子育て本著者・講演家である私は以前、次のような相談を受けたことがあります。

自閉症のわが子を、正直『かわいい』とは思えません。愛情が湧きません。毎日、疲れ切っています。前向きになれません。解放されたいです。わが子を愛することができる方法はありますか? そして、私は母親失格なのでしょうか?」

「愛情は結果」である

 私は、次のように答えました。

「母親たるものはこうあるべきという“べき思考”を、まずなくすことではないでしょうか。『手のかかり過ぎる発達障害のわが子を、かわいいと思えない』という感情は、人として自然なことです。疲労のもとになるわが子をかわいいと思えないという感情にふたをしたり、責めたりしてはなりません。

わが子を愛するようになれる方法、前向きになる方法なんてないと思います。目の前にある子育てをこなすことで、愛情が生まれることもあれば、生まれないこともある。でも、毎日ご飯を食べさせたり、風呂に入れたりと、世話をしている事実があるだけで十分なのです。愛情は結果です。

発達障害の子を育てる生活は、現実問題、毎日繰り返されます。決まったルーティンに親は振り回されますし、こだわりにも付き合わなくてはパニックを起こされる。それに耐えているだけで十分なのです」

自分の本当の感情を責めないで

 私の友人に、定型発達の2歳児と、自閉症の5歳児を育てている人がいます。定型発達の子は、言葉は多くなくても、2歳にして親とコミュニケーションが取れます。一方、自閉症の子はそれができません。親との関わりはなく、数字や換気扇ばかりに興味を持って、「人よりも物に関わろうとする」そうです。だから「子育ての甲斐もなく、愛情が湧かない」というのです。親子の間に愛着形成がされにくいわけです。それも当然だと思います。

 私は「『きょうだいに分け隔てなく愛情をかけられない』と、自分を責めてはいけないよ」と伝えました。どうしてかというと、自分を責めることは自分の感情を押さえつける行為であり、心の病に発展してしまうことにもつながるからです。

 別の例でお話ししましょう。例えば、友達の結婚式に招かれたとき、「自分には恋人もおらず、結婚なんかずっとできそうもない。だから、心から祝福することができない」、挙げ句には「離婚すればいいのに」くらいの感情が湧き起こってきたとします。

 この感情は自然に起こるものだから、仕方がないのです。自分の心臓の動きを、手足を動かすようにコントロールできないのと同じで、湧き起こる感情は、自分の力ではどうにもコントロールできないものです。「こんなふうに思ってしまう私は、何とひどい性格だ」という気持ちにまで発展させてはいけないのです。

「わが子を『かわいい』と思えない」という自分の本当の感情を責めず、素直な心に耳を傾けてください。自分をこれ以上いじめる必要はありません。

 皆さんも、よかったら参考にしてくださいね。

子育て本著者・講演家 立石美津子

「私は母親失格?」と悩む親も…