人間の負の感情から生まれる呪いと、それを呪術で祓う呪術師との闘いを描くという斬新な内容が話題を呼び、シリーズ累計発行部数8,000万部を突破している大人気漫画『呪術廻戦』。TVアニメ、映画に続き昨年上演された舞台の第2弾、舞台「呪術廻戦」-京都姉妹校交流会・起首雷同-が12月15日(金)より上演される。各キャラクターの再現率の高さも話題となった第1弾に続き、主人公・虎杖悠仁役を続投する佐藤流司に話を聞いた。

虎杖の魅力、そして演じることの難しさ

取材を行ったのは、11月中旬のこと。2023年の年末も少しずつ近づいてきたこの時期に、この1年はどうだったのか聞いてみた。すると佐藤流司にとっては、「いろいろなことに挑戦させてもらって、めちゃくちゃ楽しかったし、めちゃくちゃ苦しかったし、振り幅が大きかった。でも、『俺はこうしていきたい』という指標も少し見え始めたんですよ。そのためにも来年は初心に帰って、応援してくださる方たちのためにこれまで以上に何かができれば」と感じた年だったという。

そう感じたのは、たとえば8年の歳月を経てライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」が完結を果たしたことへの感慨もあるだろう。また、音楽劇『逃げろ!』やテレビ朝日系特撮ドラマ『仮面ライダーギーツ』など、舞台・映像共に意欲的な活躍を見せたこともあるだろう。そして、自身が初めて原案・脚本・演出、出演も果たした舞台『カストルとポルックス』の経験も非常に大きいだろう。

そうしたなかで、この舞台「呪術廻戦」-京都姉妹校交流会・起首雷同-で二度目の虎杖悠仁役に挑むこともまた、大きな挑戦に違いない。何故なら、虎杖悠仁という役どころは、これまで佐藤が演じてきた数々の役とは明らかにカラーが違うのだ。それは、2022年の前作を振り返って、佐藤自身も口にしている。

「自分の引き出し、人間性の中には、虎杖のような明るくてまっすぐな役はなかった。だから、なんでここでこういう動きをするんだろう、なんでこういうセリフになるんだろう、なんでこういう感情でしゃべってるんだろう……感情の線が非常につながりづらくて、どういう感情なのかを理解するのに時間がかかって大変だったし、悩むことが多かったです」

それをクリアできたのは、ひたすら虎杖に、『呪術廻戦』に向き合ったから。「『虎杖はそういうもの』としてそのまま受けとめて、アニメや原作マンガを見てコマとコマの間を自分なりに埋めていくしかなかった。ある意味、お芝居の根本的な創り方を地道にやっていったんですよね。それに、一緒にお芝居する場面の多かった(五条 悟役・三浦)涼介くんのお芝居の力に引っ張り上げてもらいました。結果、のびのびお芝居させてもらったので本当に助けられましたね」

それほどに佐藤を悩ませた、虎杖悠仁というキャラクター。主人公としての彼の魅力を、あらためて佐藤の言葉で語ってもらうと「人間離れした身体能力と、ギャグパートの面白さ。それでいて人間としての真っ直ぐさもあるし、悩むこともあるし、人を慰めることもある。身体能力と人間くさい中身のギャップ、そして設定でも『根アカ』とされているんですけど、本当に明るくて主人公らしいキャラクター。見ていると、元気や勇気をもらえますね」という。確かに、正統派の主人公といえる人物だ。

そんな虎杖を演じたことで、佐藤としては「俳優として、虎杖っぽい役の引き出しが増えたことは素直に良かったと思います。役者として壁は厚いほうが良いというか、苦手分野に挑戦する方がより成長できる。『良薬口に苦し』ということで、ありがたいですね。あと前回は大阪公演で怪我をして多大なご迷惑をおかけしてしまったんですが、そこで折れない心・精神が培われたのではないかと」という。

前回の舞台では、虎杖が呪術師となって東京都立呪術高等専門学校に通い、呪術高専の仲間たちと共に特級呪霊・真人や特級呪術師・夏油 傑といった因縁の敵と戦う姿が描かれた。そして今回の舞台第2弾では、呪術高専京都校との穏やかならざる交流会、そして起首雷同では伏黒 恵の姉にまつわる事件に挑むことになる。いわば2本立てともいえる内容になっており、佐藤自身も「起承転結がわかりやすくて、見やすいと思う」と語る。そこで描かれているのは、虎杖の成長。佐藤はそれを、交流会ではフィジカル、起首雷同ではメンタルの成長をとげる、とする。そこは、今回の大きな見どころだろう。

心強い共演者たちと共に生きている舞台を

今回は、京都校メンバーなど強烈な個性をもったキャラクターが多数登場することも注目のポイント。特に圧倒的な強さと奇天烈な言動でインパクト十分、さらには虎杖を「親友」と呼んで彼の成長にも大きな役割を果たすのが東堂 葵。その東堂を演じる小柳 心とはライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」などの作品で連続して共演、気心も知れているだけにとても心強いようだ。
「心くんとは本当に楽しくやらせてもらっています。何の心配もなく、背中を預けられる。 彼は普段から元気で、既に東堂が出来上がっている感じ。実はスタッフさんが、心くんがあまりにも“東堂そのもの”過ぎて『悔しい』って言っていたんですよ。普通だったら、この役者がこのキャラクターの衣裳を着て、このメイクをしたらどうなるか、と考えるけど、心くんはそのままで東堂だから」と、笑みを浮かべながら語る佐藤。彼自身も「本当にそっくり」と太鼓判を押す、小柳 心の東堂には期待しかない。

