この記事をまとめると
■2022年に、Mクラスミニバン3モデルがフルモデルチェンジを行なっている
■売り上げの1位と2位はトヨタのノアとヴォクシー、3位がセレナ、4位がステップワゴンだ
■ステップワゴンが売れてない理由には”中途半端”な仕様となっていることが挙げられる
ステップワゴンが売れそうなのになぜか売れない原因とは
2022年は、ミドルサイズのミニバンが一斉に新型になった。トヨタのノアとヴォクシー、ホンダ・ステップワゴン、日産セレナがフルモデルチェンジを実施した。ただし、セレナe-POWERは、2023年4月になって納車を伴う発売を開始している。
そこで、2023年度上半期(2023年4〜9月)の1カ月平均登録台数を比べると、以下のとおりになる。
1位:ノア(8265台)
2位:ヴォクシー(7503台)
このミドルサイズミニバン4車のうち、ノアとヴォクシーは基本部分を共通化した姉妹車で、合計すると1万5768台に達する。この販売実績は、小型/普通車の登録台数で1位になるヤリスシリーズ(ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス)と同等だ。ノアとヴォクシーは、超絶的な人気車になっている。
その一方で、売れ行きを落ち込ませたのがステップワゴンだ。ライバル3車の半数以下に留まる。同じホンダのコンパクトミニバン、フリード(5699台)よりも少ない。フリードは、2016年に発売されて2024年にフルモデルチェンジを行う可能性もあるモデル末期車だが、ステップワゴンはこの台数を下まわった。
ステップワゴンは認知度の高いミニバンなのに、なぜ売れ行きが低迷するのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。
「ステップワゴンは価格が高く、もっとも安価なグレードでも300万円を超える。納期も約半年を要する。その点でフリードは価格がステップワゴンよりも約100万円安く、納期も1〜2カ月と短い。さらにフリードでは、残価設定ローンに(年率2.9%の)低金利を実施して、ディーラーオプションのサービスなども行っている」
このようにステップワゴンは、価格の高騰や納期の遅延があり、ユーザーがフリードに流れた。
いまのホンダのイメージにステップワゴンはあってない
理由はほかにもある。
まずステップワゴンは、ライバル3車に比べるとフロントマスクの表情が穏やかだ。いまのような殺伐とした時代には、ステップワゴンのフロントマスクは好感を持てるが、一般的には存在感の強い顔立ちが好まれる。ステップワゴンは目立たない。
そしてステップワゴンの柔和なデザインを明確に反映したのは、エアロパーツを装着するスパーダではなく標準ボディのエアーだが、この仕様には後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーションが設定されない。その背景には、ボディ後部のバンパー形状がスパーダと異なるため、ブラインドスポットインフォメーションのユニットが収まらなかった事情がある。
このほか、エアーには、スパーダに用意されるLEDアクティブコーナリングライト、前席シートヒーター、2列目シートのオットマンなども用意されない。
そうるなると、せっかくステップワゴンの穏やかな外観に魅力を感じてエアーを選ぼうとしても、装備に不満を感じてしまう。だからといってスパーダでは、エアーに比べて穏やかな魅力が薄れるため、結局はステップワゴンは中途半端な商品と受け取られる。ユーザーを逃してしまうのだ。
また、ホンダ車の売られ方も変化した。いまでは日本で販売されるホンダ車の約40%がN-BOXで占められ、NーWGNなどほかの軽自動車も加えると50%を超える。そこに前述のフリードも加算すると、70%前後に達するのだ。
つまり、N-BOXが際立って好調に売られる時代が10年以上続いたことで、ホンダのブランドイメージは「小さくて背の高い実用車を作るメーカー」に変化した。「ホンダ車を買うならステップワゴンではなくフリードでしょ」というわけだ。
このようにステップワゴンの販売不振は複数の理由に基づき、ホンダの国内販売を象徴している。ステップワゴンに限らず、フィットやヴェゼルの売れ行きも、フリードを下まわっている。
コメント