「これで打ち止めだといいけどね」そんな風に私が同情していたのは土曜日、とうとうレアル・マドリーの負傷者が9人に達したという記事を読んだ時のことでした。いやあ、11月の各国代表戦では一旦、イングランド代表に顔見せで出頭しながら、ベリンガムは即Uターン。ラージョ戦で脱臼した肩のリハビリをバルデベバス(バラハス空港の近く)で完了させて、paron(パロン/リーガの停止期間)明けのカディス戦には間に合う予定という、いいニュースもあったんですけどね。

それが水曜にはフランス代表の練習中にウスマン・デンベレ(PSG)とぶつかったカマビンガがヒザを痛め、翌日にはマドリッドに帰還。詳しく検査した結果、外側靭帯を断裂していることがわかり、全治2~3カ月の重傷だったのもショックだったんですが、翌木曜にはビニシウスがW杯南米予選のコロンビア戦で負傷交代する破目に。こちらも即代表離脱となり、全治2カ月半の左太もも肉離れの治療をすることになったんですが、実はその前から、マドリーではクルトワ、ミリトンの長期リハビリ組に加え、ギュレル、チュアメニ、ケパ、セバージョスがお休み中。

うち一番、復帰が近そうなのはセバージョスとケパですが、怖いのは各国代表戦がまだ続いていることで、ええ、チュアメニ、カマビンガの不在でようやく出番を増やしてもらえそうなモドリッチなど、クロアチアのユーロ出場が確定していないため、火曜のアルメニア戦まで頑張らないといけませんからね。前線もとうとう、来季からの加入が決まっている、17才でA代表初招集されたエンドリック(パルメイラス)は別として、ブラジル代表1人参加になってしまったロドリゴやスペイン代表のホセルなども年内は風邪1つひけないんじゃないかと思いますが、え?FIFAウィルスなら、10人が出向しているお隣さんも他人事ではないだろうって?

まあ、そうなんですが、9月と10月の代表戦の狭間に負傷者7人を抱え、地獄の7連戦を息も絶え絶えに乗り切ったアトレティコは今回、まだ被害にあっておらず。いえ、試合中、ウルグアイのウガルテ(PSG)に暴言を吐かれたデ・パウルがメッシ(インテル・マイアミ)に庇われ、tangana(タンガナ/小競り合い)に発展した時、W杯グループリーグ最後のガーナ戦で敗退が決まり、FIFA役員にcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞って、4試合の出場停止処分をゲット。それがようやく終わり、丁度、負傷も治ったため、久々にウルグアイ代表に招集されていたヒメネスがその時、まだピッチに入っていなかったことにホッとしたなんてことはあったんですけどね。

その試合に0-2で負けたアルゼンチンが次は火曜に、やはりコロンビアに2-1と負け、カッカしているであろうブラジルと当たるのは、デ・パウルやモリーナの身を案じてちょっと、心配になるものの、その間、居残り組の方はマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で代表戦明けのマジョルカ戦に備え、6人DF制のラインを崩す練習をしていたとか。ただ、それも火曜にラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で開かれたクラブ監督懇談会に出席した後、シメオネ監督は母親のバースデーを祝うためにアルゼンチンに帰国。第2監督の指揮の下、木曜までセッションを行い、金土日と3連休にしていたアトレティコでしたが、来週からはメンフィス・デパイもチーム練習に合流できる見込みという朗報も。

だからって、モラタ(スペイン)やグリーズマン(フランス)に何かあっても困るんですが、あれこれ、気を揉んでも始まりませんからね。今はただ、皆、無事に帰ってきて、再びメトロポリターノ開催となるリーガ戦で、クラブ最長記録のホーム17連勝を18に更新してくれることを願うばかりですが、さて。ちなみにこの先、12月のクリスマス休暇までノンストップで続く日程では、マドリーアトレティコの兄貴分たちは11月28、29日と12月12、13日のミッドウィークにCLグループリーグの最終2節が入り、ヘタフェとラージョの弟分たちは12月5~7日の週中にコパ・デル・レイ2回戦を戦うことに。

