バスにバンと国産商用BEVが続々登場! 「低価格」を武器に日本市場に乗り込む「アジア勢」との争いが激化の予感

この記事をまとめると

ジャパンモビリティショーでは商用車のBEVモデルが複数台展示されていた

■海外ではすでに自社製BEVモデルの価格競争が始まっており新規参入はかなり厳しい

■国内でも販売価格によっては海外メーカーのBEVにシェアを奪われかねない状況だ

BEV商用車の普及こそ電気自動車の普及の鍵だ

「日系ブランドのBEV(バッテリー電気自動車)ラインアップの動きは商用車がけん引している」と、先日閉幕したJMSジャパンモビリティショー)を訪れた多く業界関係者がそのような話をしてくれた。

 商用車分野では、トヨタスズキダイハツいすゞ、日野などが資本参加して、商用車の技術開発を手がけるCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)というものが立ちあがっており、CJPTにてオールジャパン体制でNEV(新エネルギー車)の共同開発や普及促進を務めており、その成果が順調に表れている点で、乗用車より現実的な展開が進んでいるのも事実といっていいだろう。

 CJPTの成果としては、JMSスズキブースに展示してあった、軽規格BEV商用バンとなる「eエブリイ」もその1台で、兄弟車としてダイハツ版とトヨタ版もすでにその存在が発表されている。同じくJMSの会場ではホンダもN-VANベースのBEVを展示していた。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 軽規格BEVバンとしては、すでに三菱ミニキャブMiEVが郵便局などで活躍している。ミニキャブMiEVは2021年にいったん絶版となったものの、2022年10月より再販売がスタートしている。そして、日本国内だけではなく、2024年からはインドネシア国内で現地生産され発売される予定となっている。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 インドネシアでは軽自動車規格ではないものの、すでに中国のDFSK(東風小康汽車)が「GELORA」という小型商用BEVを現地生産して販売している。インドネシア政府は単に国内でのNEV普及を図るだけではなく、NEVの生産拠点としてさまざまな普及政策を進めており、ミニキャブMiEVの現地生産及び販売もそのひとつの動きと考えられ、小型商用BEVバンが日系ブランドにとって有望なカテゴリーとの判断もあるのかもしれない。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 2023年8月にインドネシアの首都ジャカルタ市近郊で開催されたGIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)において、ホンダもN-VANベースのBEVの実車を世界初公開していた。

 ダイハツの商用車はインドネシアで生産、販売されているだけでなく、インドネシア国内と同一車名で日本へ輸出されている「グランマックス(トヨタ・タウンエース)」ベースのBEVコンセプトカーが展示してあった(市販されそうなぐらいの完成度であった)。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 インドネシアでは今後、軽自動車規格も含むコンパクトBEVバンが熱くなっていきそうである。

BEVの路線バスに大量受注が入ってる!?

 JMSの会場に「フォロフライ」というEVベンチャー企業がブースを構えていた。そこには中国DFSK(東風小康汽車)ベースの小型BEVバン「F1」が展示されていた。もともとBEVの開発を行っていた同社は、そのノウハウでDFSKの車両を日本でも販売するための認可を受けるための改造を行い、そして販売しているとのことである。「F1のような1トンクラスのBEV商用バン及びトラックの認可はかなり審査が厳しく、フォロフライのようなノウハウがないと認可を受けるのはかなり厳しいとも聞いています」とは事情通。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 フォロフライのF1については、すでに大手物流企業である「SBSホールディングス」が1万台程度の導入計画を発表されている。

 このF1は、全長4500×全幅1680×全高1985mm、トヨタ・タウンエースバンが全長4065×全幅1665×全高1930mmトヨタ・ハイエースバン・ロング標準ルーフでは全長4695×全幅1695×全高1980mmなので、ボディサイズとしては「タウンエースバン以上ハイエースバン以下」といえるだろう。

 フォロフライブースでは、F1の導入コスト例が掲示してあったが、比較対象として記してあったハイエースバンのディーゼルより、試算上でのトータルコストでは若干安いとアピールしていた(ちなみにインドネシアではGELORIAの価格は約166万円からとなっている)。

JMSではトヨタ車体ブースに『グローバル・ハイエースBEVコンセプト』が展示されていましたが、市販版が発売されると1000万円ぐらいになるのではないかとの話をJMS会場内で聞いています」(事情通)

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 一方、いすゞブースには、老舗トラック&バスメーカーとしての「日の丸BEVバス」としては初展示といっていい、「エルガEV(路線バス)」が展示されていた。発売は2024年度中を予定しているようだが、すでに水面下では予約受注活動が展開され、「そんなに受注とって生産できるの?」といったレベルの受注台数になっているとの情報もある。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 バスについては販売する事業者によって導入台数など条件がかなり異なるので、明確な実売価格というものはなかなかはっきりしないのだが、情報では「中国BYDのBEV路線バスの導入を検討しているのなら、許容範囲の価格差(やはり高いようだ)になっている」との情報も飛び交っている。

 小型BEVバン、そしてBEV路線バスを例として紹介したが、日系ブランドでラインアップが増えることは喜ばしいことだが、次のハードルとして、とくに商用車分野では「価格設定」というものが出てくる。賃金についてはすでに一部で新興国以下レベルになっているとも言われている日本だが、とくに新興国企業と比べれば、日本企業の高コスト体質に変化はない様子。

 DFSKの小型BEVバンを例にすれば、すでに中国のみならず海外でも販売実績があり価格競争力も高まっている。「ようやくいいものが出来ました」と日系メーカーがBEVをリリースしても、乗用車も含め海外市場ではすぐに激しい価格競争に巻き込まれてしまう。すでにタイあたりでも、BEVの値引き合戦が熾烈になっている様子。

 日本国内では前述したように、登録車規格でほどほどのサイズでは行政当局の認可を受けるには相応のノウハウがないとかなり面倒なことになるケースもあるようだ。非関税障壁として諸外国からクレームでもつけば緩和されるのだろうが、これがある程度「防波堤」となれば、日本国内での日系ブランドのBEV普及は、諸外国に比べれば進むことになるだろう。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

 好むと好まざると、日系ブランドでも政府がカーボンニュートラルを宣言してしまっているので、BEVラインアップは増やさざるを得ないだろう。ただ、日系ブランドの高い技術力で良質なBEVが増えたとしても、政府が補助金で大盤振る舞いしてくれない限りは、今度は「価格が……」というものが問題となっていくのではないかとの声も大きくなっている。

大戦争待ったなしのBEV商用車市場に国産メーカーは立ち向かえるか

バスにバンと国産商用BEVが続々登場! 「低価格」を武器に日本市場に乗り込む「アジア勢」との争いが激化の予感