某日、12月7日後楽園ホールで開催される『初代タイガーマスクトロングスタイルプロレスVol.27 ―力道山先生没60年追悼興行―』でレジェンド王座に挑戦する関根“シュレック”秀樹がその熱い胸中を明かした。

12月7日に後楽園ホールで開催される『初代タイガーマスク ストロングスタイルプロレスVol.27 ―力道山先生没60年追悼興行―』

12月7日後楽園ホールで開催される『初代タイガーマスクトロングスタイルプロレスVol.27 ―力道山先生没60年追悼興行―』

関根“シュレック”秀樹は、警察官を経て柔術家としてプロのリングに上がるようになり、巌流島などで活躍。若かりし頃にUWFインターナショナルに憧れてプロレスラーを志した夢を諦めることが出来ず、盟友・佐藤光留の主催するハードヒットにて2018年7月にプロレスラーデビューも果たした。

最近ではRIZINでの活躍が知られ、ベイダーマスクを被りUWFのテーマで入場するという“プロレスラー”としての愛と誇りを以て試合に臨む姿が話題に。エモーショナルな試合内容やマイクなどが格闘技ファン・プロレスファンの心を打ち、今のシュレックは日本人ヘビー級MMA選手で最も人気の高い選手の1人になっている。

昨年12月にはアントニオ猪木氏の追悼興行『INOKI BOM-BA-YE×巌流島』に“令和猪木軍”のメンバーとして出場するなど、ストロングスタイルの魂もその胸に秘めているシュレックの闘いぶりは初代タイガーマスクや“過激な仕掛け人”新間寿も認めるところであり、ストロングスタイルプロレスにも定期参戦中だ。

落ち武者ヘアーにされる関根“シュレック”秀樹(中央下)

落ち武者ヘアーにされる関根“シュレック”秀樹(中央下)

そして、シュレックの魅力はストロングスタイルな試合ぶりだけではない。

今月8日にはバラモン兄弟との試合で髪をバリカンで刈られて落ち武者ヘアーにされてしまうという憂き目に遭うも、それを逆手に取り、同月14日にはシュートボクシングで史上初の敗者髪切りマッチを敢行し勝利するなど、常に話題を振りまくエンターテイナーとしての資質も兼ね備えている。

今年8月にはシュレックが“初代タイガーマスクの二番弟子”間下隼人の持つレジェンド王座に挑戦することが決まっていたが、シュレックが同年7月に大怪我を負ったために(右膝外側側副靭帯損傷、大腿骨剥離骨折、前十字靱帯損傷、全治3ヶ月)流れてしまっていた。

約4ヶ月の時が流れ、シュレックの怪我も回復。間下も王座を守り続けて、ようやく2人の王座戦が実現する運びとなった。

『初代タイガーマスク ストロングスタイルプロレスVol.27 ―力道山先生没60年追悼興行―』でレジェンド王座に挑戦する関根“シュレック”秀樹(後列右から2人目)

『初代タイガーマスクトロングスタイルプロレスVol.27 ―力道山先生没60年追悼興行―』でレジェンド王座に挑戦する関根“シュレック”秀樹(後列右から2人目)

戦前の記者会見でも落ち武者ヘアーのまま現れたシュレックは、「プロレスで起きたことはプロレスでしか精算できない。負けたらお前もこの髪型に出来るか?」と、間下に落ち武者式カベジェラ・コントラ・カベジェラを提案。間下もシュレックの覚悟を認めて受け入れ、この話を聞いていた初代タイガーも「それは私も見てみたい。期待しています」と乗り気の姿勢を見せたことから、一時は髪切りマッチへのルール変更が決定。

しかし、会見後に新間寿が「髪切りマッチなんてやらなくても良い試合を見せられるはず」と雷を落としたことから、通常ルールでの試合に再変更されてしまった。

左からレジェンド王者・間下隼人、新間寿会長、関根“シュレック”秀樹

左からレジェンド王者・間下隼人、新間寿会長、関根“シュレック”秀樹

シュレックは諦めること無く試合当日まで髪切りマッチの実施をアピールしていく姿勢を示したが、新間の鶴の一声ですぐに引き下がった間下には言いたいことがあるという。

今回のインタビューでは、記者会見を終えたばかりで興奮冷めやらぬシュレックを直撃。レジェンド王座にかける熱い思いや、胸の奥に秘めた“ストロングスタイル”へのこだわりを聞いた。

