キャンプの道具や知識には、防災に役立つものがたくさんあります。でも、いくら優れた道具を揃えても、電源や水道のないストイックなキャンプ経験があっても、災害時には全く経験したことのないさまざまな問題が襲いかかってくるでしょう。予期せぬ事態を目の前にしたとき、道具や知識がいつものように使えないかもしれません。

そんな悔しい思いをしないために、災害時に役立つ情報やすぐに使える収納方法など、ちょっとしたヒントを知っておくとあなたの知識や道具がもしもの時にぐっと頼もしいものになってくれるはずです。

この連載では、無理なく無駄なく楽しくできる「SDGs防災キャンプ」を提唱するCAMMOC防災士資格を持つメンバーから、アウトドア好きの皆さんへ、もしもの時に役立つ情報とレシピをお届けします。

在宅避難ができると判断するには?

前回のコラムで、災害発生時に“避難所を目指すだけが避難ではない”という「さまざまな避難先(避難の種類)」について紹介しました。そのなかで自宅を避難所とする“在宅避難”について触れましたが、だれもが在宅避難可能だとは限りません。

いざというときに慌てず判断ができるように、どのような状況で在宅避難と判断するのか何をどれくらい備蓄しておくとよいか、実際に確認しながら準備していきましょう。

在宅避難判定フロー

ハザードマップで被害状況を把握

自宅や職場付近にどのような自然災害リスク(津波、洪水、土砂災害など)があるか、ハザードマップで確認してください。

ハザードマップ上で色が塗られている場所は災害の危険あり!
→原則*として、警戒レベル3で自宅外への避難が必要(指定緊急避難場所、縁故避難、宿泊施設など)です。
(*浸水の危険があっても「家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない」「浸水深より居室が高い」「水がひくまで生き延びる備蓄がある」など安全が確保できる場合は在宅避難可)

ハザードマップ上で色が塗られていない=安全とは限らない!
自宅に危険性がなく、安全に生活できる場合は在宅避難が可能です。
※お隣さんから火災が発生したり、風速20m以上の台風で屋根が飛ばされたり、ハザードマップ上では予期せぬ事態も起こりえます。周囲の状況や市区町村からの情報を常に把握し、いつでも避難できるよう準備しておきましょう。

②建物の耐震基準を確認

1981年5月31日までに建てられた「旧耐震基準」の建物は、大規模地震で倒壊のおそれがあるため耐震診断を受け、場合により引越しや補強工事を行いましょう。(自治体により補助あり)
1981年6月1日以降に建てられた「新耐震基準」、2000年6月1日以降に建てられた「新・新耐震基準(2000年基準)」は、旧耐震基準より強化されています。
※耐震基準の他に「耐震等級」という地震に対する建物の強度を示す指標もあります。3段階あり、数字が大きいほど建物の耐震制度は高くなります。

③災害に強い部屋づくり

地震対策として、家具や家電の固定、避難経路にモノを置かない、窓ガラスに飛散防止フィルムを張るなど。浸水対策としては、ブレーカーを1階と2階で分けたり、2階以上を居住スペースと考えたり、雨水ますを定期的に清掃するなど、水がひくまで生活できるよう準備しておきましょう。

災害に強い部屋づくりは日常生活においても安心安全で、いざ在宅避難となった場合もスムーズに行動できます。

なにを、どのくらい備蓄したらいいの?

ライフラインが止まって困ることから、必要なモノを考える

電気やガスが止まったら……

・照明がつかず、夜は真っ暗闇
・エアコンや扇風機、ヒーターが使えない
・洗濯機や乾燥器が使えない
・給湯器が使えず、お湯が出ない
・冷蔵庫や電子レンジ、ガスコンロが使えない
携帯電話やLEDライトの充電ができない
・テレビやパソコンが見れない
・インターネットが繋がらない etc

電気の復旧目安は約1週間。上記の困りごとからあると便利なアイテムをピックアップしてみましょう。

乾電池はアイテムに合わせたサイズを多めに、ガス缶は1本約1時間(強火)として7本以上ストックしておきましょう。
※消耗品は、日常やキャンプで使った分だけ補充するローリングストック法で備蓄しましょう。

