壮観である。つい4週間ほど前、スタッド・ド・フランスで『ラグビーワールドカップ(RWC)2023』決勝を戦ったニュージーランド代表の6番と10番が目の前に並ぶ光景は圧巻である。11月21日、東芝ブレイブルーパス東京の記者会見にリッチー・モウンガとシャノン・フリゼルが出席。日本行きを決めた理由や準優勝に終わった『RWC2023』、BL東京の印象、そして12月9日(土)に開幕する『NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24』に向けての意気込みを語った。

リッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京)

オールブラックスの指令として全7試合に出場、1トライを含む56得点をマークしたモウンガは『RWC2023』の学びをBL東京に還元したいとコメントした。 「オールブラックスでは素晴らしい経験ができた。ただ現実では自分たちの力が及ばなかった。だが『RWC』では東芝に繋がる多くの学びを得られたと思っている。学んだことをしっかり生かし、最終的に優勝に繋がるようにしていきたい」

2度目の『RWC』で得た教訓は何か。オールブラックスの10番はこう答えた。
ラグビーはある意味シンプルなスポーツ。スペースにアタックし、あとはゲームの流れが大事なスポーツ。大事な瞬間というのは一瞬だが、その一瞬の影響が本当に大きいということを『RWC』で学んだこと。だから東芝ではシンプルなことをしっかりやり切る重要性を意識していきたい」

クルセイダーズで『スーパーラグビー』3連覇や『SRパシフィック』連覇などの原動力となってきたモウンガは充実した新天地での日々を口にした。
「東芝に加わってここまでの時間、本当に素晴らしい時間を過ごせている。チームの文化、雰囲気は本当に素晴らしいと感じている。府中という街も自分自身と家族にとって、自分の居場所と呼ぶにふさわしい素敵な場所だと思っている。まずチームの力になりたい。自分が学んだことを同じチームの選手にフィードバックを与える存在になりたいし、『リーグワン』では自分のラグビー人生の中でも最高のシーズンとなるようにしていきたい」

モウンガは日本行きを決めた要因をこうである。
「私はずっとニュージーランドクライストチャーチに住んでいた。カンタベリークルセイダーズ、そしてオールブラックスプレーしてきた。毎年毎年同じサイクルを繰り返してきた。自分にとって今回の経験は、自分のラグビーの能力を違う環境で試すチャンスだと思っている。このチャンスをくれた東芝のオファーを光栄に思うし、リスペクトしている。自分がここからやることはすべての学びを生かして、すべてを東芝のために費やすこと」

自国でプレーしている選手しか代表入りできないという規定があるNZではサバティカル(長期契約者向けの長期休暇)という制度を利用し、オールブラックスの有力選手が日本へ1年だけやってくるケースもあるが、モウンガは腰掛けのつもりはさらさらない。
「サバティカルという言葉はあまり好きではないが、自分にとっては休みではなく、1年だけのものとも思っていない。しっかり覚悟を持って東芝でプレーしたいと思っている。このクラブのために自分のやる必要のあることをしっかりやっていきたい」

事実、モウンガはBL東京と複数年契約を結んでいる。さらに本人は骨を埋める覚悟だと言う。
「まず東芝に加入するにあたり、自分は東芝にフォーカスしたいという気持ち。オールブラックスは国をまたいだ向こうの話だと考えている。現時点にフォーカスして、自分にできるすべてのことを東芝に提供したい。できるだけ長くここでプレーしたいと考えている。自分がリタイアするまでここにいることも思い描いている」

昨秋、日本×ニュージーランドで対戦したリッチー・モウンガとジョネ・ナイカブラ (C)F.SANO

日本ラグビーにはこのような印象を持っている。
「すごくタフなスタイルだと思っている。ペースがすごく速いし、選手たちは素晴らしいスキルを持っている。80分間諦めずにどんどん向かっていく印象を持っている」

2週間半後に迫った『NTTリーグワン2023-24』の目標はひとつ。
ラグビー選手として、勝っていきたい。これまで自分が勝てる環境のチームにいられたことは幸運に思っているし、そのためにハードワークする。個人としても自分としても『リーグワン』で勝っていきたい」

オールブラックスの仲間が多く在籍する中、モウンガは対戦が楽しみな選手にクルセイダーズでともにプレーしたSHの名前を挙げた。
「かなり多くのオールブラックス経験者がいる。楽しみにしているのは、自分の友人であるブリン・ホール(静岡ブルーレヴズ)との対戦。日本人選手との対戦も楽しみにしている。このリーグは凄くタフだと聞いている。自分の身体への要求が高いと聞いているので、そのチャレンジを楽しみたい」

