本日11月23日より公開された北野武監督最新作『首』より、大森南朋、浅野忠信、福島総司プロデューサーからのコメントが到着。「笑いをこらえるのに必死でした」という撮影秘話を明かした。

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 本作は、北野監督が初期の代表作の1本『ソナチネ』と同時期に構想し、30年もの長きに渡って温め続けていた戦国スペクタクル映画。巨匠・黒澤明が生前「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた念願の企画の映画化だ。“本能寺の変”が、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の野望や裏切り、運命とともに描かれ、キレ味抜群のバイオレンスと笑いをはじめとした北野ワールドのエッセンスが全開する。

 この野心作に、豪華&異色のキャストが集結。北野武自らが“本能寺の変”を策略する羽柴秀吉を飄々(ひょうひょう)と演じ、織田信長に複雑な感情を抱く明智光秀西島秀俊が演じる。加瀬亮が狂乱の天下人・織田信長を怪演し、浅野忠信と大森南朋も秀吉を支える軍師・黒田官兵衛と弟の羽柴秀長をユーモアたっぷりに演じ切る。さらに、中村獅童が秀吉に憧れる百姓・難波茂助を演じ北野組に初参戦を果たす。そのほか、木村祐一、遠藤憲一桐谷健太、小林薫、岸部一徳らが歴史上の重要人物に独自のキャラクターでなりきっている。

 信長の跡目を巡り、血で血を洗う戦いが繰り広げられる『首』の世界。しかし、本作を単なるバイオレンス映画ではなく一級のエンターテインメント作品にしているのは、北野監督ならではの“笑い”だ。いつ、誰が首を取られてもおかしくない緊迫した状況で突然訪れる、人間臭く、とぼけた会話や行動が絶妙な笑いと緩和を生み出している。中でも羽柴秀吉たけし)、羽柴秀長(大森)、黒田官兵衛(浅野)の3人のシーンは「台本なし、NGなし」という緊張感と、ビートたけし無茶振りとも言えるアドリブに、全力で応える大森と浅野に笑いを堪えることができない印象的なシーンとなっている。

 『Dolls』『アキレスと亀』『アウトレイジ 最終章』に出演し、本作で4本目となる北野組常連の大森南朋は、常に秀吉のそばにいる秀長役での出演のオファーに対して「『アウトレイジ 最終章』のときもそうだったんですけど、近くにいさせてくれるということは『何かあったら頼むぞ、大森くん!』ってことなんです。それは分かっていたので、撮影前に『当日の膨大なセリフの追加やアドリブはやめてください』とだけは言わせていただきました(笑)。それでもセリフの追加や変更は普通にあるので、それに恐怖も感じながらも、楽しみにしていました」と語る。

 大森が感じた“恐怖”はまさに北野組ならではの撮影方法にある。それは撮影が「1回」しかできないこと。「毎回そうなんですけど、すぐ本番に行くんです。余程のことがない限り『もう1回』はないので、すごく怖い。1回しかやれないあの緊張感は本当にスゴくて、大先輩の小林薫さんですら緊張しすぎて『イップス(運動障害、神経疾患)になった』って言われてましたから(笑)」と、撮影の苦労話を明かした大森。しかし、秀長役を演じたことについては「たけしさんの近くにまたずっといられらると思い、それが嬉しかったです」と、誰よりも北野監督の側にいられたことの喜びもあったそうだ。

 同じく秀吉の天下取りを支える稀代の軍師・黒田官兵衛を演じた浅野忠信は『座頭市』から約20年ぶりの北野監督作品。登場人物全員が「天下」を狙う中、一歩引いた冷静な官兵衛を演じている。浅野は「北野監督はやっぱり“笑いの神様”みたいなところがあるし、笑いのレベルの高さにはいつも驚かされます。監督が今回の現場で『浅野くんで今度はおかしなことをやりたいね』って言ってくれたのも、そこが嬉しかった」と語る。

 「キャストの皆さんは、こうすれば監督が喜んでくれるということを演じる前から心得ていて。そのシーンで自分が何をしたらいいのかを考えてきていますよ。でも、いきなりやったアドリブに周りがどう反応するのかをいちばん楽しんでいたのは監督ですよ」と語るのは、本作のプロデューサーの福島総司。秀吉・秀長・官兵衛のシーンについて「監督は基本、本番のときしか現場にいない。段取りでは代役の方が台本通りのセリフを喋るんですけど、『じゃあ、本番行こうか』と言って秀吉の姿で現場に来た監督が、そこでいきなり台本とは全然違うセリフを喋り出すわけですよ。周りのキャストやスタッフは笑いをこらえるのに必死でした(笑)」と撮影の裏話を明かしている。

 本番1回。台本なし。そして“笑いの神様”のアドリブ。更に通常であれば使わないようなキャストが笑ってしまった画も使う。まさに“笑ってはいけない”状態の撮影現場で生み出された、一流のキャストたちの演技合戦も見どころの1つとなっている戦国スペクタクル超大作に仕上がっている。

 映画『首』は公開中。

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