国内屈指の名門企業として知られる東芝が11月22日に開いた臨時株主総会で、東芝株の上場廃止(東証1部)に向けた注目の議案が可決された。

 上場廃止は今年12月20日。今後は投資ファンドのJIP(日本産業パートナーズ)など国内連合のもと、経営の安定化と再建を目指すとしているが、上場廃止の背後には海外投資ファンド、いわゆる「ハゲタカファンド」を一掃する狙いがあったとされている。

 振り返れば、ケチの付き始めは2015年に発覚した不適切会計(損失の先送りなど)だった。その後、一連の騒動は歴代3社長の辞任劇へと発展するとともに、東芝の象徴と言われる白物家電事業の売却に追い込まれた。

 さらに2017年には、膨れ上がった債務超過を解消するため、ハゲタカファンドなどによる総額6000億円に上る増資の受け入れを決定。その結果、白物家電事業に続いて、半導体事業や医療機器事業の売却を余儀なくされ、2015年3月期に6兆6558億円あった売上高は、2023年3月期には3兆3616円にまで落ち込んでしまったのである。

 ハゲタカファンドの「生態」に詳しい経済アナリストが指摘する。

「海外の投資ファンドは『物言う株主』と称されますが、その実体は狙った企業を食い物にする『ハゲタカ』にほかなりません。ハゲタカは短期的な利益の追求を経営陣に迫り、将来性はあっても目の前の利益が見込めない事業については撤退や売却など、容赦のない強硬手段に打って出る。例に漏れず、東芝もその毒牙にかかってしまった。その意味では今回、東芝がハゲタカとの絶縁に乗り出したことは、英断に値する決断だったと言えるでしょう」

 ただ、東芝関係者からは「時すでに遅し」の嘆き節が聞こえてくるのも事実だ。東芝幹部OBがガックリと肩を落とす。

「東芝が断固としてハゲタカどもを締め出すというなら、なぜ2017年に6000億円もの増資を受け入れたのか。少なくともこの時点で上場廃止を決断していれば、将来性のある事業部門を闇雲に手放さずに済んだでしょう。逆に言えば、将来有望な事業部門を買収した日本企業や中国企業は、棚からボタ餅だったはず。俗に『お公家集団』と揶揄されてきた経営陣の、重大な判断ミスと言っていい」

 あと6年早ければ…。「覆水盆に返らず」とは、まさにこのことだ。

(石森巌)

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