「子供のころの自分に言っても絶対信じてもらえない」――初代タイガーマスクが認めた実力者・関根“シュレック”秀樹が語る“ストロングスタイル”を象徴するベルトの価値

――シュレック選手にとって、レジェンド王座とはどのような価値を持つベルトなのでしょう

佐山先生に認められるためのベルトだと思ってます。自分の青春はUWFとともにあって、UWFに憧れてプロレスラーになりたいと思ったわけですから、その原点にある佐山先生は俺にとって神にも等しい存在です。あれから20年経って警察官を辞めて、プロレスラーになって、佐山先生の思いを知ったとき、『UWFもストロングスタイルもプロレスの一部』と悟ることが出来たんです。自分が憧れたのは猪木さんの情念のプロレス、そこから生まれたストロングスタイルのプロレスなんだってことが分かったからこそ、その思いを一番色濃く象徴しているこのベルトはプロレスラーを志した人間として絶対に巻きたいベルトです。

――初代タイガーマスクに認められたいという思いが、シュレック選手を突き動かしているということですね

そうですねえ。自分が小学生のころに出てきたタイガーマスクに衝撃を受けましたからね。学校であっという間に流行りましたから。ダイナマイト・キッドとの試合は、もう何回も何回も見ましたよね。

――記者会見の中では、初代タイガーから「シュレック選手はセメント力がある」という言葉がありました

現実感がないですよね(笑)、佐山先生が自分のことを……。そもそも、認知されていること自体が嬉しいですよ。関根“シュレック”秀樹という選手がいるってことを知っていただけているだけで嬉しいのに、ああ言っていただけるなんて。子供のころの自分に言っても絶対信じてもらえないでしょう(笑)

――実力を認めてもらえているからこそ、結果が欲しいですね

もちろんです。佐山先生からの期待に応えられないなんて、男じゃない。ストロングスタイルの歴史に関根“シュレック”秀樹の名前を刻みます。

――現在レジェンド王座のベルトを巻いているのは、初代タイガーの愛弟子である間下選手です。間下選手についてはどういう印象を持っていますか?

元々は「スーパー・タイガーにくっついてる弟分」って印象で、試合も見てなかったですね。「やることもねえだろう」と思ってましたし。だけど、去年から印象が大きく変わったんです。指を骨折したまま試合に出続けて、手術の後にも痛み止めを打って、お客さんに全然怪我を悟らせない闘いでベルトまで獲った。それって、俺が描く理想のプロレスラー像だったんですよ。

プロレスラーってアスリートとは違ってどこか怪我した状態で闘い続けるのが当たり前で、その中で万全な状態を作っていくものじゃないですか。俺は間下くんのあの姿を見て初めてプロレスラーとして認めましたよね。興行に穴を開けない。怪我をしていてもそれ以上の力を出すっていう。そんな中で1年間やり続けた姿を見て、チャンピオンとして、男として認めましたよね。だからこそ間下くんに挑戦したいと思って宣言させていただいたんですけど、そのときには叶わなくて。やっと今回間下くんと闘うことが出来る。やっと、ですよ。ずっと待ってたんだ。

マイクを持つ姿にも貫禄が出てきたレジェンド王者・間下隼人(左)

マイクを持つ姿にも貫禄が出てきたレジェンド王者・間下隼人(左)

――間下選手が男としてもプロレスラーとしても尊敬できる選手に成長したと

はい、そう思います。アスリートだったら休みますよ、あんなのは。そんなレベルの怪我をしながら試合をしたからこそ、プロレスラーとしての色気、チャンピオンとしての風格がすごく出てると思います。今の間下隼人が相手だからこそ、最高の試合が出来ると思ってます。

「ストロングスタイルは何でもアリじゃねーのかよ」――“世間”と闘ってきた新間寿に対するへのリスペクト、髪切りマッチを阻止した新間寿に対する葛藤

――今回の王座戦シュレック選手から敗者髪切りマッチを提案しましたが、新間寿会長の一言で却下されてしまいました

素直に残念に思ってます。プロレスでバラモンカット、シュートボクシングで髪切りマッチして、ストロングスタイルプロレスでタイトルマッチをすんのに、髪の毛を賭けないのっておかしくないですか?

