「浮気“癖”」というくらいですから、浮気をする人は男女問わず浮気を繰り返すものと思われがちです。浮気をするにも理由があります。「そんなもん、理由なんか言わせない」とパートナーのお怒りはごもっともですが、視野を広げて浮気問題を考えてみましょう。

 一体どんな“浮気の理由”があるのか。「恋人・夫婦仲相談所」所長である私が知る、3組の夫婦をご紹介します。

妻の妊娠中に3度の浮気を繰り返した夫

 明美さん(40歳、仮名)の夫、伸之さん(43歳、同)は、明美さんが妊娠するたびに浮気を繰り返していました。それをおおらかに笑い飛ばすのが、彼女のすごいところです。

「一応、隠れて浮気しているつもりだと思うんですけど、バレバレなんです。スマホはロックしてないし、あり得ないうそで出かけるし。1人目のときは本当にショックで、泣きながら怒りました。私がしんどくて不安なときなのに。『二度としない、深く反省している』と言ったので許しました。

そして2人目を妊娠中にも浮気をして、『またか』と。私も上の子の育児に、仕事にと大変だったし、つわりもひどかったし、夫のことを放っておいたんです。もちろんエッチも拒みました。だから強くとがめていません。出産後は浮気相手と別れたみたいで、子煩悩パパになりました。

そしたら、3人目を妊娠しているときにも一度だけ、飲み屋の女性と浮気をしたんです。香水のにおいをつけて朝帰り。それで、『何でいつも妊娠中に浮気するの?』って聞いたら『セックスがしたいから』って。なんか笑っちゃいました。あーこの人、本当に“動物”なんだなって。やめてって言ってもやめないですよ。

浮気は腹立たしいけど、夫のことは憎めない。本能のまま生きているのがかわいく思えます。それはそれでしょうがないです。浮気で大金を使うわけでもないし、家に戻ってくればよしとしています」

 繰り返される浮気問題。明美さんのように、割り切って許容する妻も確かに存在します。「帰ってくるのは妻の元」という自信が、安定感抜群です。パートナーの方も悪びれず、本音を話すというのはまさに信頼関係のたまもの。お互いに許容度が同レベルという、理想の夫婦関係です。

飽きちゃうんだからしょうがない

 文香さん(45歳、仮名)は、見るからに色っぽい美女です。結婚前から常にハンターで、狙った男性は必ず落とします。それが結婚後も続くのはいかがなものか――。武勇伝のように話す文香さん。やれやれと思いながら話を聞きました。

「『この人いいな』と思ったら、男女の関係にならずにはいられないんです。でも、しばらくすると飽きちゃうんです。今は息子の課外部活チームのコーチと、居酒屋で知り合った大学生とお付き合いしています。コーチとは2年付き合っていて、もう飽きてしまって。そろそろお別れしようかなと思っていたところに大学生の彼が現れて。今は彼に夢中です。

いろんな人と付き合ってみたいと思う気持ちは止められません。夫は気が付いていると思いますが、数年前、自分も浮気して私に見つかったので何も言いません。浮気した夫とは気持ち悪くてできません」

 性依存症というのか、性欲過多というのか、はたまた自分のことは棚に上げて浮気を繰り返す“自己中妻”というのか。とはいえ、文香さんは心に寂しさを抱えて武勇伝をつくり上げているのかもしれません。夫婦関係がうまく回らない歯がゆさを、リベンジのような形にしたのかもしれない。これは、他者には理解できない深い浮気問題だと感じました。

みんな浮気しているから、するのが当たり前だと思っていた

 忠司さん(38歳、仮名)は不動産会社に勤める営業マンです。今の会社に勤める前の会社(そこも不動産系)で、妻の百合子さん(仮名)と知り合って職場結婚。百合子さんは妊娠をきっかけに会社を退職しました。

 妻の退職後、忠司さんは同僚と浮気を始めました。浮気相手が本気になったのでまずい状況に陥り、妻にバレないよう画策しながら別れましたが、仕事のミスもとがめられたので退社して転職。転職先でも、すてきな女性がいれば付き合おうと思っていました。

「今の会社に来てびっくりしたんです。周りに浮気をしている人が全然いないから。前の会社は結構みんな浮気していて、新しい派遣の人が入ってきたら男たちは狙いに行くって感じでした。会社では結婚指輪を外しているという同僚もいました。それが当たり前だと思ってたかなあ。

誰と誰が今付き合っている、なんていうのは公然の秘密。上司も同僚も『浮気しない男は草食』みたいな言い方してたし。『女にモテない男は営業の仕事が下手だ』というか。妻はそういう環境を知っていたので、『絶対浮気しないでよ』と言いつつ、しょうがないと感じていたかなと思います。

今の職場、誰も浮気してないんですよね。びっくりしました。いや、隠してるのかなとも勘繰りました。でも、前の会社が異常だったと気付いたんです。新卒で入った会社だったので、社会ってそういうもんだと思ってしまった。妻のことは愛していますし、もともと僕は浮気には向いていません。バレたら嫌だってずっとビビってるし。ただバカにされたくない、仕事ができないと思われたくない、というプレッシャーで浮気していた。今は全く他の女性に興味はありません」

 周囲に流されて浮気をした。情けない言い訳ですが、環境は人の気持ちに影響します。「朱に交われば赤くなる」。浮気がとがめられない環境にいれば、「していいのか」と思ってしまう。いやいや、ダメでしょう。それはパートナーも浮気相手も傷つけることになります。ダメなものはダメ。「痴漢、泥棒、暴力、浮気」。社会的にダメな行為に「浮気」を位置づけてブレないよう生きてください。

 夫や妻の浮気に気付いたときに、浮気をした事実を責めるのではなく、「なぜ浮気をしたのか」という“理由”をしっかりと聞き、その答えをどう受け止めるのか。判断し、今後につなげるのは自分自身です。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

“浮気常習犯”たちの主張とは…