民放公式テレビ配信サービス・TVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜」シーズン2。11月17日(金)に配信開始となった#3では、国民的演芸番組「笑点」(日本テレビ系)の大喜利メンバーとして活躍する落語家桂宮治が登場し、「30歳になるまで落語を一度も聞いたことがなかった」という意外な事実を明らかにした。

【写真】元乃木坂46の秋元真夏、櫻坂46の石森璃花が落語家・桂宮治の授業を受ける

■「最強の時間割」とは

「最強の時間割 ~若者に本気で伝えたい授業~」は、さまざまな業界のトップランナーを講師として招き、学生や社会人に「知っておいてよかった」と思える“考え方のヒント”を届けるオリジナル番組。

2022年12月から約半年にわたり、放送された同番組が好評を受けて帰ってきた。シーズン2は11月3日よりスタートし、シーズン1に引き続きラランド・ニシダが副担任役、ラランドサーヤが生徒役。そして新しく生徒役として元乃木坂46秋元真夏が参加する。

■30歳まで落語を聞いたことがない、桂宮治がなぜ落語家に?

にっかん飛切落語会最優秀賞(※2年連続)や、NHK新人演芸大賞落語部門大賞など、数々の受賞歴を持ち、"令和の爆笑王”との呼び名が高い落語家桂宮治。2022年には45歳で国民的演芸番組「笑点」の大喜利メンバーに選ばれ、お茶の間の認知度が一気に高まった。そんな宮治が講師として登場。「落語はテレビ・ラジオ・映画がない時代に子供から大人まで娯楽として楽しんでいたもの」と語る一方、自身は30歳になるまで落語を一度も聞いたことがなかったという宮治が現在に至るまでの人生を振り返った。

子供の頃からザ・ドリフターズが大好きで、人を笑顔にする仕事に就きたいと一度は俳優養成所の門戸を叩いた宮治。だが、なかなか芽が出ず、舞台のチケットノルマで借金が膨らんでいく一方だったという。そんな宮治が役者を辞め、身を置いたのがワゴンDJ(実演販売)の仕事だ。宮治はすぐさま才能を開花させ、同業者たちの間でも話題になるほどの売れ行きに。しかし、そのうち「1日を振り返ってあのお兄さんに会わなければ良かったと思う人が何人いるのか」ということを考え始めたそう。いつも明るく人を楽しませる宮治の意外にも繊細な一面が明らかとなった。

そんな中、宮治が出会ったのが落語。たまたまYouTubeで流れた二代目桂枝雀の落語を聞き「こんなすごい芸能があるんだ!」と感動したそう。そこから師匠を見つけるために寄席に通う日々が続き、ある日運命の相手に出会う。それが宮治の師事する三代目桂伸治。舞台袖から出てきた瞬間、体に電気が走り、「この人が弟子にとってくれなかったら僕は落語家にはなれない」と感じるまでの衝撃的な出会いを興奮気味に語った。

だが、多くの人が高校や大学を卒業後に弟子入りする落語の世界において宮治は相当スタートダッシュが遅く、桂伸治も最初は渋っていたそうで宮治の妻まで呼び出され、諦めるようにかなり説得されたという。それでも後に引かない夫婦の様子に最後は桂伸治の方が根負け。宮治は31歳にして桂伸治に入門を遂げた。

一から新しいことを始めるのは怖くなかったのかという秋元の質問に、宮治は楽しい気持ちの方が大きかったと答える。それまで何をやってもある程度そつなくこなせていたが、それ以上努力することがなかったという宮治。しかし、落語と出会い、「ここで一生、生きていくんだ」と初めて思えたそう。そのため、「どんなことを言われようが、辛いけど幸せな期間だった」と厳しい修行期間を振り返った。

■背中を押された妻の一言

一方で、「落語家を目指すことができたのは妻の後押しがあったから」とも振り返った宮治。妻にとっても、宮治が仕事を辞めて安定した収入がなくなるのは相当痛手だ。それでもなお、妻が宮治の退職を後押ししたのは、妻から見ても宮治が楽しそうに仕事をしているとは思えなかったからだという。

「やりたいことを見つけて、その道に行った方が貧乏でも夫婦生活は楽しい」という妻の言葉に背中を押された宮治は、なんと結婚式の当日にみんなの前で仕事を辞めると宣言。無職にはなったが、その13年後に見事真打に昇進し、45歳で「笑点」のメンバーに選ばれた。その際も「色んな人が見てくれてたんだね」と妻は一緒に喜んでくれたそう。そんな妻について、宮治は「あまり感情は表に出さない人で僕が落ち込んでる時は陽気にしてくれて、僕が喜んでくれる時は逆に抑えてくれる」と語った。

今回、生徒役として参加した櫻坂46の石森璃花は歌の歌詞やダンスを覚えるのが苦手。そんな石森から「落語をどうやって覚えているのか」という質問が飛び出す。昔は師匠が弟子に3日間囃を聞かせ、最後に弟子が師匠の前で演じる三遍稽古が主流だったが、現在はICレコーダーなどで録音した師匠の囃を何度も聞いて覚えることが多いそう。それを宮治はノートに書き出し、カラオケボックスで耳栓をしながら繰り返し復唱して覚えている。これまで書きためたノートは150冊にも及ぶそうで、その一部が番組でも紹介された。

■子供達に伝えたい想像力で見る芸能の面白さ

今でこそ大勢の前で落語を披露している宮治だが、子供の頃は意外にも人前で話すのが大の苦手だったそう。学校に行かず、児童相談所でカウンセリングを受けるほど大の人見知りで人嫌い。その理由について、宮治は「この人は何を考えているんだろうって考えすぎちゃうので、人と会わない方が楽だった」と明かす。しかし、人嫌いの短所を空気を読める長所に変えたことで、気持ちもかなり楽になったという。

そんな宮治は現在、各地の小学校を訪れ、落語を披露している。落語を“想像力で見る芸能”とした上で、「100人同じものを見てるのに全然違う情景を描いていたり、笑うポイントも違ったり、そういう面白さを伝えたい」と語る宮治。それだけにとどまらず、学ぶべき人間関係が描かれていることも落語の魅力を子供たちに広めたい理由の一つだそう。誰のことも否定せず、肯定してみんなで一緒に楽しく生きていく落語の登場人物に宮治は共感を示した。

また、宮治が小学校の訪問で子供達に教えているのが扇子や手ぬぐいを使った表現の豊かさだ。実際に番組では、扇子を箸に見立てて蕎麦を食べたり、手ぬぐいを熱々の焼き芋に見立てて食べたりと様々な表現を披露。情景がありありと目に浮かぶ宮治の小芝居にサーヤたちも思わず感嘆の声をあげた。

最後に番組恒例の「かっこいい大人とは?」という質問に、宮治は「いつも人に優しくいつも笑顔な大人」と回答。どんな時でも笑顔で優しく、周りに気配りができる師匠の桂伸治を目標に挙げ、「あんな人になれないなと思いつつも、なりたいなと思う」と語った。

■文=苫とり子

TVerオリジナル番組「最強の時間割」シーズン2のLesson3が配信/(C)TVer