また「私人逮捕系YouTuber」が逮捕された。警察官でなくとも、痴漢や窃盗などの「現行犯」ならば、一般人が取り押さえて確保することができる。この私人逮捕の場面を売りとしたYouTuberが問題になっていたのは、他人の顔をモザイクなしで勝手に晒したり、現行犯でもないのに強引に取り押さえたり、あるいは犯行自体をデッチ上げるやり方だった。

 今回逮捕された男2人は、女性を装って「覚醒剤を使って性行為をしよう」と呼びかけた男性に覚醒剤を購入させ、警察官職務質問させて動画撮影をしようとした。自らの正義感を好き勝手に振り回す行為。これが跋扈すれば秩序は崩壊し、大きな社会問題へと発展する。

 昔から「必殺仕事人」シリーズに、ブラック・エンジェルズやマーダーライセンス牙、怨み屋本舗など、要は法で裁けぬ悪を討つ作品は人気を博してきたが、やはり現実はフィクションのようにはいかないものだ。

 主に電車内の痴漢をターゲットにしていたという、この私人逮捕系YouTuberだが、実はSNSなどでは女性を中心に「支持」する声も少なくはなかった。いったいナゼなのか、と思うかもしれないが、それだけ痴漢被害は深刻なのだろう。事実、筆者の周囲の女性に聞く限りではみな、何かしらの痴漢被害に遭った経験があり、軽視はできない問題である。結局、根本的な解決に取り組まない限り、問題は棚上げされたまま。

 昨年夏、痴漢被害が数多く発生するというJR埼京線で、とんでもない駅員アナウンスが問題になった。

「痴漢は多くいらっしゃいます。痴漢をされたくないお客様は後ろの車両をぜひご利用ください」

 鉄道会社も私人逮捕系YouTuberへの苦言コメントを出すなら「お客様が安心して電車に乗れるよう、痴漢の撲滅に取り組みます」くらい言うべきだった。痴漢の撲滅は、被害に遭う女性、そして冤罪を恐れて日々ちんまりと電車に乗る男性の双方にとって、ウインウインとなるはずだ。

(群シュウ

アサ芸プラス