2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。全国16地区で活躍するラッパーが3名1組となって、それぞれの地元の威信を賭けてフリースタイルバトルに挑戦。勝利チームは敗退チームより好きなラッパーを1名だけ吸収していき、最終的に天下統一を果たすと、その暁として賞金100万円が贈呈される。

参考:【写真】バトルで勝利し、呂布カルマと語るKANDAIと泰斗a.k.a.裂固

 以下より、11月21日に公開された【#8】のハイライトを振り返っていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。

・『フリースタイル日本統一』前回までのおさらい

 オンエア開始から前回の【#7】まで、トーナメント1回戦(壱万石の戦い)として、TEAM東北がTEAM北海道、TEAM北関東がTEAM甲信越、TEAM埼玉がTEAM東京、TEAM神奈川がTEAM千葉を下している。

 なかでも前回の【#7】では、TEAM千葉とTEAM神奈川がバトルに。TEAM神奈川からは、いわゆる“バトルラッパー”ではない“音源勢”として、LEXやLeon Fanourakisなどとも肩を並べるSANTAWORLDVIEWが一番手に名乗りを上げ、2人抜きの奮闘ぶりを見せる。

 最終的には、TEAM神奈川がバトルに勝利し、『フリースタイルダンジョン』で2代目モンスターを務めていた輪入道を自チームに吸収。先輩MCのFORK(ICEBAHN)を温存したまま、最強のカードを手に入れただけに、オンエア後には“TEAM横浜がもう優勝確定では?”とSNSが軽くざわついていたが、あの輪入道すら“必殺仕事人”ともいえる淡々としたラップで制した次鋒=句潤にも本当に恐れ入るばかり。

 さて【#8】では、TEAM福井(ASS:B Miller×:DSLowvv×KANDAI)とTEAM東海(呂布カルマ×泰斗a.k.a.裂固×楓)が激突。『ULTIMATE MC BATTLE(UMB)』や『KING OF KINGS(KOK)』地方予選優勝者が集まるTEAM福井に対して、TEAM東海には呂布カルマや裂固と、高いバトル戦績がすでに広く知られているラッパーが。彼らとタッグを組む楓も、17歳ながら『UMB2023』愛知予選での優勝をはじめ(オンエアでは準優勝となっていたが)、最近よく名前を見かける印象がある。そもそも天下統一は、東海地方=尾張・名古屋から始まったもの。史実と同じく、自分たちの地元が天下統一を果たすと、バトルを目前に自信たっぷりに語っていた。

・楓、ASS:B Millerを圧倒 未成年の手痛いところを突かれるも……?

 改めてルールを説明すると、かつての『フリースタイルダンジョン』放送当初のスタンダードであった、8小節2ターンの3ラウンド制とは異なり、今回は8小節3ターンの1ラウンド制に。判定は、KEN THE 390ら5名の審査員によって下される。

 まずは、ASS:B Miller(後攻)と楓(先攻)が、DJ KENZI aka BLACKBEATZ「NO91」のビートフリースタイル

楓:福井 飛び降りる東尋坊? 逆に突き落としてやる太平洋

ASS:B Miller:敵は俺の中 既に暗殺 福井 敦賀 I rep S.I.C.K 仲間の生活変えるClassic

楓:足りない まだ足りない 俺ら東海 never still dieだ

ASS:B Miller:足りないとか言いながら デイイベントしか出てないようなクソガキ

楓:たしかにナイトイベントはいまだ出れねぇし でも言い続けてんだよ そういう凡人たちに俺は夢見させたいって言ってんだよ/お前はラストする後悔を 富士山見上げ勝利 東海道

 紹介VTRで取り上げられた福井の観光名所・東尋坊を引用しながら、相手を言い負かすべく距離を詰め寄る楓に対して、ASS:B Millerは途中、小節の語尾合わせに迷いを生じる場面もあったが、あくまでも自身の信念を貫く言葉を提示。

 楓もまた、肝心なラインでやや噛んでしまう部分もありつつ、“デイイベント”の下りをしっかりとアンサーしたり、〈足りない まだ足りない〉のラインは、リズムをもたれさせて、その後のラインに期待感を抱かせるなど、フロウの面でもASS:B Millerを一歩上回っていた印象だ。やや治安の悪いビートと相性がよい“上から”のスタンス然り、地元レペゼンを押す相手に対して、最後には“東海道”と、同じ手法ながらもそれを上回る綺麗さでオチをつけていたところも勝因なのだろう。

 最終ターンで、楓のラップを認め、彼に対してだけ通用する的確なパンチを打てなかったASS:B Miller。その点も踏まえて、楓:4票、ASS:B Miller:1票という結果は納得だったのではないだろうか。

・裂固、肩慣らし程度にライム殴打〈お前 途中脱落 残念 余裕綽々〉

 そのままの勢いで、楓は続く:DSLowvvにも勝利を収めるが、そのまま“3タテ”とはならず。KANDAIを前に、次鋒・裂固を登場させることとなった。選ばれたビートは、DJ Koki「CITY SPARK」。

KANDAI:今日は高くまで登ってくフライト 田舎レペゼンの田舎っぺ大将

裂固:俺も背負ってる田舎街 お前は島流ししてる 俺は板挟みの東京でも逃さない/俺が取るぜ 楓の仇 俺にボコられてお前帰れよ田舎に

KANDAI:俺は真実を伝えに来た 東京のシーンにはいないMCだ

裂固:お前みたいなザコの称号は剥奪 そしてれっこがお前の心臓を速攻虐殺 分かるだろ それがお前 お前 途中脱落 残念 余裕綽々

 KANDAIが1ターン目で放った“田舎”のワードから、田舎街、島流し、板挟み、逃がさないと、すかさず4つのライムを連打。さらにそのターンの8小節目には再び〈楓の仇〉と〈帰れよ田舎に〉で、“田舎”のトークテーマがループするような構成に。この“帰れ田舎に”は、フリースタイルバトルにて多用されるフレーズのひとつではあるものの、ここでは自チームの仲間の名前と掛け合わせた点で、使い回しではない見事な言葉選びだったといえる。

 KANDAIもまた、裂固が“ジャックザリッパーのよう”と自らを形容したことに、それは誤りであり〈俺は真実を伝えに来た〉と応戦。〈東京のシーンにはいないMCだ〉は、OZROSAURUSProfile」から引用した最高のラインだったが、それでも裂固の〈ザコの称号は剥奪〉から始まるダメ押しを上回ることができず。その模様は、TEAM福井メンバーもお手上げと言わんばかりに、気まずそうにニヤけてしまったほど。さらに、楓が繰り出していた“心臓”のワードもさらりと拾い上げている点で、なんとも達者なものかと思わされてしまった。

 もちろん、結果は裂固が満場一致で勝利。TEAM東海は、呂布カルマのお眼鏡にかなったKANDAIを吸収し、2回戦へと駒を進めるのだった。次回の【#9】では、TEAM京都とTEAM大阪による一戦がオンエアを予定されている。

(文=一条皓太)

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