就職氷河期が最も過酷だった2000年。大学卒業しても5人に1人が就職も進学も出来なかった……そんな時代。「就職を諦めて進学しよう」というのも一つの選択肢でした。その作戦が功を奏した人もいれば、最悪の結果となった人も。みていきましょう。

就職氷河期が一番過酷だった2000年…大学院進学に救いを求めた人たちの末路

バブル崩壊後の1993年から2005年卒までを指す「就職氷河期世代」。 1994年流行語大賞に選ばれたことで世間に知られるようになりましたが、最悪だったときが2000年。厚生労働省によると、求人倍率は0.99%と「1」を割り込み、採用率は91.1%へ減少。大学卒業者の22.5%、5人に1人が学卒無業者だったといわれています。

――就職を諦めて大学院にでもいくか

そんな決断を下す人も多くいました。「そんな理由で進学するなんてお金の無駄!」と怒る人もいるかもしれませんが、大学を卒業しても就職浪人が確定というなか、社会に出るのを先延ばしにし状況が改善されるのを待つというのもひとつの方法だったのです。

しかし2000年に大学を卒業し、大学院に進学。その2年後、修士課程を修了したら状況が改善されていたかといえば……状況はそれほど変わっておらず、なかには大学院卒が就職のさらなる足枷になる場合も。

――年齢が上なのに、社会人経験はないんですね

――あなたの研究内容を活かせる就職先はなかなかなくて……

――院卒⁉ 大卒より高い給与は払えないよ

現在も必ずしも院卒が就職に有利とは限りません。文部科学省令和4年度学校基本調査』によると、大学卒の就職率は74.5%、進学率は12.4%。大学院・修士課程の就職率は76.1%、進学率は10.3%、大学院・博士課程の就職率は69.3%、進学率は1.4%。就職を念頭においた場合、大学院進学が就職に有利に働いているという傾向は見られません。

2000年代初頭、景気が低迷するなかでは、さらに大学院卒は敬遠される傾向にありました。結局、大学院・修士課程を修了したのに関わらずそのアドバンテージを活かせず、就職活動にも失敗。フリーターとして社会に出たり、有期雇用の技術職・研究職として採用されたりと、なんとも不安定な船出となる人が大勢いました。

大学院卒で「年収200万円未満」の衝撃

時は流れ2023年。大学院・修士課程修了で就職活動失敗、非正規として社会人になるという屈辱を味わってから20年あまり。2005年あたりに景気は回復。このタイミングで、正社員になった人は命拾いしたかもしれません。2008年にはリーマン・ショックが起こり、世界的な不況に。再び就職の厳しい時代に突入し、その傾向は2012年あたりまで続きます。

この時点で大学院を修了して10年あまり。その間、一回も正社員になれなかった人はかなりの厳しさ。大学院を修了した時点で「年齢を重ねていること」が不利に働いていたのに、さらに年を重ね、30代も半ばになって正社員としての経験もゼロとなると絶望的だといえるでしょう。

――大学院を卒業したのに、年収200万円以下(笑)

と自虐的な投稿をする46歳の男性。まさに氷河期世代のなかでも一番過酷だったころに「大学卒業」→「大学院進学」という道を辿りました。しかし前述の通り、2年では状況はさほど変わらず、男性も修士課程修了後はフリーターとして職を転々としたといいます。現在は、非常勤講師としていくつかの学校を掛け持ちし、月収15万円程度。もちろん賞与はほぼないので、年収は月収の12倍だといいます。

厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』によると、40代後半・非正規社員の月収の中央値は19.9万円。下位25%で17.2万円、下位10%で15.0万円。つまり男性は非正規社員の中でも、下位10%……給与をお題に思わず自虐に走るのも納得です。

――給与を愚痴ると「自分の責任」とブーメランが飛んでくる。時代のせいと呪うこともできない

――そろそろちゃんとしないとと思うけど、大学院卒のプライドが邪魔……

――50代を前に貯金もゼロ。借金がないのが唯一の救い

男性の投稿からは、なんとも切ない言葉が並びます。

もし今後正社員を目指すなら。40代後半・正社員経験なしだと、どんな職業でもハードルは高めだということを心しておく必要があります。

そのうえで、人材難の業種は狙い目。2024年問題で揺れる物流業界や高齢化問題が加速する介護業界、インバウンド需要がコロナ禍前に迫る飲食業・宿泊業などは、未経験でも積極的に採用をしています。ただし、これらの業種は平均給与も低め。厚生労働省によると、正社員・40代後半男性の平均月収は39.5万円。それに対し、物流業界(運輸業、郵便業)の平均月収は32.5万円、介護業界(社会保険・社会福祉・介護事業)は32.3万円、飲食・宿泊業は33.4万円と、いずれも平均を大きく下回ります。

それでも現状より倍近くの月収となり、生活も断然上向くはず。色々見渡せば、浮上のチャンスはまだまだ転がっています。

(※写真はイメージです/PIXTA)