ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、これまで様々な種類のヒアルロン酸について皮膚への機能性研究を推進してきました。その中でこの度、修飾型ヒアルロン酸の1つであるアルキル化ヒアルロン酸が皮膚のバリア機能を担う角層形成の正常化に関与していることを明らかにしました。本研究成果は、佐賀大学 リージョナル・イノベーションセンター・化粧品科学共同研究講座 徳留嘉寛特任教授との共同研究によるものです。
種々の修飾型ヒアルロン酸は皮膚の保湿にとどまらない新しい機能性を期待できることから、今後も様々な肌悩みを解決し、よりお客さまに満足いただける製品開発を目指していきます。

1.研究成果のポイント

◆ アルキル化ヒアルロン酸が、乾燥によりバリア機能が低下した表皮において角層の形成を正常化させることを発見

◆ アルキル化ヒアルロン酸の角層形成の正常化について、皮膚内挙動を可視化する評価方法により確認

2.研究の背景

ロート製薬は、皮膚にとって特に重要な機能性成分としてヒアルロン酸に着目し、表皮における保水機能や皮膚細胞内でのはたらきについて研究してきました。近年、ヒアルロン酸の分子量の違いや修飾化による皮膚への経皮吸収挙動について、三次元人工培養皮膚モデルを用いて検討し、それぞれ角層への吸着挙動が異なることを明らかにしてきました(図1)。  

今回、アルキル化ヒアルロン酸に着目し、経皮吸収後の働きについてさらに詳細に調べるため、三次元人工培養皮膚モデルを用いて皮膚内部を可視化することにより評価を行いました。

3.結果

アルキル化ヒアルロン酸が皮膚角層形成の正常化に関与することが示された

三次元人工培養皮膚モデルにおいて異なる湿度下で表皮形成を行った場合、形成される角層の状態は異なります。湿度が低い乾燥条件下では、通常よりも角層は厚く疎な状態となり、細胞1つ1つの大きさは不均一で大きくなっています。これは冬場など外部環境が乾燥した条件下で形成された角層は、容易に剝がれやすく皮膚バリア機能が不十分であることを表しています。この乾燥条件下でアルキル化ヒアルロン酸を添加して表皮形成を行うと、乾燥条件下よりも薄く密な角層が形成され、細胞の大きさは均一に整い、正常な表皮が形成されることが示されました。

3.今後の展望

本研究成果により、アルキル化ヒアルロン酸は角層の形成をコントロールする作用があり、乾燥条件下において角層形成を正常化するという新たな機能を見出しました。

角層は皮膚のバリア機能を担う組織であるため、アルキル化ヒアルロン酸は乾燥に伴う肌のバリア機能低下に対して有用な成分であると考えられます。当社は今後も、ヒアルロン酸の機能性研究を続け、そこで解明した新機能を効果的に発揮できる製剤技術を開発することで、肌悩みの根本から対処することが出来る、より満足度の高い製品開発を進めていきます。

4.特記事項

本研究内容は日本油化学会第61回年会(2023年9月7日~9日)で発表し、ポスター賞を受賞しました。

■用語説明

※1 アルキル化ヒアルロン酸

グリセリン骨格を介してアルキル基を修飾したヒアルロン酸誘導体を示します。ヒアルロン酸の分子量やアルキル基の長さなど修飾物によって得られる様々な機能に期待があります。

※2 角層細胞

角層細胞は、分化して表皮の角層を形成するとともに、皮膚の水分保持や、感染に対するバリア機能を維持するために重要な役割を果たします。

※3 三次元人工培養皮膚モデル

角層細胞を三次元培養し生体外で表皮を再構築した実験モデル。安全性評価の動物代替法として利用されます。

<参考資料:これまでのヒアルロン酸の経皮吸収に関する研究成果>

ロート製薬は、様々な分子量のヒアルロン酸やヒアルロン酸誘導体について、経皮吸収挙動を解析し、制御するための製剤技術開発を行ってきました。ヒアルロン酸および低分子ヒアルロン酸、アルキル化ヒアルロン酸を三次元人工培養皮膚モデルに適用し、蛍光顕微鏡で観察した実験では、ヒアルロン酸は角層細胞に、低分子ヒアルロン酸は角層細胞に存在、かつ低分子化により透過性向上が確認できました。アルキル化ヒアルロン酸は細胞間に存在し、それぞれ異なる部位に局在することが分かりました。(図4)。また、乳化処方にそれらヒアルロン酸を配合することにより低分子ヒアルロン酸の角層貯留性の向上傾向が認められました(図5)。

配信元企業:ロート製薬株式会社

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