――ストロングスタイルを体現するためのリングで髪切りは、“不純物”として見做されてしまったのではないかと……

いや、ストロングスタイルって守りじゃなくて、攻めのスタイルじゃないですか。それで言ったら史上初の髪切りマッチを受け入れてくれたシュートボクシングの方が攻めてますよ。「ストロングスタイルは何でもアリじゃねーのかよ」って。プロレスは何でもアリなはずでしょ?「なんで?」の一言ですよ。

――かつての“攻め”の姿勢を失ってしまった新間会長に失望したということでしょうか

うーん……難しいな。残念だなって気持ちも強いけど、「だからこそ新間寿なんだな」って嬉しい気持ちもどこかにあって。普通だったらメディア戦略だったり、話題性を考えたら、どこの団体でもOKすると思うんですよ。だけど敢えて許可をしないところが新間寿であり、ストロングスタイルプロレスらしさなのかなと思いますね。いい意味でも、悪い意味でもなく、純粋に。俺からしても残念だし、ファンからしても残念だと思うし。だけど、100の団体があったら99の団体は喜んでOKするような話を、敢えてOKしない団体があるのも正解だと思う。話題になることも大事だけど、譲れないものを護ることも大事。今の「売れれば何でもいい」って風潮に敢えて倣わないところに新間寿らしさを感じて。……俺としては複雑だけどね(笑)。諦める気は無いんで、日が経って新間さんの気が変わるのと待とうかなって(笑)

――逆に、新間会長へのリスペクトの気持ちが強まった部分もあると

俺はさ、20年もプロレスラーになりたいって思い続けてたからこそ、人一倍誇りはあるんだよね。ずーーーっとプロレスラーに憧れて、悶々と過ごしてた。だからこそ、新間さんの言うことも分かるんだ。新間さんも力道山先生の道場に行って、プロレスラーになりたくて、必死に鍛えて。でも、力道山先生にはリングに上げてもらえず、「そこでウエイトやってろ」って言われて愚直にベンチプレスをやっていた。それでもプロレスへ捧げる気持ちは折れなかった。その思いがあるからこそ、新間さんほどの人がプロレス界から離れずにずーっといてくれるわけですよ。コンプレックスというより、愛……偏愛ですよね。

髪切りマッチの話だって、佐山先生は喜んでくれたけど、新間さんの一声で『ダメ』と言っても、俺は引き下がるんですよ。新間さんの思いを知ってるから。新間さんの彼の何十年にも及ぶプロレスに対する強い愛というか怨念を知っているから、新間さんの言葉だったら俺はしっかりと認める。

――そんな新間会長の言葉だからこそ重みがあったと

重みっていうか、思いですよ。何十年にも及ぶプロレスへの片思い。本当は恐らくプロレスラーになりたかったんだなっていう。だからこそ、誰よりも強いと思うんですよ。「俺のストロングスタイルはこうあってほしい」って思いが。だから、新間さんの言葉は尊重されるべきだと思うんです。何十年もプロレスを想い続けて来た人の言葉は尊重しないといけないですよ。

熱く語る関根“シュレック”秀樹

熱く語る関根“シュレック”秀樹

「プロレスのチャンピオンがベルト持って格闘技界に乗り込んで勝つのがカッコいいんじゃねえか!」――令和の世に“プロレス最強説”復活の野望を叫ぶ

――それでも、世間に響かせるチャンスを失ったという側面もあると思います。RIZINなど大きな舞台でも活躍するシュレック選手から見て、今のプロレス界は外への発信が足りないと感じますか?

今は格闘技系だとBreakingDownみたいな素人の喧嘩が流行ってるけど、あれも元々はプロレスの会見で起きる乱闘を模したもので、言ってしまえばそもそもがプロレスから派生したものじゃないですか。でも、今プロレスが同じことをやっても、「またやってるよ(笑)」になっちゃう。だから、プロレスプロレスで真似をされたら新しいものを発信していかなきゃいけないと思うんだよね。総合格闘技界、キックボクシング界、素人格闘技界に無いものを見せていかなきゃ、後追いに負けちゃう。だからこそ、今必要なのはアントニオ猪木が常にやってきた“新しい価値観の提案”なのかなと。今回の髪切りデスマッチみたいな元からあるクラシカルなものであっても、今だからこそ新しいものとして提案していくのもアリなのかなと思ってます。

