推し芸人と『M-1』に出場したピンクおばさん
推し芸人と『M-1』に出場したピンクおばさん

M-1』好きなら知らない人はいない"名物お笑いファン"ピンクおばさんに直撃インタビュー! 15年以上にわたる追っかけ遍歴、推し芸人との秘話、ネットで話題になった「笑い声」問題など、"ピンおば節"全開でお届けします。

【写真】名物お笑いファンのピンクおばさん

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■『KOC』決勝よりもお笑いライブ

――お笑いライブに行くようになったきっかけは?

福田 2002年にテレビでタカアンドトシを見て、「すごく面白い人がいる!」と思ったんです。そこからですね。

――20年以上ですか!

福田 でも、頻繁に通うようになったのは、小島よしおが大ブレイクした2007年頃からです。子供たちが「見たい!」と言い出して、親子で行くようになりました。ライブに行くと、ほかの若手のコから「次、このライブに来てください」と誘われるようになって。

――年間何本ぐらい行くんですか?

福田 一番多かった年で800本近く行ってました。

――え! 毎日行っても1日2本以上のペースですよ?

福田 2020年1月に吉本興業がフリーパスチケットを売り出したんですけど、そのときは月に170本見ました。毎日通い詰めていたから、しんどかったです(笑)。

――そら、そうでしょ(笑)。1日5、6本ペースですから。

福田 フリーパスチケットは1万円でしたが、各ライブの正規料金を計算したら23万円分ぐらいでした(笑)。

――今までどれぐらいお笑いにお金を使っていますか?

福田 ちょっと言えない(笑)。

――言えない金額ですか!

福田 毎月チケット代だけで7万円ぐらいかな。

――ほかに地方遠征費、グッズ購入費もかかりますよね?

福田 年間100万円ってことはないな......。300万円ぐらいかも。バカみたいにライブに行き出してから15年以上なので、すべての賞レースの優勝賞金分ぐらいはお笑いにお金を使ってます(笑)。

――4000万~5000万円ですか(笑)。ちなみに、お笑い番組は見ますか?

福田 今は忙しくて見る時間がないんです。ライブを見て、家に一度帰って、またライブに行くような生活をしているので。テレビはここ10年ぐらい見てないから、売れてる芸人さんが誰かよくわからなくて......。『キングオブコント』の決勝も見てません。その時間はライブに行ってました。

■追っかける基準は「芸」か「人」か

――いつもピンクの服を着ているのはなぜですか?

福田 ずっと同じ格好をしていると芸人さんに覚えてもらえるかなと思って。もともと私は特撮ヒーローのピンクが好きなんですよ。本当はピンクになりたかったけど、なれなかったんで。

――現在は誰の追っかけをしていますか?

福田 ずっと追っかけているのはLLR、R藤本インポッシブルBKBバイク川崎バイク)です。

――好きな理由は?

福田 Rさんは芸人としてすごく尊敬していて、面白くて好きになった人。でも、BKBインポッシブルのひるちゃんは「その人が好き」みたいな......。別にネタは好きじゃないんですよ。

――「芸が好き」と「人が好き」の2パターンあると?

福田 はい。BKBとひるちゃんは「好き!!」ってなっちゃって(笑)。

――男性として見てますか?

福田 そうそう。私、面白いと思う人より好きな人のほうに行っちゃうんですよ。でも、BKBとひるちゃんは最初は気持ち悪くて、ネタもビジュアルも大嫌いでした。それなのに急に好きになっちゃった。

――なぜですか?

福田 わかんないんですよ。

――恋愛マンガみたい(笑)。何かきっかけはあるはずです。

福田 ひるちゃんが出てるお芝居を見に行ったことがあって、役者としてカッコよかったのがきっかけかも。

「今イチオシの芸人は生ファラオ。面白くて顔も好き。『ちょっと久しぶりに見つけちゃったな』という感じで。出ているライブは全部見たいけど、大阪吉本所属なので......。東京で行かなきゃいけないライブもあったから、大阪で行なわれた『M-1』の3回戦は我慢しました」
「今イチオシの芸人は生ファラオ。面白くて顔も好き。『ちょっと久しぶりに見つけちゃったな』という感じで。出ているライブは全部見たいけど、大阪吉本所属なので......。東京で行かなきゃいけないライブもあったから、大阪で行なわれた『M-1』の3回戦は我慢しました」

――それですよ。でもそういう理由だったら、お笑い芸人じゃなくてもいいのでは?

福田 芸人さんは一緒に写真を撮れるじゃないですか。ジャニーズはそうはいかないでしょうし。でも、お笑い自体も本当に好きですよ。賞レースは1回戦から決勝以外すべて見に行きますから。

――追っかけをする上で気をつけていることはあります?

