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運転の楽しい電動スポーツカー

2006年まで生産されていたトヨタスポーツカーセリカがEV(電気自動車)として復活するのではないかという期待が高まっている。

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トヨタレクサスは、モジュール式EV用プラットフォームによって、小型スポーツカーから大型SUVまで多様な新型車投入が可能になった。

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トヨタ・セリカ復活の機運が高まっている。(編集部作成予想CGイメージ)    AUTOCAR

このプラットフォーム(名称未定)を最初に採用するのは、2026年に登場予定のレクサスセダンで、先ごろ開催されたジャパンモビリティショー2023ではコンセプトカー「LF-ZC」として予告された。

ジャパンモビリティショーではLF-ZCの他に3台のコンセプトカーが展示され、このプラットフォームの多用途性を示した。全長4.4mのトヨタ「FT-Se」コンセプトは、かつてのMR2の流れを汲む “ミドエンジン” 風のスポーツカーを予告するもの。全長5.2mのレクサス「LF-ZL」は堂々たる高級フラッグシップSUVで、大型SUVトヨタ「FT-3e」は既存のRAV4の1クラス上に位置するモデルだ。

2021年後半、トヨタの豊田章男会長兼CEO(当時)は2030年までに世界で年間350万台のEVを販売する計画を明らかにし、全30車種のEVのうち15車種を披露した。一度にこれほど多くの新型車を発表したのは、当時トヨタがEV開発で出遅れているという指摘に応えるためだった。

ジャパンモビリティショーに出展された4台のコンセプトカーは、2030年にはEVラインナップの一部として販売されているだろう。

次世代EV向けの画期的な構造

新プラットフォームでは車体形状やサイズにおける自由度が高く、車高の低いスポーツカー(FT-Seは全高1220mmで、ポルシェ718ケイマンより75mm低い)も十分に実現可能なようだ。

プラットフォームの構造を簡単に説明すると、まずフロント、センター、リアの3つのモジュラー・セクションに分けられる。コンポーネント(特にeアクスルとHVACシステム)は可能な限り小型化される。フロントとリアのモジュールは鏡のように対になっており、「ギガキャスト」という鋳造技術により、86もの部品(現在は溶接で接合されている)が1つのアルミダイキャスト部品にまとめられて部品数を大幅に削減する。フロントとリアにはeアクスルとサスペンション、センターにはフロア一体型のバッテリーが搭載される。

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モジュール式プラットフォームにより、多様なモデル展開が可能となる。    トヨタ

バッテリーは「パフォーマンス」タイプと呼ばれる最新のもので、角型セルを採用し、現行のbZ4Xのユニットより20%安く、航続距離を2倍にできる。サイズは2種類あり、1つは高さ100mmと薄く、低車高モデルのポテンシャルを引き出せるほか、車種に合わせて幅や長さを拡大・縮小できる。

フロント、センター、リアの3つのモジュールボルトで結合され、修理コストを最小限に抑えるための修理可能な衝突構造を取り付ける。

レクサスによれば、プラットフォームを3つのモジュールに分割することで、「より極端」なクルマを作れるようになるという。また、簡素化、効率化、生産性の向上など、製造上のメリットも引き出すことができ、最終的には工程の短縮が可能になる。このような共通性があるため、理論的には、大きく異なるクルマであっても同じラインで製造することができる。

スポーツカー開発の鍵はバッテリー?

新型車開発の出発点は、乗員を収容する必要性と、乗員が座る場所(例:スポーツカーでは低い位置、SUVでは高い位置)である。

トヨタの中嶋裕樹CTOは、バッテリーの高さが低いからこそ、電動スポーツカーで内燃エンジン車のプロポーションを模倣できるのだと語った。

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EV向けの "マニュアル・トランスミッション" の開発が進んでいる。

バッテリーの高さは、車高の低いレクサスセダントヨタのGRスポーツカーにとって重要なポイントです」

「では、各部品のダウンサイジングを最大化するにはどうすればいいでしょうか。バッテリーの開発によって、出力を拡大したり、車高を下げたり、形や大きさを変えたりすることができます。ダウンサイジング技術によって、見たこともないような形が可能になる。eアクスルとHVACを最小化することで、製品を強化できるのです」

新プラットフォームは、トヨタの車載OS「アリーン(Arene)」と統合される。パフォーマンスカーの場合、所有者がさまざまな機能をダウンロードできるようにするもので、レクサスLFAのパフォーマンスやトヨタGR86のステアリングフィールなどが例として挙げられる。 

中嶋CTOは、バッテリーEV用のクラッチ付きマニュアル・トランスミッションは楽しいクルマの定番になるだろうとし、「単に高トルク、ハイパワーであるべきではなく、いかにして運転する楽しさを提供できるかが目標です」と述べた。トヨタのステア・バイ・ワイヤも新型EVに搭載される。

セリカ復活の意欲を示すトヨタ

2030年までに登場する30車種のうちの1つとして、MR2と同様にセリカの復活も現実味を帯びてきた。

経営責任者ではなくなったが、いまだトヨタの経営と戦略に大きな影響力を持つ豊田会長は社内報『トヨタイムズ』において、セリカの復活を望んでおり、同社幹部にもその意向を伝えていると語った。「お願いはしています。どういう流れになるかはわからないけれど」

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トヨタGR86の "後継" としてEVのセリカが登場するのだろうか……?

GR86の生産期間が限られている(と予想される)ことを考えると、ラインナップには “フロントエンジン” スタイルのスポーツモデルが入る余地があるだろうし、新しいプラットフォームは後輪駆動だけでなく、車種によっては前輪駆動四輪駆動にも対応できる。幹部は誰も具体的なコメントをしていないが、中嶋CTOはセリカの話題になると笑顔を浮かべた。

レクサスチーフブランディングオフィサーであるサイモンハンフリーズ氏は、電動スポーツカーについて次のように語った、

「多くの人々は、電動化によって(自動車が)コモディティ化してしまうのではないかと心配しています」

アキオ(豊田会長)は “それはダメだ” と言い、コモディティにしないよう働きかけています」

2017年、トヨタが「退屈なクルマはもう作らない」と宣言したのは有名な話だ。レース愛好家である豊田会長は、ガズーレーシング部門の設立と拡大の原動力となり、近年GRスープラGRヤリス、GRカローラGR86を発売して高い評価を得ている。

トヨタはEVに力を入れながらも、世界的な自動車メーカーとしての規模を活かして、EVを受け入れる準備や成熟度が異なる各市場向けに、ハイブリッド車プラグインハイブリッド車、内燃エンジン車の開発に引き続き取り組んでいる。実際、2030年までにEV販売350万台を達成したとしても、予測される総販売台数の35~40%にすぎない。


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