2023年11月22日で60年を迎えたものの、いまだ謎多き事件として人々の心に刻まれている「ケネディ大統領暗殺事件」。この20世紀最大のミステリーは、ここ数年で未公開だった情報が続々と開示。米国立公文書館によると全体の99%が一般公開された状態になり、再び大きな注目を集めている。

【写真を見る】今年で60年、映画で知る「ケネディ大統領暗殺事件」(『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』)

アメリカ大統領がパレード中に射殺されるというあまりにショッキングな事件は、数々の映画で題材にされてきたので様々な角度から事件を扱った作品を紹介していく。

■事件の裏には政府絡みの陰謀が…?『JFK

ダラス市内をオープンカーでパレード中のケネディ大統領が頭部を銃弾で貫かれ帰らぬ人に。沿道のビルから狙撃したとして元海兵隊員のリー・ハーヴェイオズワルドが犯人として拘束されるが、逮捕からわずか2日後の移送中、ナイトクラブのオーナージャックルビーの凶弾に倒れることに。

「死人に口なし」として闇に葬り去られたこの事件から28年、綿密な調査に基づき独自の視点から事件を扱ったのが、社会派作品で知られるオリバー・ストーン監督の『JFK』(91)だ。

本作は、事件の捜査に人生を捧げる地方検事ジム・ギャリソンが独自の調査を行い、そのなかで浮上した疑惑の実業家に迫っていくという大統領暗殺をめぐる唯一の訴訟「クレイ・ショー裁判」を題材にした実話ベースのフィクション。事件の裏で、CIAや大物政治家、軍事産業、マフィア絡みの陰謀があったことを示唆する内容だ。

主演のケビン・コスナーほか、ゲイリー・オールドマントミー・リー・ジョーンズジョー・ペシ、シシー・スペイセクなど豪華な俳優陣が名を連ねた映画は大ヒットを記録。事件が再び脚光を浴びると、公開翌年の1992年には、アメリカ議会で「ジョン・F・ケネディ大統領暗殺記録収集法」が可決され、数百万ページにおよぶ文書が機密解除されるなど、大きな影響をもたらした。

■新たな情報から事件を再検証する『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』

そんなオリバー・ストーン監督が、このたび解禁となった新たな情報から事件の真実を暴きだそうとしたドキュメンタリーが、11月17日より公開されている『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』だ。

ケネディが平和を訴えるスピーチから幕を開ける本作。オリバー・ストーン監督がダラスを訪れ、銃弾の特徴、銃撃の方向、現場からの逃走経路、病院での検死やFBIの報告、事件を調査するための組織「ウォーレン委員会」の矛盾など、様々な要素を細かく再検証していく。

ケネディの検視写真や当時の映像、新たな証言などを交え、さらにオズワルドのソ連やキューバとの関係など歴史的事柄とリンクさせながら事件の闇に切り込んでいく本作。映画ではどのような結末が描かれるのか気になるところだ。

■タカ派による暗殺計画を描く『ダラスの熱い日』

1973年の『ダラスの熱い日』もまた、“タカ派の政財界の人間によって行われた暗殺事件が、オズワルド単独犯による犯行に仕立てられた”という陰謀論を題材としている。

元CIAの高官を主人公に、政財界の有力者たちがケネディ暗殺を企て、様々なカモフラージュを行う様など事件内部の人間の視点から語られる本作。当時のニュース映像などを用いながら、淡々と事件を描くドキュメンタリータッチな作風となっている。

脚本を手掛けているのは、赤狩りに反対したハリウッド・テンの一人としても有名なダルトン・トランボ。この作品には彼のタカ派への不信感が込められているのかもしれない。

■事件に狂わされた人々『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』

『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(13)は、ケネディ暗殺事件によって運命を動かされた人々の激動の4日間を描く実録ドラマ。ジャーナリスト出身のピーター・ランデズマンがメガホンを握っている。

大統領狙撃の決定的瞬間を8ミリフィルムに収めた“ザプルーダー・フィルム”で知られる一般市民エイブラハム・ザプルーダーや護衛を担当したシークレットサービス。別件でオズワルドをマークしていたFBI捜査官にケネディが担ぎ込まれた病院医師、そしてオズワルドの兄ロバートらに焦点が当てられていく。

弟が犯行を起こした挙句、撃たれて命を落としてしまい、さらに家庭も崩壊していくという苦しい時期を過ごすことになるロバートトラウマによってその後カメラを握れなくなったザプルーダーなど周囲の人々の混乱ぶりから、事件がいかに衝撃的だったかを浮き彫りにしていく。

オズワルド殺害犯の半生を扱う『ジャックルビー

ジャックルビー』(92)は、移送中のオズワルドを射殺したことで知られるジャックルビーに焦点を当て、彼の半生をひも解きながら事件の謎に迫っていくという内容だ。

かつて暗黒街で名を馳せていたものの落ちぶれ、いまはダラスでナイトクラブを営むルビーを主人公に、ルビーマフィアFBIケネディマフィアとのつながり、さらには事件後の脅迫といった裏側がスリリングに描かれていく。

逮捕後は不可解な言動が目立ち、「殺される」という言葉を残して死を遂げたことでも知られるルビー。彼の生涯を知れる見どころの多い1作だ。

■事件後のジャクリーンを題材とした『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

そして忘れてはいけないのが、24歳で結婚し、34歳で未亡人となったケネディの妻ジャクリーンの存在。“史上最も有名なファーストレディ”と呼ばれた彼女にスポットを当てた1作が『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(16)だ。

愛する夫が目の前で頭を撃ち抜かれるというショッキングな現場に遭遇してから3日。大統領の引き継ぎをし、夫が過去の人になっていくのを目の当たりにした彼女は、彼の功績を後世に残すため、国葬をたった一人で仕切っていく。

悲しみや怒りといった気持ちの整理もままならないなかで覚悟を決め、時には周囲の反対を押しきり、命の危険を顧みずに使命を全うしていくジャッキー。時に強く、時に弱い彼女の心の機微をナタリー・ポートマンが熱演で体現した。

このほかにも、ケネディの死によって副大統領から大統領になったリンドン・ジョンソンの苦悩をウディ・ハレルソン主演で描いた『LBJ ケネディの意志を継いだ男』(17)など数多くの作品があるので、その死から60年のタイミングを機にチェックしてみてはいかがだろうか?

文/サンクレイオ翼

「ケネディ大統領暗殺事件」を扱う映画を集めてみた!(『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』)/[c]2021 Camelot Productions, Inc. All rights reserved.Photo: John F. Kennedy Presidential Library, National Archives