福田 ファンと芸人という距離感を保たないとダメですね。距離をちゃんと取ってくれる芸人さんは長く応援できるんですけど、変に親しくなっちゃうとダメ......。それで何回か失敗してるんです。

――具体的に言うと?

福田 BKBが東京に来たばっかりの頃、当時3、4歳だった孫と一緒にハマって。BKBも孫をすごくかわいがってくれて、駅まで一緒に帰ったりして楽しかったんです。でも、そこからあんまりよくない関係になっちゃって。

――「よくない関係」って意味深ですね。

福田 BKBが避けてくるようになったんです。

――理由は聞きました?

福田 ライブ終わりに呼び出されて、「こういうのやめたい」って言われて。「でも私は好きだから」って。

――恋人の別れ話みたいになってるじゃないですか(笑)。

福田 そのときモグライダーの芝(大輔)君もいて、間に入って話を聞いてくれました。

■配信動画の「笑い声」問題

――スーパーマラドーナの武智(たけち)さん、ゆにばーすの川瀬名人が出演していたYouTubeチャンネルで「ピンクおばさんの笑い声が気になる」というファンの意見を取り上げていましたが、それに対してどう思っていますか?

福田 コロナ禍でお笑いライブをネットで配信したり、『M-1グランプリ』の公式YouTubeチャンネルで予選のネタ動画を公開したりするようになった頃から「笑い声がうるさい」と言われるようになりました。

だから、劇場に来てない人が言ってるんですよ。客席で一緒に笑っている人たちはそんなこと思わないんじゃないかな。芸人さんからは「もっと笑って」って言われるし。

――お客さんから直接うるさいと言われたことは?

福田 ないです。

――武智さんと川瀬さんも「直接劇場に足を運んでくれる人のほうを尊重したい」というような意見でしたね。

福田 でも、「直接文句を言いに行ってみようかな」ってコメントもありましたよ(笑)。

――もし言われたら?

福田 私に言えないと思う。だって、『M-1』の会場ではスタッフの人から挨拶されるし、審査員の先生も「今日もお疲れさま」みたいな感じで手を振ってくれるから(笑)。

――常連客ですね。確かにそれは言いづらいかも。

福田 最近はライブに来るお客さんがおとなしいんですよね。オードリーやハマカーンが出ていた2007年から2012年ぐらいは、どのライブもお客さんがパンパンに入っていて、笑い声で耳がおかしくなるぐらいでしたから。

――『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)などのネタ番組の影響で、お笑い熱が高かった時期ですね。

福田 その頃と比べたら、今のお客さんは全然笑わなくなったと思う。だから、私の笑い声が目立つんじゃないかな。

■推し芸人と『M-1』出場

――今年の『M-1』ではR藤本さんとコンビを組み、「ピンクベジータ」として出場し、2回戦進出。なぜ出ることになったんですか?

福田 SNSを通じて、「一緒に出ませんか?」ってRさんから言われて。「どういうことなんだろう?」と思って(笑)。

――それは驚きますよね。

福田 昨年まで3年連続で友達と『M-1』に出ていたんですけど、「今年はジャニーズの追っかけが忙しいから出られない」と言われてしまって。そんなタイミングでRさんから誘われました(笑)。

――R藤本さんはなぜ福田さんを誘ったと思いますか?

福田 Rさんがやっているニコニコ動画のネット番組に、これまで2回ほどゲストで呼ばれたこともあるんですけど、私のことを何かと面白がってくれるんですよ。

――追っかけている人に誘われて、いかがですか?

福田 うれしいというより申し訳ないです。Rさんは誰と組んでも3回戦ぐらいまでは絶対行く人なんで。

聞き手は元ジャリズム・元オモロー山下のインタビューマン山下
聞き手は元ジャリズム・元オモロー山下のインタビューマン山下

――「ピンクベジータ」は2回戦まで行きましたが、手応えはどうでしたか?

福田 1回戦でものすごくウケて、2回戦もウケたんです。だから、私もRさんも普通に合格だと思っていたら落ちて。ちょっと悔しいですね。

――今後やりたいことは?

福田 『R-1グランプリ』にも出たいです。でも、ネタを見たい芸人さんと出番が一緒になっちゃうと見られないんですよね......。

――確かにそうですね。

福田 今回、Rさんと『M-1』に出たときも、私が応援している芸人さんの出番がすぐ後で。だから、出番が終わったらRさんと何も話さず、すぐ客席に戻っちゃったんです。そしたら、RさんがXで「出番終了、あのババア、本当に急いで客席に戻りやがった」って書いてました(笑)。

――出るのと見るのとで大忙しですね(笑)。

福田 『R-1』も見たい芸人さんの出番順が私の前だったらと思うと......。それが悩みなんですよ。

●福田千浦(ふくだ・ちほ) 
1967年生まれ、東京都出身。4児の母、7児の祖母。

取材・文/インタビューマン山下 撮影/山上徳幸

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