水道が止まったら……

・トイレの水が流せない
・シャワーやお風呂に入れない
・洗顔や歯を磨けない
・飲料水や調理水がない
・洗濯できない etc

水道の復旧目安は約1〜2ヶ月。上記の困りごとからあると便利なアイテムをピックアップしてみましょう。

※大人のトイレ回数は1日平均5回といわれ、1ヵ月で約150回。簡易トイレを1ヶ月分×家族分用意するのは大変なので、最低でも1週間分(例:1人5回×7日×4人=140回分)用意しておきましょう。簡易トイレの代用などについてはこちら。
トイレットペーパーは、1ロール消費するのに何日かかるか数えてみるとおおよその必要本数がわかります。(4人家族の例:2日で1ロール消費=1ヶ月16ロール)
※生命維持に必要な水は1人1日3ℓといわれ、最低でも1週間分(約21ℓ)備蓄しておきたいところ、すべて水である必要はありません。常温可能で普段から飲み慣れているお茶やジュースでも◎。詳しくはこちら。

生きるために欠かせないモノから優先順位をつけて、1週間以上分備蓄

まずは1日生きるために欠かせないモノから考えてみましょう。

例:常備薬、眼鏡、コンタクト、補聴器、医療機器、オムツ、おしりふき、ナプキン日焼け止め、保湿クリーム、飲みもの、食べ物など

在宅避難を可能とするためには、ライフラインが止まって困るモノ、生きるために欠かせないモノ、その他生活に欠かせないモノという順番に、最低でも1週間以上分確保が必要です。
※常備薬の名称を覚える、またはお薬手帳やスマートフォンのアプリなどで情報を管理しておきましょう。

おすすめは「おうちキャンプ」

そして、備えたものを実際に使ってみることが大切です!
自宅でキャンプ道具を使い、キャンプの楽しみを再現する「おうちキャンプ」はコロナ禍で体験された方も多いと思います。
たとえば、休日のお昼ご飯をシングルバーナーで作ってみる。テレビを消してデジタルデトックスしながら、夜はランタンの光ですごしてみる。など、在宅避難を想定したときにも活用できそうなアクションを、日頃から楽しみとして取り入れてみましょう。

さらに、お家キャンプは物足りない!というキャンプ経験豊富な方にもおすすめなのが「超リアルおうちキャンプ」です。
山でテント泊をしているようなイメージで、実際におうちの中で電気・ガス・水道を一切使わずに数日間過ごすことに挑戦してみましょう!外でなら不便に感じないことも、なぜか家の中では不便に感じるなんていう発見もあるかもしれません。
楽しみながら備えをアップデートしていきましょう!

今月のレシピ/サバ缶のローリングストックレシピ ・台湾風混ぜそば

缶詰の定番サバ缶。最近ではさまざまな味付けのサバ缶やオシャレなデザインのサバ缶などがありますが、ぜひお気に入りのサバ缶とアレンジレシピ を見つけて、ローリングストックを楽しみましょう!今回はコンビニやスーパーにあるお弁当のおそばでもアレンジ可能な混ぜ蕎麦をご紹介します。

材料(2人分)

そば(お弁当コーナーにあるぶっかけそばなど)……2人分
サバ缶(味噌味)…1缶
ニラ…適量
小ネギ…適量
鰹節…適量
卵…1個
そばつゆ(3倍濃縮)…お弁当についているもの
ゴマ油…大さじ1
胡椒…少々
おろしニンニク…小さじ1/2
ラー油…お好みで

作り方

①お弁当のそばの上にサバ缶のサバ、みじん切りにしたニラ、みじん切りにした小ネギをのせる。
②缶に残った汁に、そばつゆごま油、胡椒、おろしニンニク、お好みでラー油を入れて混ぜ合わせ、そばにかける。
③卵(卵黄のみでも全卵でもOK)、鰹節を乗せてできあがり!

★今回は市販のそのまま食べられるそばを使いましたが、お家で茹でてももちろんOK!中華麺、うどん、パスタそうめんなどいろいろな麺でアレンジも可能です。

クリエイターズユニット
CAMMOC(キャンモック)

左から、三沢真実、三宅香菜子、内舘綾子
キャンプのある暮らし」をテーマに地球の未来を創造するクリエイターズユニット。トータル撮影コーディネートやコンサルティング、キャンプをとおして自然と身につく知恵や道具でできる防災法「SDGs防災キャンプ」の提案を行なっている。アウトドアやフードロス、防災などの観点からドライフードに注目し、初著書「うまみがギュッ!干すだけ簡単 はじめてのドライフード(山と溪谷社)」全国書店にて絶賛発売中。
https://cammoc.com
www.instagram.com/cammoc
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