そば屋で、そばを食べた後に提供されることの多い「そば湯」。とろみのある乳白色の液体の正体は、そばをゆでた後の「ゆで汁」です。このそば湯について、「大好き!」「おいしい」「そば屋さんに行く楽しみの一つ」という人は多いですが、その一方で「ただのゆで汁…?」「栄養あるの?」といった疑問を持っている人も、実は少なくないのではないでしょうか。

 実際のところ、そば湯には栄養が含まれているのでしょうか。管理栄養士の桜井このさんに教えていただきました。

ビタミンやカリウムが流れ出る

Q.そもそも、「そば湯」はなぜ店で提供されるようになったのですか。

桜井さん「そば湯を出す文化は関東圏を中心に根付いていますが、江戸時代に出版された本では『そばを食べ過ぎても、そば湯を飲めば食あたりにならずに済む』という記述があるそうなのです。当時から、そば湯は消化を促す効果があることが分かっていたので、そば屋で提供するようになったのではないかと思われます」

Q.そば湯には、栄養素が含まれているのですか。

桜井さん「そば自体に含まれるビタミンやカリウムなどの成分は、そばをゆでるとゆで汁に流れ出てきます。そのため、そば湯を飲むことで、そばの栄養素を余すことなく摂取できるというメリットがあります。例えば、カリウムには体内の塩分を外に排出し、むくみを予防する効果があったり、ビタミンB1・B2は炭水化物をエネルギーに変換する効果があったりします。そば湯は、ただ単に『そばをゆでた後に残った湯』というわけではないのです」

Q.ちなみに、うどんにはゆで汁を飲む習慣がないと思いますが、それはなぜですか。

桜井さん「栄養面でいうと、うどんよりそばの方が、含まれる栄養素が多いのです。うどんは小麦と塩が主な原材料であるため、熱を加えることによって流れ出るビタミンやミネラルなどの栄養素が少ないです。そのため、あえて『ゆで汁まで飲む』といった習慣が根付かなかったのではないでしょうか」

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 そばには栄養が豊富に含まれているのですが、加熱するとゆで汁に流れ出てしまう水溶性の成分も多いとのこと。そこで、ゆで汁を食後に提供することによって、そばの栄養がぎゅっと詰まったそば湯を飲む習慣が広まったのですね。そばをおうちで作ったときには、ゆで汁を捨てず、そば湯として飲んでみてはいかがでしょうか。

オトナンサー編集部

「そば湯」って栄養あるの?