個性豊かな大勢の出演者が集い、創り上げていく舞台。つい皆で足並みをそろえてチームワークを高め取り組んでいる姿を想像してしまいがちだが、佐藤はそこにはこだわらないという。

「プロとして、各々がちゃんと仕事をしてくれればそれでいい。自分がその時出せる最大限を披露すれば必ず良くなるし、誰かひとりの気持ちが乗っていくとそれに引っ張られてみんなのテンションがどんどん上がって、より良いものになっていく。『この人、今日はこういう芝居で来たんだ。じゃあ俺はこうしよう!』って上がっていく瞬間が、すごく好きなんですよ。それでこそ、舞台として、人として生きているっていうことじゃないですか。今回初めましての方はまだわからないけど、前回からのメンバーや知っている人に関しては、そこは安心して任せられる人たちだと思います」

カンパニーへの信頼のもと、虎杖に再度向き合っているなかで感じていることは何だろう。
「自分自身がのびのびと、楽しくやらないと虎杖を演じるのは無理。例えばクールだったり影があったりする役は、内で燃やす感情がとんでもなく熱かったとしても表に出る感情が少ないから、アウトプットはあまり多くない。でも虎杖のような役の場合は、アウトプットがとても多いので精神的・感情的にどうしても疲弊してしまう。そこを乗り越えて演じきれるかが鍵になってくると思うし、自分自身にとっては楽しみな部分でもあります」

さまざまな課題をクリアしつつ、より良い舞台を創りあげるためのエネルギー、あるいはモチベーションを上げるために必要なものとして、佐藤は「食事」を挙げる。
「キャストとか、仲の良い人と食べる食事が何より大事。これは何かで見たことなんですが、肉体の疲れは寝れば治るけど、精神の疲れは食事をとったり人としゃべったりないと治らないそうなんですよ。本当にその通りだなと思って。虎杖に関してはみんなと仲良くしないとどうにもしようがないキャラクターなので、みんなで食事して良い交友関係を築いた状態でお芝居をしたいですね」

また当然のことではあるが、演出の小林顕作から学ぶものも大きい。
「顕作さんは場を盛り上げて人を引っ張りあげてくれるのがすごく上手。笑わせてくれるし、やる気にもさせてくれるし、顕作さんのおかげでカンパニーが一丸となってやっていける。それは舞台を見ていても伝わると思うし、だからこそ演出家として大尊敬しています」

自身も『カストルとポルックス』で演出を経験しただけに、その思いはさらに強くなったようだ。演技の面でも、演出経験からフィードバックされたものがあるという。

「より俯瞰で、自分を見られるようになりました。客席から見た時にこの位置にいたほうが綺麗だなとか、もう少しテンションを上げる、あるいは下げるほうがセリフの流れが伝わりやすいとか。視野がより広まったというか深まったので、本当に演出をやってみて良かった。今後もまた脚本・演出には挑戦したいので、次は何をやるか考えているところです」

俳優に加え、アーティストとして、クリエイティブスタッフとして、意欲的な活動を続ける佐藤流司。今後も彼の挑戦は続く。もう間もなく、その中でも特に大きな挑戦のひとつである舞台「呪術廻戦」の幕が上がる。果たして、佐藤はどのような表情を見せてくれるのだろうか。

公演は12月15日(金)~31日(日)、東京・天王洲 銀河劇場にて。その後、2024年1月に兵庫公演あり。

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取材・文:金井まゆみ  撮影:興梠真帆

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<公演情報>
舞台呪術廻戦」-京都姉妹校交流会・起首雷同-

原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社週刊少年ジャンプ」連載)
脚本:喜安浩平
演出:小林顕作
構成補佐:伊藤マサミ(進戯団 夢命クラシックス)

出演:
虎杖悠仁佐藤流司

黒 恵:泰江和明
釘崎野薔薇 山口乃々華

禪院真希:高月彩良
狗巻 棘:定本楓馬
パンダ:寺山武志

蛾正道:南 誉士広
冥冥:立道梨緒奈

東堂 葵:小柳 心
加茂憲紀:梅津瑞樹
西宮 桃:久家 心
禪院真依長谷川
三輪 霞:竹内 夢
究極メカ丸:塩田康平

歌姫:平湯樹里
楽巌寺嘉伸:陰山 泰

組屋鞣造:北村 海
重面春太:益川和久
高田ちゃん:小貫莉奈

壊相:青柳塁斗

五条 悟:三浦涼介

※伏黒 恵役は泰江和明に代わり、熊沢 学が出演

【東京公演】
2023年12月15日(金)~12月31日(日)
会場:天王洲 銀河劇場

【兵庫公演】
2024年1月6日(土)~1月14日(日)
会場:AiiA 2.5 Theater Kobe

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/jujutsukaisen-stage/

公式サイト:
https://2023.jujutsukaisen-stage.com/

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佐藤流司