――プロレス界は常に新しい魅力を発掘・発信していかないと、格闘技に負けてしまうと

アントニオ猪木は誰の真似をしたんだ?」って話だよ。誰の真似もしてないでしょ? 俺は前例の無いチャンピオンとして、ストロングスタイルのベルトを持ちながらMMA、キックボクシングにもガンガン出て、強さを証明していくチャンピオンになりますよ。ちっちゃいプロレス村でだけやってても、“村一番の力持ち”にしかなれない。今だからこそ……色んな格闘技が世に溢れてる今だからこそ、「プロレスこそが最強なんだ!」って世間に伝えていかなきゃいけないんじゃないか? 

だから俺は空手のチャンピオンボクシングチャンピオンとの異種格闘技戦王座戦をやっていって、プロレスの強さを示していくチャンピオンになりたい。ファンのみんなもさ、俺がストロングスタイルプロレスのベルトを持ってRIZINとかシュートボクシングとかの花道を歩く姿、見たくねえか? プロレスチャンピオンがベルト持って格闘技界に乗り込んで勝つ! それがカッコいいんじゃねえか。

――シュレック選手のプロレスに対する熱い想い、“プロレスラー”としての矜持を強く感じます

プロレスの世界で“RIZINファイター”とか、“格闘技の選手”って紹介されるのは全然いいんだけど、フラットなところで「格闘家がプロレスやってる」って言われるのはイヤなんだよ。こないだのシュートボクシングで「RIZINから来てくれた関根“シュレック”秀樹」って紹介されたときには、シーザー会長にも訂正してもらったし、試合でもボディスラムで投げたり、バックドロップで投げたりしてプロレスラーとして闘ったしね。

「お前ら本当に虎の子か?実は虎の威を借る狐なんじゃないか?」――初代タイガーマスクの愛弟子、“ストロングスタイルの直系”たる間下隼人、スーパー・タイガーへの提言

――“プロレス最強説”を体現していくためにも、今回の王座戦は絶対に負けられませんね

そういう意味じゃ、俺は間下くんに……いや、スーパー・タイガーにも言いたいことがあるんだよ。“ストロングスタイル”を標榜するからには、もっと上に、強いものに噛み付いていかなきゃいけないんじゃないか? 噛み付かないでブレイクしたプロレスラーなんて1人もいないと思うんですよ。間下くんも、一度は髪切りマッチに同意したのに、新間会長が一言言ったらすぐ引っ込んだでしょ? 下積みが長かったからなのかは知らないけど、噛み付いたことないんじゃない? リスペクトの無い噛み付きはダメだけど、佐山先生も新間会長も噛み付いてきた人じゃないですか。それにしちゃあ間下もスーパーも大人し過ぎだ。

お前らが噛み付かないから、この団体は他団体のタレントを連れてこなきゃやっていけない団体になっちゃってるんだ。お前らが噛み付かないから変わらないんだ。お前ら本当に虎の子か? 実は虎の威を借る狐なんじゃないか? 本当に虎の子だったら噛み付けよ! いつまでも親元で大人しくしてちゃダメだよ。だから親が引退出来ないんじゃないか?

――いつまでも“初代タイガーマスクの弟子”ではなく、“虎”になっていかなければならないと

スーパーも間下くんも、アントニオ猪木から佐山サトルっていうストロングスタイルの直系の系譜だったら、噛み付いて行って欲しい。親元でぬくぬくと守られてる虎なんて虎じゃねえよ。子猫みたいなもんだ。間下は強い。男だよ。でも、まだ虎じゃない。これまでも彼に発言権はあったはずだ。なのにしてこなかった。上に噛み付く勇気がなかった。そんなんじゃ俺には絶対勝てねえよ。本気でやりたきゃいつでも相手する。一人の虎としてかかってこい。間下、おまえも虎になれ!

インタビューを通じて、関根“シュレック”秀樹のプロレスラーとしての強いこだわりとプライド、初代タイガーマスク、ストロングスタイルプロレスへの熱き思いが強く伝わってきた。RIZIN、シュートボクシングでもプロレスラーとして活躍する“怪物”シュレックが認めたレジェンド王者・間下隼人との王座戦プロレスファンが熱狂する好勝負になると確信する。ぜひ会場で目撃したい!

関根“シュレック”秀樹(右)とレジェンド王者・間下隼人