買ってから予想通りに上がった株、あらかじめ「売却する」と決めていた株価まで上昇した株は、利益確定のため売る投資家が多いでしょう。しかし、その「売り」を先延ばしにすれば、より多くの収益をねらうことも可能になるかもしれません。本記事では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、機械的に売り注文を出す前に考えるべきことについて解説します。

現金が多くなりすぎないように配慮すべき

株を売れば当然、投資家は現金を手にすることになります。しかし、現金は放っておいてもその価値が増えることもありませんから、株を売る前に手元に十分な現金がある場合は、その株を売るのを少し先延ばししてもよいかもしれません。

現金を持っているということは、株を持っていれば得られたかもしれない、投資による利益を生む機会を逸しているということでもあるためです。もちろん、株式市場全体が暴落したり、保有銘柄にトラブルが起きて特定の銘柄の株価が暴落することもありますから、すべての資産を株にしておくのはあまりにもリスキーです。

ただ、過度なインフレなどの特殊な状況を除けば、現金の価値が減ることがないのは事実。資産ポートフォリオのなかに、一定の割合の現金を残しておくことはとてもリスクヘッジのためにもとても重要です。それに、現金を持っていれば、株価が暴落したときに安い価格ですばやく買うこともできるなど、投資機会を逃さずに済むという点も見逃せないメリットです。

ですから利益確定の売りを検討する際は、ポートフォリオにおける株と現金の比率が、どちらかに偏り過ぎないかを考えたほうがよいでしょう。売った後に現金が多くなり過ぎるならば、株のままで持っていたほうが最終的に儲かる可能性もあるからです。

なお、新たに買う株が決まっている場合は、利益確定売りをしても現金の割合が増え過ぎることはありませんから、とくに問題ないでしょう。

その時点でも配当利回りが高い・増配の可能性が高い株も持っていた方がよいかも

買った株が値上がりすれば当然、配当利回りは下がっていきます。しかし、株価が上昇しても、まだまだ配当利回りが高いと思える株の場合、その後も配当を目当てにした買いが続き、さらに値上がりする可能性もあります。

また、経営が安定していて過去に増配が多い会社など、これからまた増配する可能性が高いと思える会社の株も、さらなる値上がりの可能性を秘めています。増配すればまた配当利回りが上昇し、買いが入るためです。長期にわたって配当額をキープしていたり、増配を続けていたりする会社もあります。そういう会社は、株を持ち続けているだけで配当の額も増えていく訳ですから、長期間保有していた方が結果的に大きな利益となる場合もあります。

以上のようなケースを考えると、売ろうと考えた時点でまだまだ配当利回りが高い銘柄や、今後の増配の可能性が高い銘柄もまた、売るのを先延ばしにしたほうが最終的には儲かるかもしれません。

ポートフォリオ内の業種別バランスにも配慮を

加えて、ある銘柄を売却した後のポートフォリオ内の業種別割合にも配慮が求められます。

「分散」は投資の鉄則の1つですが、ポートフォリオ内の銘柄のうち、特定の業種に属する株の割合が高くなり過ぎると、その業種がまとめて下がったときに、大きな損失を被ることになります。業界そのものの前途が怪しくなってきて株価が下がることもありますし、ある銘柄が下げたときにそれに関連する銘柄が一緒になって下げる「連れ安」が起こるケースも想定されます。

一方、ポートフォリオ内の銘柄がさまざまな業種の銘柄にバランス良く分散されていれば、特定の業種が下げに見舞われる局面でも、それによるダメージを抑制できます。ある業種が下がったとしても、ほかの業種が上がれば損失を補えるためです。

ですから、ある銘柄が含み益となり、利益確定の売り注文を入れようと思ったとき、売った後のポートフォリオにおいて特定の業種の株が占める割合が高くなり過ぎるのであれば、売るのを先延ばしにした方が良い結果を生む場合もあるのです。

なお、どうしても売りたい場合には、売却後にポートフォリオの業種別バランスを改善できるほかの銘柄を買うつもりで売るのがよいでしょう。

購入時にあらかじめ売値を決め、そこに到達したら機械的に売るという投資行動もたしかに大切です。しかし、上にみてきたように、「現金と株式の比率」「配当の見通し」「ポートフォリオ内の業種別の割合」など、条件次第では利益確定の売りを先延ばしにしたほうが、結果的に大きな利益を生むこともを覚えておくといいでしょう。

(※写真はイメージです/PIXTA)