『RWC2023』決勝を戦った両チームのメンバーの内、14名がリーグワン所属であるが、なぜ世界中のトップ選手が日本に集うのか、モウンガは見解を述べた。
「この国の素晴らしさ、美しさがひとつの理由としてあると思う。便利なのは、飛行機で直接来られること。『リーグワン』は年々、より多くの選手が日本でプレーをしたいと興味を持っているリーグになっている。ニュージーランドに限らず、以前日本でプレーした選手が母国に帰国した際、日本のリーグがいかに素晴らしかったかを伝えているからだと思う」

モウンガはリーチ マイケル主将へのリスペクトの念も表した。
リーチは自分に自信を与えてくれた人であり、自分がやりたいことに自信を持たせてくれる人。ミーティングでもしっかり発言をして、ただ座って遠慮して話さないのではなく、自分もしっかり発言し、東芝のレガシーに加わりたいと思わせてくれる」

この日もうひとりの主役である同じ29歳のFLの評価もコメントした。
「すごくパワフルでダイナミックな動きをする選手。残忍と言っていいほどのボールキャリア。タフで身体が大きく、相手を突き飛ばすランがあり、ラグビーIQがすごく高い。あれだけ身体が大きく細かなスキルも持っている。これ以上褒めると本人がうぬぼれるので、これぐらいにしておきたい(笑)」

シャノン・フリゼル(東芝ブレイブルーパス東京)

お褒めの言葉を受けたフリゼルのモウンガ評はこうである。
「リッチーの強みはチームを引っ張るリーダーシップ。みなが知っている通り、彼は何でもできる能力が高い選手。チームをコントロールする能力が素晴らしい。オールブラックスでもそうだし、クルセイダーズでもそう。『スーパーラグビー』で対戦した時、彼が相手にいて嫌だったが、日本に来た理由のひとつが彼と同じチームでできること。オールブラックスでは同じチームでプレーしたが、東芝で彼と一緒にプレーできることを楽しみにしている」

楽しみはモウンガと一緒にプレーすることだけではない。
「『RWC』はすごく楽しめた。最初から最後まですごく楽しみ充実した『RWC』だった。『RWC』の後に日本に来て『リーグワン』でプレーするのを楽しみにしていた。『リーグワン』はすごくワクワクするリーグ。そこは『スーパーラグビー』と変わりない。リーチをはじめ、リスペクトする選手と一緒にプレーすることを楽しみ。海外から日本に来ている選手たちとプレーすることも楽しみ」

リゼルは日本のラグビースタイルも気に入っていた。
プレーしたいスタイルであること、ニュージーランドに似たスタイルだということも理由のひとつ。日本ではボールをしっかり動かし、スキルの高い試合をする。そこをやりたいとワクワクした。『スーパーラグビー』に似た部分があるし、これから右肩上がりで多くの選手がもっともっと来るだろう。これまで日本でプレーした選手からいい話しか聞かないので、本当に来たかった」

リゼルはFW第3列で並ぶリーチをリスペクトしていた。
「テストマッチで対戦した時は、大変。彼のふるまい、練習への姿勢、非常にハード。チームメイトを助けている。自分もなりたいと思える選手」

またハイランダーズでチームメイトだった姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)との再会を楽しみにしていた。
「ヒメは親友のひとり。ハイランダーズに来てくれて、本当にいい人。私が東芝に加入すると決めてからもやり取りをしているし、彼との対戦を楽しみにしている」

モウンガと同様にフリゼルも優勝が目標だとキッパリ。
「自分にとっては東芝でプレーすることにフォーカスしている。そして『リーグワン』で優勝するために必要なことを最大限に考えていきたい」

果たして、モウンガとフリゼルはどんなパフォーマンスを見せるのか。『NTTリーグワン2023-24』開幕戦・BL東京×静岡BRは12月9日(土)・味の素スタジアムにてキックオフ。当日は先着5000名にオリジナル「応援バナー」をプレゼント、全員にマッチデープログラムを配布する。チケット発売中。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

東芝ブレイブルーパス東京対静岡ブルーレヴズ NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 DIVISION 1のチケット情報
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11027036

(写真左より)シャノン・フリゼル(東芝ブレイブルーパス東京)、リッチー・モウンガ(同)