高額献金などが問題となっている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の財産保全策について、今国会に議員立法が提出されたことを受け、日本弁護士連合会の小林元治会長は11月22日、定例会見で「被害者救済のために国会は知恵を出してほしい」と述べた。

被害救済の原資となる財産の保全を巡っては、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が財産の散逸を懸念し、特措法を求めていた。

しかし、自民・公明に国民民主が加わって11月21日に提出された「救済特例法案」は、財産処分について「監視」強化するなどとし、保全とは遠い内容。憲法が保障する宗教活動の自由や信教の自由に制約を与えかねないとの意見を受けたものと報じられている。これに対し、立憲民主と日本維新の会は同日、一本化して「財産保全法案」を提出した。

小林会長は「法案で十分な保全ができるかどうかがポイント。憲法上の難しい問題はあるが、もうちょっと歩み寄ることができればいい」と指摘。今後、与野党で修正協議に入る見通しで、「実効性ある被害救済が大事。国会審議では考慮してほしい」と期待した。

●「カルト問題に取り組む組織つくって」

また、日弁連はカルト問題に継続的に取り組む有識者らによる組織をつくるよう求める提言を発表した。フランスの反セクト法にならって「精神または身体において強度の依存状態をつくりだし、維持し、利用することを目的または効果とする活動を行うあらゆる法人が、経済的収奪や虐待などの人権侵害を生じさせることを「カルト問題」と定義した。

かつては、一連のオウム真理教事件を経て、1995年宗教法人法改正時の報告書では「(仮称)宗教情報センター」の設置を求めることが明記されていた。厚生省、警察庁法務省の3者で研究会が行われ、2000年には「(仮称)カルト研究センター」提言もされたが、お蔵入りとなった。

この理由について、霊感商法等の被害の救済・防止に関するワーキンググループ座長の釜井英法弁護士は「分からない。資料自体も国会図書館で探すなどしないとヒットしなかった」と明かし、「提言があったのに、国は対応を怠っていた、忘れていた」と指摘。オウム事件後、もう一度光が当たるまで20年かかった。今の問題も2、3年したら忘れられてしまう」と危機感を口にした。

●「時効の壁乗り越える」

日弁連はこのほか、2022年9月5日から2023年2月13日までにフリーダイヤルやWebなどで受け付けた相談1416件のうち、報告が完了した891件の分析結果を発表。これまで2回集計結果を発表しており、今回が最終となる。

このうち統一教会に関する550件の被害相談の傾向として、辻泰弘副会長は「金額が大きく、長期にわたっていること」と説明。財産的被害額は1000万円以上が計215件と約4割を占めた。また、被害の終わった時期については「現在も継続」が127件(23.1%)いる一方で、「20年以上前」も同数いた。

小林会長は「時効や除斥期間が課題として残っている。法的に救済を仕上げていくには、克服しなければならないハードルだ。時効の壁をどう乗り越えるか学者とも協議している」と話した。

※編集部注:一部表現を修正しました(2023年11月24日午前11時50分)

旧統一教会の財産保全、与党案に苦言 日弁連会長「被害者救済のために国会は知恵を出して」