水曜の抽選で決まった相手はそれぞれ、アトセネタ(RFEF3部/実質5部)、ジャルカーノ(RFEF2部/実質4部)と、たとえ、前者が雨天延期で火曜に2部のサラゴサを下して上がってきたチームだとしてもまあ、問題はないかと思いますけどね。それこそ、早くも同じカテゴリー対決となってしまった2部の弟分たち、アルコルコン(カルタヘナ戦)、レガネス(ラシン・デ・フェロル戦)の方が大変ですが、要はこの期間、スペインスーパーカップに出場せず、32強対決までのコパ免除がないヨーロッパの大会出場組、レアル・ソシエダセビージャ、ベティス、ビジャレアルは再び、地獄の7連戦に突入するんですよ。

対照的にマドリーアトレティコは3連戦x2、ただしアトレティコには12月23日に豪雨警報で延期された4節のセビージャ戦があるため、1試合余分にプレーして、今年を終えることになりますが、まあ、年内は楽できる分、1月の彼らには遥々、サウジアラビアまで行ってプレーしないといけない、スペインスーパーカップのハードスケジュールが待っていますからね。実際、ビニシウスなどはその頃にならないと回復しないとあって、とりわけマドリーのファンたちはゾワゾワしていそうですが、果たして現在、伏兵ジローナが勝ち点2差で単独首位を走るリーガの順位はどのくらい動くんでしょうかね。

まあ、そんなことはともかく、現在稼働中のスペイン男子代表の状況もお伝えしていくことにすると、今週は月曜にラス・ロサスで合宿を始めた彼らはその日の夕方に公開練習を行った後、火曜の夜には早くもキプロス島入り。ユーロ2024出場はすでに10月の2連勝で決まっていたため、今回の目標は同じ勝ち点で並ぶスコットランドに差をつけ、グループを首位突破。残り2試合に勝って、本大会での開催国ドイツと一緒の第1ポットに入れる好成績を挙げることだけだったんですが、相手がここまで1勝もできず、敗退決定しているキプロスであるのと共に多分、そのせいもあったんでしょうね。

この試合、デ・ラ・フエンテ監督は大ローテーションを決行して、ええ、まずは25人招集のうち、23人しかベンチには入れないためのスタンド観戦にリーガ前節マドリー戦でヒザを打撲してから、まだ間がなかったガヤ(バレンシア)はともかく、もう1人を中盤の要であるロドリ(マンチェスター・シティ)に。代わりにスビメンディ(レアル・ソシエダ)を起用して、GKウナイ・シモン(アスレティック)もダビド・ラジャ(アーセナル)、CFもモラタではなくホセルと屋台骨を入れ替えていたんですが、全然、大丈夫だったんです。

だってえ、開始5分にはもう、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)がエリア内左から送ったパスが、ゴール前にいたホセルはスルーしたものの、ファーサイドにいたジャマル(バルサ)に到達。歯列矯正具を付けている以外、まったく16才には見えない落ち着きで当人はすぐには撃たず、敵GKをかわし、DFもかわして代表2ゴール目を決めているのですから、驚いたの何のって。いや、実際、この年齢のサッカー選手たちは今頃、インドネシアでU17W杯を戦っているはずなんですけどね。その16強対決でスペインと日本が月曜に対戦することになったのはともかく、デ・ラ・フエンテ監督も「彼には他のどんな選手でも難しい状況を解決する才能がある」と絶賛していたジャマルにはただただ、感心するしかなかったかと。

そして22分には再び、スペインは初招集、即スタメンデビューとなったグリマルド(レバークーゼン)が送ったラストパスをオジャルサバル(レアル・ソシエダ)がエリア内左奥からシュート。ボールは敵GKとDFが触れてスピードが落ちたものの、そのままネットに入り、2点目が入ることに。更に28分にはそのオジャルサバルが蹴ったCKをホセルが決めて、あっという間に3点差にしていたんですが、好事魔が多しとはまさにこのことです!

そう、先日はCLベンフィカ戦でもゴールを挙げ、チームの決勝トーナメント進出に貢献していたFWが37分、ホセルのパスからシュートした際に左太ももを痛め、続行不可能となってしまったから。これには5人が招集され、スペイン代表の最多勢力になったことを「Es una buenísima señal y seguramente que por vergüenza no ha llevado a tres más/エス・ウナ・ブエニシマ・セニャル・イ・セグラメンテ・ケ・ポル・ベルグエンサ・ノー・ア・ジェバードー・ア・トレス・マス(これはいい印だが、あと3人、呼ばれなかったのは恥ずべきことだ)」と言っていたイマノル監督も少々、考えを改めたのでは?

