子供の早期教育のなかでも、特に関心が高まっているのが「英語教育」です。教材や塾、幼稚園などさまざまな選択肢があり、悩む親も多いでしょう。しかし、お金をかければかけるほど英語力が伸びるわけではないと、お金と暮らしのコンサルタントであるいとうあこ氏はいいます。本記事では、同氏の著書『今あるお金で幸せに暮らすお金の回し方』(ごきげんビジネス出版)より、子どもの早期英語教育について解説します。

子どもの英語教育は戦略的に

子どもの早期教育の中で、とくに関心が高いのが英語です。小学校で必須科目となり、また、大学入試で高いレベルの4技能が求められるようになったため、早期英語教育熱はますますヒートアップの傾向です。

お金をかければ子どもの英語力は進化し続けるのか? お金をかけなくても英語力を強化できる方法はないのか? 親としては子どもの成長と共に知りたいことがたくさん出てきます。しかし、子どもの年齢は止まることなく進み、後戻りしてやり直すこともできません。できるだけ早めに、やれるだけのことをやっておこう!と早期教育に熱が入るのも納得できます。

子どもの英語教育は戦略的に! かけたお金をムダにすることがないよう、綿密にプランを練りましょう。

0歳からの早期英語教育の種類と金額の目安

早期英語教育には、たくさんの教室や教材があります。メジャーな早期教育は次の4パターンです。

子どもが生まれる前から検討をはじめるケースもあるでしょう。どの教材や教室も完璧!ということはありません。生身の子どもが相手ですから、向き不向きもあります。両親がどれだけ時間を割けるのか? 教育費の中でどれだけの金額を充当することができるのか? スタートする前に冷静な判断が必要です。

また、英語教育は機会を与えたら終わり、ではありません。本格的な英語がスタートする中学校入学までの目標を定め、ムダになることがないよう、継続する覚悟が必要です。

SNSでは早期英語教育に関する、いろいろな記事を読むことができます。もちろん、参考になるのですが、発信者と自分の家庭では年収や家族構成など環境が異なります。また、子どもの個性もバラバラなため、よいといわれることがそのまま当てはまるとは限りません。他にも、広告収入を目的としたブログ記事などは、ネガティブな表現(ここがよくなかった!など否定的な内容)は控える傾向にあります。

そこで私は、実際に早期英語教育を体験したうえでの経験談をお伝えします。これから早期英語教育をはじめられる際に参考にしていただけると幸いです。

経験談1:50年前から存在していた早期英語教育

私自身が50年前に経験した早期英語教育は、幼稚園時代に姉と通った英語劇の教室と、小学生時代の外国人講師と2対1の英会話レッスンでした。帰国子女以外で、中学校未満で英語を学ぶ機会はあまりなかった時代でしたから、当時としては、かなり教育熱心な家庭でした。そして、結果はいかに?

私に関していえば、英語の学力は平均以下。同じ教育を受けた姉も英語が得意科目になることはなく、理系の道に進みました。

早期教育はムダだったのか? 私の場合、中高時代に英語に興味がもてなかったことが、英語の成績が伸びなかった原因だと感じています。いくら早期教育で英語を暗記し劇で演じたとしても、単語や文法をきっちり暗記しなければ、試験では点数が取れません。1週間で1時間程度、英語に触れたところで、基礎力が上がるはずがありません。親には申し訳ないですが、かけてもらったお金はムダだった、というのが私の結論です。

ただし、外国アレルギーや英語アレルギーはまったくなし。何とかしてコミュニケーションを取ろうとする力は、早期英語で培ったものかもしれません。少しはメリットがあったのかもしれませんね!

経験談2:CDかけっぱなしで英語力の底上げにチャレンジ

結婚し、24歳で長女が生まれました。英語で苦労はさせたくない!と、いろいろな情報収集をスタートしました。当時は地方暮らしだったこともあり、0歳からはじめられることといえば、ディズニーの英語システムくらいでしたが、フルセットは高価すぎたため、オークションサイトで欲しかったCDと絵本を入手して、繰り返しかけ流しで聞かせることにしました。

年子で弟が生まれたため、かけっぱなしはとても楽。家でも車でも「Hot dogs are good. Hot dogs are yummy into the mouth down to the tummy……」と、Sing-alongの教材を流していました。おそらく長女や長男は今でも歌えると思います!

