植原卓也、平間壮一、水田航生が出演するミュージカル『ミア・ファミリア』が11月24日、東京芸術劇場シアターウエストにて開幕した。2013年に韓国で初演された、韓国小劇場ミュージカルの人気作で、日本ではこれが初演。植原、平間、水田はそれぞれミュージカルや舞台で大活躍中、ユニット「3LDK」としてもタッグを組み人気を博しているが、芝居での共演はこれが初となる。

物語禁酒法時代のニューヨークイタリア労働者たちの潜り酒場「アポロニア」が舞台。マフィアのボスが一帯を買い占めてしまったため、翌日には閉店が決まっている店で、たったふたり残ったボードヴィル俳優リチャード(平間壮一)とオスカー水田航生)が最後の公演準備をしている。そこへマフィアの手下、スティーヴィー(植原卓也)が押しかけてきて、ボスの上院議員当選祝いをこの店でやる、ついてはボスの自伝『ミア・ファミリア』を上演しろと言ってきて……。

閉店を控えたバーで起きた騒動と人間模様に加え、リチャード&オスカーがもともと上演しようとしていた『ブルックリンブリッジの伝説』、スティーヴィーが持ち込んできた『ミア・ファミリア』という2本の劇中劇が並行して綴られていく。たった3人のキャストは目まぐるしく役を変え、芝居に歌にダンスに女装に客席降りにと八面六臂の活躍。俳優たちが汗をかきかき大奮闘する中で、彼らの素の魅力も見えてくる。笑いをたっぷりまぶしながらもキャラクターの心情を切々と歌い上げるナンバーもあり、しかしあくまでも賑やかに――“韓国小劇場ミュージカル”の王道のようなミュージカルだ。

しかも、演じる3人がなんとも可愛い。スティーヴィー役の植原はクールで隙のない立ち姿がマフィアらしい凄みを醸しだしながらも、時折みせるお茶目な行動がチャーミング。リチャードの平間は店と芝居を愛し、行き詰った状況をどうにかしたいと思っている真摯さがぴったり、ただしギャンブル好きだというダメポイントの抜け感もイイ。水田は、実は翌日に結婚式を控えていてアポロニア最後の公演どころではないオスカーを、調子の良い軽さと仕事を切り捨てきれない情の深さで絶妙に演じている。3人ともなんてピッタリで、“愛すべきヤツら”なんだろう! 日本公演前に韓国での上演を観た日本スタッフが「当て書きではないか」と口を揃えて言った、というのもさもありなん。

初日前の会見では、役にピッタリと言われることに「自覚はあまりない」と笑う3人だったが、平間が「3LDKというユニットがあって、この作品があって、ちょうど良かったと言ったら言い方が変かもしれませんが……。長年一緒にやってきた仲間がここにいて、自然と深まっていったものを作品に乗せていける」と語るように、“3人だからこそ”の部分は確実にある様子。植原も「子どもの頃から知っているので、ふたりがとんでもない役者さんになっていてびっくりしています。『そういう風に役を作り上げていくんだな』とか、一つひとつに感動した」、水田も「普段なら『今このタイミングではなく後で伝えよう』と思うことも、気になった時にポンと言えたりした。安心しかなかったし、負の感情が生まれない稽古場でした。また色々な経験を積んだふたりの姿を見て、刺激を受けました」と話していた。

最後まで息をつかせない物語に、妙に耳に残るユニークな楽曲で、一瞬も飽きる暇のないスピーディなミュージカル。さらにカーテンコールは、まるで3LDKのライブかと見紛うほどの楽しいノリで盛り上がること間違いなし。何より、3人が心から楽しそうなのがいい。公演は同劇場にて12月3日(日)まで上演したのち、12月23日(土)・24日(日)には大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでも上演される。チケットは発売中。

取材・文・撮影:平野祥恵

<公演情報>
ミュージカル『ミア・ファミリア

Original Production by MJStarfish

【出演】
植原卓也 平間壮一 水田航生

【スタッフ】
脚本・作詞:イ・ヒジュン
作曲:パク・ヒョンスク
訳詞:森雪之丞
日本版脚本・演出:安倍康律

【東京公演】
2023年11月24日(金) ~12月3日(日)
会場:東京芸術劇場シアターウエスト

【大阪公演】
2023年12月23日(土)・24日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/miafamiglia-o/

公式サイト:
https://miafamiglia.jp/

ミュージカル『ミア・ファミリア』より