阿部寛主演のドラマ25「すべて忘れてしまうから」(毎週金曜深夜0:52-1:23、テレ東系/ディズニープラスで配信中)の第7話「それで、貴女たちは今、幸せ?」が、11月24日に放送された。ハロウィーンの夜を最後に“M”(阿部)の前から姿を消した恋人“F”(尾野真千子)の物語がついに解き明かされる。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】「すべて忘れてしまうから」第7話のエンディング曲はROTH BART BARONの「糸の惑星」

■ミステリアスでビタースイートなラブストーリー

本作は、作家・燃え殻の同名エッセイを原作に、国内トップクリエイターの岨手由貴子、沖田修一、大江崇允が監督・脚本を手掛けた話題作。ハロウィーンの夜、5年間付き合ってきた恋人が失踪した。ミステリー作家“M”は、姿を消した恋人を探し始めるが、人々が語る恋人は“M”の知らない顔を持っており、やがて驚きの秘密が明らかになっていく…。

阿部寛尾野真千子Chara、渡辺大知、宮藤官九郎らが集結

流されるままに生きる、そこそこ売れっ子の主人公・ミステリー作家“M”を演じるのは阿部。物語の大きな鍵を握る“M”の恋人・“F”役を尾野、“M”の行きつけのBar「灯台」のオーナーカオル役をChara、“M”の担当編集者・澤田役を渡辺大知、Bar「灯台」で働く料理人・フクオ役を宮藤官九郎が演じる。

また、同じくバーで働くアルバイト・ミト役に鳴海唯、目的を抱えながらBar「灯台」に通う青年・泉役に青木柚、Bar「灯台」の常連客役に岩谷健司、嶺豪一、ぼくもとさきこ、ニクまろ、“M”の行きつけの喫茶「マーメイド」のオーナー・マンバ役に見栄晴、血眼で“F”を探す“F”の姉役に酒井美紀、“F”の失踪後“M”の前に現れる謎の美女役に大島優子、“F”の祖母役に草笛光子ら、個性に満ちた豪華キャストが集結。

■初めて会った母方の祖母との出会いが“F”を変えた

2年前、“F”は誰にも知られず人生の転機を迎えていた。それは、母方の祖母と会ったことだった。“F”は姉とアイスティーが1杯1,500円もする高級ホテルのラウンジで待っていると、「人違いだったらごめんなさい。私と待ち合わせをしている孫娘たちかしら?」と、祖母が現れた。

「一応持ってきたんだけどね。見たいかと思って」と、祖母は2人の母親の写真が入った分厚い封筒を渡した。「あの子が出て行く前の20歳までの写真」と、成人式の時に撮ったと思われる振袖姿の写真も混ざっていた。“F”たちの写真は他人に調べてもらった時に撮った1枚のみ。フォトフレームに収められている写真を見せてもらうと、そこには幼い頃、母親の自転車の前後に乗る母娘3人の姿が。

姉は「どうして今になって連絡してきたんですか? 両親が亡くなったのって25年前だし、名乗り出るなら一番大変だった時にしてくれたらよかったのに。進学のことか、新しい制服とか、助けてほしいことがいっぱいあったのに」と責めるような口調で祖母に問う。

それに対して祖母は「その時はそんな気持ちになれなかったの。私、今病気でね。来年の今頃はもういないわ。だから元気なうちに」と、余命一年となり、今のうちに会っておきたかったと答えた。

この祖母と会ったことが、この後、“F”に変化をもたらすこととなった。

■ 祖母に対する“F”と姉の感情に温度差

祖母から話を聞いても、姉は不信感が拭えず、好意的に迎えることはできなさそうに見える。

「それで、貴女たち今、幸せ?」と祖母に聞かれても、“F”は「幼稚園の先生をしていて、特に病気もしてないので幸せだと思います」と答えるが、姉は「息子の学費を払うのもやっとだし、ここ3年くらいは夫のボーナスも出てないから、私も派遣で働いてやっとやりくりしてるところです」と返す言葉にもトゲが感じられた。

祖母と別れた後も、“F”が「おばあちゃんがずっと近くに住んでいたのも驚いた」と言うと、姉は「ホント、いつから監視してたんだろ?」と、姉妹で温度差を感じるほど。

月一回の食事を誘われたことについても、姉は「死ぬまでのカウントダウンみたいで気が重い。行ってくれば? おいしいものを食べられるし」と消極的。

■祖母「欲しいならそう言いなさい。変わるつもりがあるなら」

その後、姉は祖母とは会わず疎遠となってしまうが、“F”は何度も会っていた。ある日、台風が直撃し、祖母は「タクシーで帰りなさい。お金は出してあげるから」と言うが、“F”は「私だって働いてるんだから」と答えると「あなたっていつもそう。遠慮するくせに『与えてもらえなかった』って顔するじゃない」と返されてしまう。

“F”の母親は”欲しいものは欲しい“とはっきり言うタイプだったと聞かされ、「私は欲しいものがないの。趣味もないしやりたいこともないし、つまらない人間だって言われてもそうなんだからしょうがないでしょう」と自己分析して回答。

「この先、毎日同じことの繰り返し時じゃない?」と言われても、「何かが変わって不安になるくらいなら今のままでいい」と、変化を望んでいないと伝えた。

欲のない“F”に向かって、祖母は「まとまった額の資産があるの。あなたが欲しければ全額あげる。このマンションも全部」と提案。“F”は「受け取れないよ」と遠慮するが、「この先、思い出したりしない? あの時、欲しいって言えばよかった、って。ただし、欲しいならそう言いなさい。変わるつもりがあるなら」と。

“F”は考えた末に「欲しい。全部欲しい。全額私にちょうだい」と返答した。それが祖母が望んでいた答えだったのだろう。その時、変化を望まなかった“F”が変わることを選んだ。これが大きな転機となった。

■ミト「私たち本当は何でもできるんですよ」

もう一つ、“F”が変わるきっかけとなったことがあった。それは、ミトと会ったこと。Bar「灯台」で働くミトは、“M”に頼まれてコンビニでタバコを買いに出掛けた。“F”もBar「灯台」に来ていたが、“M”は他の常連と話し込んでいて、所在なげにカウンターに一人。お手洗いを使いたいが、混んでいたので店を出て、コンビニに行くと、そこでミトに声を掛けられた。

ミトが「先生(“M“)の彼女はあんまり灯台に来たがらないって聞いてたので、お会いできてよかったです」と話すと、「ああいうお店でどう振る舞っていいのか分からないから行きづらくて。頻繁に通うお金もないし」と返す”F“。

ミトも「私も客だったら通えないですよ」と“F”に同調。「仲よくしてくれるけど、本当だったら接点がない人たちなんだろうな」というミトに、“F”も同調したのか、タバコを買うために預かった1万円のお釣りを“F”に渡そうとするミトを、「ねえ、あれ乗らない? これ(お釣り)使っちゃおうよ」と、目の前に停まっていた船に乗ろうと誘った。

交渉して9千円で乗せてもらった2人は東京の夜景を見ながらクルージング。ちょっとした冒険を楽しみながら「今日、こんなところに来れるなんて思ってなかった」という“F”に、ミトは「私たち本当は何でもできるんですよ」と。この言葉も少なからず“F”に影響を与えていたはず。

これまであまり語られてこなかった“F”についての物語。今回、いろいろなことが明らかになり、この物語自体も大きく動くこととなった。姉との関係、そして失踪することになった直接の原因が明かされる時も近いような気がする。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

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