それ以外はとくに何もすることなく中学生となりましたが、ふたりとも英語が得意科目になることはありませんでした。興味がない時期にいくらテープをかけたとしても、それはただのBGMでしかなく、外国人と会話する機会もないため、耳で覚えた英語を活用できる場面がありません。

教材とセットで絵本が5冊ついており、一緒に歌いながら絵本を見ることもありましたが、それが中学生になってから効果を発揮することはありませんでした。フルセットであれば、また別の効果があったのかもしれませんが、たった5枚のCDでなんとかしたい、というのは虫がよすぎました。童謡と同じレベルで耳に心地よい音楽として流れていただけです。

語学はキャッチボールしてこそ初めて成果を出すことができます。何に役立つのかわからないまま聞かせたところで、アウトプットできるわけもなく、期待は見事に空振りで終わりました。

経験談3:小学6年生の冬から慌てて公文の英語をはじめる

続いて生まれた3番目も、とくに早期英語をすることなく、相変わらずCDのかけ流しと絵本を読み聞かせて幼少時代を過ごしました。何せ上の子たちと歳が近いため、ディズニーのCDで中学校を英語がどうなるか? 結果が出ていません。

淡い期待を寄せつつ、小学校高学年時代は中学受験塾一色となり、英語に関しては親も子もすっかり忘れている状態でした。そんなこんなで中学入試が終わった冬、英語だけは先取りしておかなくては!と、合格発表の前に公文の英語をスタートしました。

結果的にどうだったかというと、中学英語の進度があまりにも早く、6か月程度の貯金も夏ごろに追いつかれて終了。たった半年の経験ですから、語れるほどの成果は得られませんでした。

結局、次女も英語が得意科目になることはなく、理系を選択。大学に入ってからの猛勉で、就職先で必要なTOEICのスコアが何とかクリアした状況です。

公文の英語は音声教材がセットされており、かつレベルに応じた長文読解もセットされていて、とてもよいと感じました。が、中学校に通いながら継続できるかというと、宿題や他の教科との兼ね合いから、なかなかそれも難しく、中学受験と早期英語の同時進行の難しさにあらためて気づかされた3番目の経験でした。

経験談4:インター幼稚園に入れてみた!

早期英語教育に情熱を注いできたはずなのに、結局中途半端でまったく結果が出せずにきました。この経験をもとに、4番目の子どもからは出せる範囲でお金を払い、中学校英語で上位を狙うことを目標に、当時できたばかりのインター幼稚園に入園を決めました。

20人程度の園児に対し、外国人講師1人、英語の上手な日本人教師1人のサポート体制で、降園までオールイングリッシュで過ごすカリキュラムです。1歳半から通いはじめたので、卒園までの約5年間を英語漬けの日々です。期待は高まります! 

卒園後も4年生ごろまで週2回程度アフタースクールに通い、できるだけ英語を忘れないようにお金も情熱も注ぎ、中学ではまずまずの滑り出しだったのが、卒業するころには英語が得意科目とはならない結果となりました。嘘でしょ? 幼稚園時代の早期英語は何だったのか? 

もちろん、同じスクールの卒園生は、その後もぐんぐんと成績を伸ばされ、英語が得意科目になる方もたくさんいらっしゃいます。しかしインター幼稚園に入れたからといって、100%英語が得意科目になるわけではない、ということです。4番目の早期英語の体験から学力はお金で買えないことを学びました。

インター幼稚園とはいえ、20人程度の園児がいれば、アウトプットする機会は減ります。まして、おとなしい性格の子どもは発言の機会が減ります。活発なお子さんなら、積極的に先生とコミュニケーションをとり、英語力もぐんぐん伸びるでしょうが、それがわかるのは卒園のころです。何がベストかは終わってみないとわからないのが早期英語の辛いところです。

経験談5:今度は小規模英語保育園へ

4番目の失敗から4年後、5番目の子どもが生まれました。5番目の幼稚園を選ぶにあたり、4番目の子どもの英語を検証してみました。

リスニングは得意

・英語に抵抗感がない(これから伸びそう)

