSで相談できるホットライン「まもろうよ こころ」なども紹介されています。

「出会い系サイト」の閲覧をやめさせるには

子どもが「出会い系サイト」を見ていたという話もよく聞きます。

「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(いわゆる「出会い系サイト規制法」)は、出会い系サイトに子どもに対して異性交際を求める書き込みをすることなどを禁止しています。内容によっては、子ども自身が書き込みをすることも処罰対象となり得ます。過去には、中高生が書類送検されたという報道もありました。また、保護者には、「児童」(18歳未満の子)による出会い系サイトの利用を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない責任があると明記されています。

大前提として、このようなサイトが子どもの目に触れて有害な情報を閲覧できないようにするため、フィルタリング機能を利用するなど、対策をとりましょう。

その上で、子どもには、出会い系サイトの利用を規制する法律があることや、投稿が犯罪にもなり得ることを伝える必要があります。

「犯罪になるからだめ」ではなく、なぜこのような法律があるのか、親子で考えることが大切です。出会い系サイトがきっかけで深刻な性被害に遭う事例があとを絶たないことを、具体的な報道などを踏まえて一緒に確認することで、子ども自身の身近に迫る危険を自分ごととして捉えられるようになると思います。

高橋 麻理

弁護士法人Authense法律事務所

弁護士

(※写真はイメージです/PIXTA)