尾上松緑主演による「赤穂義士外伝」が2023年12月より歌舞伎座にて二か月連続で上演(歌舞伎座十二月歌舞伎』(2023年12月3日初日~26日千穐楽)第二部「俵星玄蕃」、『壽 初春大歌舞伎』(2024年1月2日初日~27日千穐楽)昼の部「荒川十太夫」)されるにあたり、尾上松緑、坂東亀蔵、尾上左近、西森英行(演出)、竹柴潤一(脚本) が赤穂義士ゆかりの泉岳寺にて墓参・法要を行った。

泉岳寺 四十七の墓。右に大石内蔵助の墓

泉岳寺 四十七の墓。右に大石内蔵助の墓

(前方)左より、尾上左近、尾上松緑、坂東亀蔵、(後方)竹柴潤一、西森英行

(前方)左より、尾上左近、尾上松緑、坂東亀蔵、(後方)竹柴潤一、西森英行

今回上演される2作品はともに、長らく人々に愛されてきた赤穂義士の討入りにまつわる物語。赤穂義士が討ち入りを果たした12月に上演される『俵星玄蕃』は討入り前夜と当日を、1月上演の 『荒川十太夫』は討入りの後日譚を描いている。

『俵星玄蕃』は槍の名手・俵星玄蕃と赤穂義士・杉野十平次との心の交流が描かれた名作で、講談や浪曲でも有名な作品。この度が初演となる。『荒川十太夫』は人間国宝の講談師・神田松鯉の口演により、昨年10月に歌舞伎として初演。その年で一番優れた新作歌舞伎として「大谷竹次郎賞」 を受賞、「文化庁芸術祭賞・芸術祭優秀賞」も受賞するなど多くの反響を呼び、早くも再演の運びとなった。

歌舞伎座『俵星玄蕃』特別ビジュアル

歌舞伎座『俵星玄蕃』特別ビジュアル

歌舞伎座『荒川十太夫』特別ビジュアル

歌舞伎座『荒川十太夫』特別ビジュアル

尾上松緑は 『俵星玄蕃』 で俵星玄蕃、 『荒川十太夫』で赤穂義士・堀部安兵衛の介錯をつとめ苦悩する下級武士の荒川十太夫を初演に続き勤める(※俵星玄蕃、荒川十太夫ともに赤穂義士ではありません)。坂東亀蔵は『俵星玄蕃』で 当り屋十助実は杉野十平次赤穂義士、『荒川十太夫』 では初演に続き松平隠岐守定直を勤める。尾上左近は 『俵星玄蕃』『荒川十太夫』両作品で大石内蔵助の息子・大石主税(※赤穂義士)を勤める。左近は昨年の『荒川十太夫』でも大石主税を演じている。

歌舞伎座での上演に先立ち、作品ゆかりの地である泉岳寺を墓参した尾上松緑、坂東亀蔵、尾上左近らは山門にて写真撮影、浅野内匠頭の墓前での法要を行い、四十七士の墓前をお参りした。また、松緑は大石内蔵助の墓、亀蔵は『俵星玄蕃』で演じる杉野十平次の墓、左近は両作品で演じる大石主税の墓へ卒塔婆を立て、手を合わせた。

左より、竹柴潤一、尾上左近、尾上松緑、坂東亀蔵、西森英行

左より、竹柴潤一、尾上左近、尾上松緑、坂東亀蔵、西森英行

尾上松緑は「昨年上演した『荒川十太夫』という作品がお客様に喜んでいただけたことが、この度、二つ目となる『俵星玄蕃』に繋がることになりました。 年末ということもあり、お客様に喜んでいただけるものを、みんなと一緒につくっていきたいなと思っています。 気心の知れた何でも言い合えるようなメンバーでやっておりますので、これからも新作物に限らず、みんなで歌舞伎を盛り上げてやっていきたいです」とコメント。

大石内蔵助の墓へ手を合わせる尾上松緑

大石内蔵助の墓へ手を合わせる尾上松緑

坂東亀蔵は「去年の第一弾(『荒川十太夫』)は、どうなるのかということが自分たちでもわからなかったのですが、舞台稽古で観た幕内のみんながよかったよと言ってくれたことが自信につながりました」と振り返り、今回第二弾にあたっては、「お客様の期待からのプレッシャーはありますが、みんなでいいものをつくっていければと思います。講談から歌舞伎にしてよかったなと思っていただけると嬉しいですよね。スタッフ、演者一同、一所懸命お客様にいいものを見せるべくがんばっていますので、是非、期待して歌舞伎座にいらしてください」と呼びかけた。

杉野十平次の墓に手を合わせる坂東亀蔵

杉野十平次の墓に手を合わせる坂東亀蔵

尾上左近は二か月連続で勤める大石主税について、「最年少で討入りに臨み、抜け穴に最初に飛び込んでいったといわれる人物。その勇猛果敢な闘志に、想いの強さ、忠義の素晴らしさを感じます。私は年齢も近く、そのような方を勤めさせていただける ことをとても光栄に思います。義士の方々に失礼のないよう、二か月、誠意を込めて舞台に立ちたいと思います」と述べた。

大石主税の墓に手を合わせる尾上左近

大石主税の墓に手を合わせる尾上左近

演出の西森英行は「作品をどう意義のあるものとして残すか。赤穂義士の物語が現代にどう翻訳され、現代のお客様に届くかということをずっと考えているところがあります。今は非常に力が入っています」と述べ、昨年の『荒川十太夫』に続く出演者・スタッフのチームを「常に妥協せぬ、ベストは何かを考え続けるチーム」と絶賛。「松緑さんを筆頭にエネルギーをかけて作品をつくるチーム、作品のためにという熱の高いチームなので、そこの中でやれるということは至上の喜びです。第二弾はプレッシャーもありますけれど、とにかく嬉しいです」とコメントした。また、「この作品は決して古くない」と力を込める。「僕らは色々と日々に迷うことばかり。ひとつの指針を渡し得る古典の力がこもった作品だと思っているので、そこを受け取っていただけたら嬉しいです」とお客様へのメッセージを寄せた。

左より、竹柴潤一、西森英行、尾上松緑、坂東亀蔵、尾上左近

左より、竹柴潤一、西森英行、尾上松緑、坂東亀蔵、尾上左近

毎年12月14日は東京にいれば必ずお参りに来ているという脚本の竹柴潤一は、「(泉岳寺は)古典芸能に関わっている人間にとって特別なところ」としたうえで、今日はいつもとは違った心持ちでのお参りとなったと話す。「昨年の『荒川十太夫』は神田松鯉先生の御作を舞台にするということで良くも悪くも寄りかかって出来ましたが、今回の『俵星玄蕃』は皆様の意見を頂戴して、皆様に助けていただき、お力をもらいながら、お客様に楽しんでいただける作品をつくっていきたいと思います。初心忘るべからず、狂言作者としての仕事ができればと思いますね」。また、お客様へのメッセージとして「我々日本人がこういうものを大事にして生きてきたということを……あまり難しいことは考えなくてもいいですけれど、とにかく二か月 楽しんでいただき、ほっこりとした気持ちになって劇場をあとにしていただければと思います」と呼びかけた。

左より、竹柴潤一、西森英行、尾上松緑、坂東亀蔵、尾上左近_N5T2314