いつまで続くか分からない物価高。特に収入が限られている年金生活者への影響は大きいものがあります。なかには年金が生活保護費にも届かず生きていくのもやっとというケースも。厳しい状況に置かれている低年金高齢者の実情をみていきましょう。

灯油代が高騰!暖房代をケチる低年金高齢者

ーー生活が本当に苦しい

物価高の上昇幅は徐々に小さくなっているといわれるものの、いまだに天井は見えてこない昨今。買い物に出かけるたびに「高いわねぇ」と愚痴をこぼしてしまう日々が続いています。

内閣府『消費動向調査(2023年10実施分)』によると、消費者態度指数は前月から0.5ポイント上昇し35.7。また各消費者意識指標については、「暮らし向き」が1.4ポイント上昇し33.4、「収入の増え方」と「耐久消費財の買い時判断」が共に0.4ポイント上昇し、それぞれ39.1、29.4でした。一方で「雇用環境」は0.4ポイント低下し40.7。また物価の見通し「上昇する」と見込む割合は9割超。総合的な判断として「改善に向けた動きに足踏みがみられる。」と、なかなか私たちの生活も意識も上向いていくには、まだまだ時間がかかりそうな気配です。

*全国の8,400世帯を対象に、今後半年間の暮らし向きがどうなるかや、自動車や家電製品が買い時になるかなどを聞き、消費者の心理を指数化したもの

そのようななか、苦しい生活を強いられているのは年金収入を頼りにしている高齢者。現役世代は「物価上昇を超える賃金アップの実現を!」と叫ばれさまざまな動きが見られますが、高齢者が頼りにしている年金が物価高以上に支給されることは絶望的。今後、給付金などはあるかもしれませんが、高齢者の生活は苦しくなるばかりです。

ーー初雪が降ったのに暖房をつけないで暮らしてる

もうすぐ70代だという男性の投稿。先日、例年よりも遅めの初雪が観測されたといい、部屋の中はまるで冷蔵庫。それでも灯油代がもったいないと、毛布に包まって生活をしているのだとか。

ーー寒くて死にそうだけどさ……氷点下になるまでは暖房はつけない

総務省統計局『小売物価統計調査(2023年9月)』によると、全国の灯油18リットル(白灯油、詰め替え売り/店頭売り)の平均価格は2,224円。前年同月比108.1%で、今年6月あたりから上昇傾向にあります。また2年前、2021年の同月比では126%、3年前、2020年の同月比では146%なので、この数年の原油高の影響は実に大きく、1年の半分は暖房が不可欠という男性が住む地域では死活問題です。

元会社員でも低年金…気づいたときには時すでに遅し

国民年金の満額支給は、令和5年度、79万5,000円。1ヵ月あたり6万6,250円です。また厚生年金受給者の平均受給額は月14万円。65歳以上男性に限ると月17万円、女性は11万円。それに対し、男性の年金受給額は月5万円程度だとか。会社員時代もあったといいますが「勤めていた会社がいい加減で、厚生年金に入ってなかった」と男性。昨今は、1年に1回「ねんきん定期便」が手元に届き、年金の加入状況をきちんと確認ができますが、男性が元職場のずさんな状況を知ったのは、年金を受給する段階になってからだといいます。

厚生年金は一定の条件を満たす事業所に対して加入義務が設けられ、厚生年金適用事業所では、国籍や性別、年金受給の有無にかかわらず、70歳未満で常時使用されているすべての従業員が被保険者の対象となります。適用事業所でありながら厚生年金に加入していない場合、6ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰金刑(厚生年金保険法102条)。また厚生年金に未加入だったことが判明したら、すぐに年金事務所や弁護士等の専門家に相談するのが鉄則です。

しかし現在、年金を受け取っている高齢者のなかには、男性のような目にあっている人が意外と多いといいます。これまでの裁判例では、被保険者本人が年金支給年齢に達している場合は、ほぼ損害賠償請求が認められています。ただ訴えるためには、いくらかかるでしょうか。結構な労力もかかるでしょう。結局、泣き寝入りしているケースが多いといいます。

月5万円の低年金。生活保護費以下の収入ではありますが、男性が貯蓄額を伝えたところ、支援は難しいといわれたといいます。

――暖房代を稼ぐために、一生働かないと……お先、真っ暗だよ

生活保護を受給するための絶対条件は、申込者の世帯収入が居住地の最低生活費よりも低いことです。たとえば「北海道札幌市」65~69歳の一人暮らしの場合、最低生活費は7万3,590円、最低家賃が3万6,000円、生活保護費は10万9,590円です。この金額を収入が下回る場合、その差額が支給されます。ただ、最低生活費の月額を上回る預貯金を保有している場合は、基本的に生活保護利用開始は認められていません。ほかにも、売却できる資産があれば売却を促され、働けるなら就労を促されます。ただ低収入というだけでは、生活保護は認められないのです。

朝晩には氷点下となり、真冬日も珍しくないという北国の冬。低年金の高齢者には厳しい日々が続きます。

(※写真はイメージです/PIXTA)