■VTuberになるまでの人生を語るひとたち

「なぜ、VTuberになったのか?」

 その問いかけにVTuberが答えるかどうかはまちまちだ。だが、機会が少ないだけで、「語りたい」という欲求が奥底にある人もいたのではないか……と感じさせる一幕があった。

【動画】ChumuNote氏の「VTuberになった理由」

 先週、Xでにわかに流行した「◯◯になった流れ」というハッシュタグ。これに合わせてか、「Vになった流れ」というハッシュタグが作られた。いわば便乗のハッシュタグではあるが、多くのVTuberが「自身がVTuberになった経緯」をこのタグをつけて語り始めたのである。

 このハッシュタグには数多くの投稿が寄せられたが、少なくないVTuberが「VTuberになる前の身分・人生」を、かなり赤裸々に明かしている。ブラック企業に勤めていたひと、声優業界にいたひと、大病を患ったひと……ここまで過去をつまびらかに明かすVTuberが多いことに、筆者もおどろかされた。筆者が知る限り、こうしたエピソードが各人の配信ではなく、ハッシュタグつきの投稿で開示・拡散されていく流れはあまり見たことがない。

 「VTuber」という存在をキャラクターとしてみなすなら、これらは「中の人の個人情報」であり、開示することを好ましくないだろう。しかし、いまやVTuberは「キャラクターのような個人」でもある。二次元の見た目をした、れっきとした “いま生きている者”が、過去を語るのであれば、そこにはなんの不思議もない。「顔を出さない活動者・クリエイター」という、VTuberのひとつのあり方が、とても一般的になったことと感じる出来事だった。

 「Vになった流れ」が流行した数日後、個人VTuberのChumuNoteが、自身がVTuberになるまでのエピソードを語る動画が公開された。これまでに「所属事務所の解散」「前名義の白紙化」「再デビュー」という稀有な道をたどったことで注目を浴びた人物が、「VTuberになる以前」についても触れている貴重な映像だ。

 この動画はインテルのキャンペーン「Choose Your PC ~選ぶのは自分だ!~」に合わせて公開されたとのこと。同キャンペーンには彼女を含めて5人のVTuberが参加しており、そのほかの参加者も多種多様なクリエイターだ。

 純粋な「クリエイターの一形態」としてVTuberを起用しつつ、「YouTuber、VTuber、ストリーマー、一億総クリエイター時代? 違う! ひとくくりになんてされてたまるか。」というメッセージを添えた、2023年らしいキャンペーンだ。ハッシュタグ「#決めるのは自分だ」にて、次なる動画公開を待ちたい。

■「VRChatに来た流れ」も聞いてみた

 ところで、厚かましくも筆者も、この流れに乗じて「VRChatに来た流れ」というハッシュタグを添えて、様々なユーザーから「VRChatを始め、ハマった経緯」を聞き出そうと試みた。

 実は筆者よりも先に同じタグで投稿した人がいた……と後に気づいたのだが、投稿してほどなくしてかなりの数の投稿が寄せられた。11月15日の12時から21時までの投稿だけをざっと集計したが、それだけでも1200件超。その後も断続的に投稿がおこなわれていたのを見ると、さらに多くの人が「VRChatに来た流れ」を語ってくれたようだ。

 集計できた投稿のうち500件ほどに目を通し、カテゴリごとの分類を試みたところ、やはり多いのは「人に誘われた」「とある人に会いたかった」という、人に起因する「始まり」だった。『VRChat』はソーシャルVR、すなわちSNSの発展形としての側面を持つ。多くの人が参入理由として「人」を挙げるのは、かなり納得がいくところだ。「SNS経由で知り、興味を持った」も、知人や友人に誘われて始めたパターンの派生といえるだろう。

 そのほかでいえば「VTuberをきっかけに始めた」という人も多かった。特にミライアカリ、(現在はVTuberではないが)バーチャルのじゃロリ狐耳おじさん、のらきゃっとをきっかけに挙げる人が多く、初期VTuberの一部が『VRChat』で活動していたという経緯も大きな影響していそうだ。

 一方で、「VRヘッドセットを買ったこと」が直接的な理由と語る人もいた。『Beat Saber』をやりたいがためにVRヘッドセットを購入する人が多いようだが、同タイトルは「体を激しく動かす有料タイトル」であるため、「ゆっくり遊べる無料タイトル」として『VRChat』に手を出した人も多いだろう。その先が“底なし沼”であったことは思いもよらず。

 このほか、『ファンタシースターオンライン2』や『ファイナルファンタジー14』から流れてきた、という人も一定数見られた。どちらもアバターやキャラクリエイトの自由度が高いオンラインゲームだ。両タイトルともに写真やスクリーンショットを撮影してSNSにシェアする文化が色濃く、長く遊んでいるプレイヤーほど、『VRChat』との親和性が高いのかもしれない。

 まだ投稿をすべて見ることはできていないが、様々な「VRChatを始めたきっかけ」「VRChatにハマった経緯」を知ることができたのは、個人的に大きな収穫だ。そして、やはり人はどこかに「自分について話したい」という欲求を抱いているのだなと、「Vになった流れ」と合わせて感じた次第だ。

■新機軸オーディションに二次創作ゲームブランド 各事務所にも動きアリ

 先週の企業・事務所まわりのニュースについても軽くおさらいしておこう。にじさんじは「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」と「NIJISANJI EN」のオーディション開催や、『KZHCUP in STREET FIGHTER 6』の開催発表が話題になった。また、相羽ういはが12月末に卒業する報もあった。

 特に「VTA」オーディションは、高難易度士業や専門スキル所持者を対象とした部門と、マスコット配信者の部門が新設された。前者に関しては、個人勢の特化型VTuberで知名度を得た人がいることをふまえた動きだろうか。新たな方向性のタレント発掘が功を奏するか、注視したい。

 「ホロライブ」は二次創作ゲームの開発者と連携する方向に動いた。ガイドライン整備とともに、二次創作ゲーム向けのゲームブランド「holo Indie」を立ち上げ、二次創作ゲームの有償配布を許諾した形だ。

 とりわけ海外を中心に、これまで優れたクオリティの『ホロライブ』二次創作ゲームが数多く登場してきた。「二次創作」というファン活動にエコシステムを作り上げ、よりその勢いを強めたいという思惑だろうか。テストケース第一弾タイトルのリリースも決定しており、まずは新たな試みを走らせつつ様子を見ることになるだろう。

(文=浅田カズラ)

インテル『Choose Your PC ~選ぶのは自分だ!~』