ただ、そのおかげでこちらも今回、初招集。昨夏に準優勝したユーロでU21を卒業して以来、代表戦週間はヒマをしていたリケルメ(アトレティコ)が晴れて23才でのA代表デビューができたんですが、ポンポンと3点を取ったのは、デ・ラ・フエンテ監督が更なるローテーションを実施するキッカケにも。そのまま0-3で折り返しスペインは後半頭から、メリーノ、ル・ノルマン(ソシエダ)をやはり、初招集組のアレイス・ガルシア(ジローナ)とダビド・ガルシア(オサスナ)に代え、結局、デビューできなかったのはGKレミロ(ソシエダ)だけとなりましたが、残念ながら、チームの方も省エネモードに入ってしまってねえ。

それ以上、追加点は入らず、何と30分にはゴギッチのスルーパスから、ピレアスにシュートを決められ、キプロスに1点を返されてしまうことに。実際、プレーの起点でカスタノスがガビ(バルサ)を蹴ったプレーがVAR(ビデオ審判)でファールになっていてくれれば、助かったんですけどね。「ファールはあったし、もし引っくり返っていたら、取ってもらえたと思うが、Gavi es leal y honesto, y no lo ha hecho/ガビ・エス・レアル・イ・オネストー、イ・ノー・ロ・ア・エッチョー(ガビは誠実で正直だから、そうしなかった)」(デ・ラ・フエンテ監督)ため、スコアに挙がってしまいましたが、いやあ。

このガビも19才で本来なら、クラブの同僚、フェルミンやバリオス(アトレティコ)らと一緒にU21代表に行って、金曜にウエスカであったU21ユーロ2025予選のハンガリー戦でプレーしていてもちっともおかしくないと思うと、早熟の才能の宝庫であるバルサが羨ましくなくもなし。ちなみにその試合の方はアトレティコBから2部のミランデスにレンタル修行に出ているカルロスマルティンと、バルサからジローナに貸し出されているパブロトーレスのゴールでスペインが2-0と勝っています。

そして大人の代表の方はそのまま、1-3で終了。同日、スコットランドジョージアと2-2で引き分けたため、スペインは単独首位となり、あとは日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのジョージア戦でも勝って仕上げをすればいいだけに。いえ、キプロスのケツバイア監督など、「ヨーロッパだけでなく、世界最高のチームだ。サイドが使えて、2008年から2012年の黄金期よりもいいものを持っている。ユーロの優勝候補ナンバーワンだ」と、このスペインをベタ褒めしていたんですけどね。実際のところは、本大会が来てみないことにはわからないんですが、チームは翌日、午前中にキプロスリハビリトレをして、夜には予選最終戦が開催されるバジャドリーに直行。

ここでオジャルサバルは別れて、治療のためにサン・セバスティアンに帰還し、その分の追加招集はないんですが、ちょっと気になったのはホセ・ソリージャでの前日練習の後、記者会見で代表戦の増加による過密日程について訊かれたデ・ラ・フエンテ監督のコメント。曰く、「代表に来るから、選手がケガする訳ではないと思う。Las lesiones son cosas del fútbol/ラス・レシオネス・ソン・コーサス・デル・フトボル(負傷はサッカーに付き物だ)」と言っていたんですが、そりゃまあ、参加国が32から48に拡大された2026年W杯とか、試合数が増えれば、代表監督は活動期間が増えて、嬉しいのかもしれませんけどね。

でも、キャプテンとして記者会見に出たモラタも「No somos robots/ノー・ソモス・ロボッツ(ボクらはロボットじゃないからね)。自分の体があって、筋肉があって、ケアはしているけど、いつケガするかはわからない」と話していたように、ホント、こればっかりは運を天に任せるばかり。とりあえず、金曜には1部首位のレガネスがバジャドリーとセルヒオ・ゴンサレスのゴールで1-1と引分けたばかりのホセ・ソリージャのピッチ状態は悪くないようですが、とにかくジョージア戦では負傷者が出ないことを祈るばかりかと。

ちなみにジョージアのGKママルダシビリ(バレンシア)は直前のマドリー戦で5-1とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らっていますが、9月のスペインとの対戦ではモラタのハットトリックを含む1-7で大負けした後、メスタジャでアトレティコを3-0とシャットダウン。キプロス戦と違って、今度はデ・ラ・フエンテ監督もベストメンバーを並べるようですし、どういう目が出るのか、ちょっと楽しみではありますね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。