JRの車両形式は原則、国鉄時代に制定されたルールに則って定められていますが、JR四国だけは独特です。4桁の番号で形式を表すので、さながら私鉄のよう。そこにある意図を探ります。

「私鉄っぽい形式」始まりは2000系気動車

1987(昭和62)年まで国鉄だったJR7社のうち、6社は現在でも国鉄式の車両形式を踏襲していますが、独特なのがJR四国です。その車両形式はさながら私鉄のようです。

国鉄時代は、電車ならば「クハ」「モハ」などカタカナで車両の設備やモーター、運転台の有無を表し、それに続く3桁の数字で電源方式や用途を表していました。たとえば「モハ484-1」だと、カタカナは「モーターの付いている(モ)」「普通車(ハ)」を、続く数字は「交流・直流両方の電源で走行可能(4)」「特急形(8)」「系列(4)」「製造順(-1)」をそれぞれ表します。つまり記号や番号を見れば、その車両の用途が分かるようになっていました。

しかしJR四国は、1989(平成元)年に登場させた2000系気動車で国鉄式の形式呼称をやめ、私鉄でよく見られる4桁の番号のみで表すようにしました。このとき同社は「西暦2000年を目指す」という意味合いで2000系と命名したと発表しています。

実際2000系は世界初の制御付き自然振子機構を導入した画期的な車両で、JR四国も相当な覚悟と意気込みで登場させました。ゆえに形式も、新生JR四国をアピールする新しいものにしたいという意図もあったでしょう。

そしてその翌年には一般型の気動車1000形と命名。その由来は発表されませんでしたが、2000系で記号なしの4桁番号になったのだから、今後の新車も2000系に倣った車両形式に統一したほうがよいという判断もあったでしょう。以降は一般型電車の6000系7000系5000系、特急形の2600系、2700系のように、原則として記号なしの4桁番号で新造。国鉄時代に製造した121系電車も、走行装置をリニューアルしたことで7200系と改番しています。

国鉄の車両番号は先述のように、交流用・直流用・交直流用といった電源別の区分や、特急用・近郊用・通勤用といった用途区分などで番号が細かく区分されています。全国規模の国鉄では車種も多彩となり、用途が分かりやすい形式でないと不便でしたが、JR四国の路線網には交流電化区間はありませんし、普通列車も2023年現在ではすべて近郊形のカテゴリーに属する車種しか新造されていません。したがって国鉄時代のように、車両形式を細かく区分する意味がないのです。

民営化後に国鉄式の形式!?

では、JR四国の4桁の番号には意味があるのでしょうか。千の位を見ると、それぞれ次のように分類されています

1000:一般型気動車
2000:特急形気動車
5000~7000:一般型電車
8000:特急形電車
※車両に大幅な改造が加わった場合は元の形式に200を加える

さらに、百の位で系列や運転台・トイレの有無、改造車かどうかなどを区分けしています。JR四国2000系の登場を機に、自社の企業規模に合わせて整理しやすい車番に改定した、ということになるでしょう。

さて、4桁の形式に切り替えたJR四国ですが、実は2形式だけJR四国になってから「国鉄式の形式」で新造された車両が存在します。

そのひとつがキハ185系です。もともとは国鉄末期の1986(昭和61)年に登場した特急形の気動車ですが、JR四国になってからも瀬戸大橋開業などで利用客が増加したため、国鉄時代の仕様のまま製造を続けていました。ただ、キハ185系2000系登場前から製造されていた車両なので、国鉄時代の形式を踏襲していても不思議ではありません。

しかし、トロッコ列車として使われるキクハ32形は、最初の1両が1997(平成9)年製造です。2000系どころか6000系8000系など、JR四国の主要な車両が一通り出揃った時期に製造されているにもかかわらず、国鉄式の形式で登場しています。

これは、キクハ32形が車体の大きさや台車など、国鉄キハ32形気動車のシステムと類似していることから、キハ32形の一系列として製造されたためです。しかし、キクハ32形自体はキハ32形とは連結されず、専らキハ185形と連結して運行されている点もまたユニークです。

JR四国を除くJR6社は現在でも、国鉄式の形式を基本としていますが、JR東日本E1系新幹線電車から、形式の頭に「東日本(East)」を表す「E」を付けるようになったり、JR九州YC1系JR東日本EV-E801系のように、国鉄時代の区分が存在しないハイブリッド車や蓄電池車には、独自の付番を行ったりする例もあります。

今後JR四国以外にも、独自の形式を付ける車両が現れる可能性もゼロではありません。

「西暦2000年を目指す」という意味を込めて製造された2000系気動車の試作車。この形式からJR四国の車両は番号4桁の形式となった(2013年2月、児山 計撮影)。