よくなかった点として、

・フォニックスが身に付いていない

・ライティングができない

・ひとりで英語の本が読めない

この3点を克服できるインター幼稚園がないか、通える範囲すべての幼稚園を見学し、教材を確認して検討した結果、

・できるだけ小規模

・フォニックスを完璧に習得する

・たくさんアウトプットできる時間がある

・小学校でハリーポッター英語版が読めるようになる

これらを実現できそうな英語保育園に入園を決めました。この時点で、日本語の幼稚園はまったく考えませんでした。幼稚園時代は語学力の底上げができるチャンスです。集団での遊びや日本語、しつけや運動などは親がいくらでも関わることができますが、英語は誰かに頼まなければ力をつけてもらうことができません。

すべてを幼稚園に任せるのではなく、できることできないことを、やらせたいことを自分でやれることをしっかり仕分けして、お任せしたい部分に100%の時間とお金を使う。そう割り切ることにしました。

そして現在5番目は、小学校を卒業し中学生活がはじまっています。社会人となった上の子どもたちのように結果はまだ出ていませんが、後悔しない選択ができたと感じています。

世帯年収別:英語教育にかける金額の目安

お金をかけて英語力をつける方法はいくらでもあります。しかし、できるだけコストを抑えながら力をつける方法もないわけではありません。これまで家計アドバイスをしてきた経験から、年収別でできることをお伝えします。ぜひ参考にしてください。

世帯年収600万円まで

幼稚園時代限定なら、助成制度を利用したインター幼稚園への入園も可能です。が、小学校入学後もアフタースクールも継続して通わせたいとなると、出費がかさみ家計を圧迫します。

小学校6年間を自宅学習で英語をつなぐのは、とても労力が必要です。最初にすることは、フォニックスをマスターし、年中年長時代から英語の本を読ませる(親と一緒に読み聞かせする)。そして自分で拾い読みをできるようにすることです。

親としては少し難しめな本を与えがちですが、レベルが合わない本はなかなか読み進めることができません。現状のレベルから少し簡単な本を与え、様子を見ながら少しずつレベルアップしてください。

Kindleからダウンロードすれば、サジェスト機能で子どもの好みに合った本を紹介してくれます。また、試し読みで確認できるので、ぜひ利用してみてください。その他、子ども向けの英語の本のアプリ「epic!」、「TED」などを継続して視聴することでコストを抑え、語学力をキープできます。

世帯年収1,200万円まで

インターナショナル幼稚園に加え、アフタースクールで小学校高学年まで英語のブラッシュアップが可能です。小学校時代に英検上位資格の取得も視野に入れ、無理強いすることなく上位資格を取得できるアフタースクールを探しましょう。

世帯年収1,200万円以上

アフタースクールにプラスして、海外短期留学も可能です。家族で旅行するチャンスに現地校で短期留学のプログラムがないか、リサーチしてください。たとえ10日程度でも、海外での体験は何よりのアウトプットのチャンスとなります。子どもが体験を通して自信をつけることで、より前向きに日常での英語の取り組みが可能となります。

世帯年収2,000万円以上

小学校からの親子移住や、中高生からの留学スタートが実現できるかもしれません。中高生時代から留学をスタートすることのメリットは、何よりも人脈が広がること。人脈はお金では買えません。世界を視野に入れた人生設計の基礎をつくることができるチャンスです。中高生時代からの留学は最大のターニングポイントです。

教育メンター

目まぐるしく変わる英語教育において、世界標準のアドバイスが得られる教育メンターの存在はとても重要です。ハワイ在住TLC for kidsの船津徹先生から受けたアドバイスは今でも我が家の目標であり、モチベーションを保つうえでも大切な存在となっています。

我が子を世界で活躍できる人材に育てるために

子どもが産まれ、無事に大きく育つ。それだけでも、このうえない喜びです。欲をいえば、日本だけでなく世界で活躍できる人材に育ってほしい、そう願わない親はいないでしょう。

これからの時代の大切なコミュニケーションとして、「英語」を外して考えることはできません。今あるお金で何ができるのか? 冷静に判断しながら、早期英語教育に取り組みましょう。

ポイント

早期英語がすべてではないですが、幼稚園時代はチャンスタイム。後悔しない選択をしよう!

いとう あこ

お金と暮らしのコンサルタント

ママのための金融リテラシー講座主催

※本記事は『今あるお金で幸せに暮らすお金の回し方』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

(※画像はイメージです/PIXTA)