今年は全国でクマによる被害が過去最多を記録する中、他の野生動物による被害も深刻となっています。せっかく育てたリンゴをサルに食べられてしまったり、イノシシに畑を掘り返されてめちゃくちゃにされてしまったり…。弁護士ドットコムの公式LINEには、野生動物による農作物への被害について、さまざまなエピソードが寄せられました。

農水省の全国統計によると、被害額は毎年150億円を超えています。2021年度の被害額は155億円で、全体の7割がシカ・イノシシ・サルによるものでした。実際にはどのような被害があるのでしょうか。弁護士ドットコムに寄せられた体験談を紹介します。

⚫️「イノシシに荒らされもう畑を見るのも嫌」

「畑がイノシシに荒らされました!」

そう話すのは、岐阜県の女性(30代)です。畑ではタロイモが栽培されていましたが、イノシシがあちこち掘り返し、用水路の石垣まで破壊してしまったそう。「重機がないと直せないので、しばらく放置してあります」と諦め気味です。

実は、シカに次いで全国で農作物への被害が多いのが、イノシシです。農水省の統計によると、シカは61億円、イノシシは39億円の被害となっています(2021年度)。イノシシの被害をどう食い止めるか。鳥取県の女性(50代)はこんな体験を教えてくれました。

あるとき、女性の知人の畑に植えてあったサツマイモイノシシに食べられてしまいました。もともとは知人の両親の畑でしたが、両親が亡くなったあとは、荒れない程度に知人が管理していたそうです。

しかし、収穫をしようと畑を見に行ったら畑一面、イノシシに荒らされており、「もう2度と畑はみたくない」と話すほど、知人のショックは大きかったといいます。

そこで、女性がイノシシに荒らされない農作物を調べ、試しにアクの強いサトイモショウガを一緒に栽培することを勧めたところ、功を奏して、現在はイノシシによる被害はなくなったそうです。

「別の地方ではイノシシサトイモを食べると聞きました。サトイモの株の間にショウガを組み合わせてみたらどうかとその地方の方にもお話したところです」(鳥取県の女性)

⚫️通学路にたむろするサルの群れ

シカやイノシシに比べて、被害額が少ないサルですが、農水省の資料によると、サルの場合はさらに、人家に侵入したり、観光客に飛びかかったりといった被害が発生しています。

「毎年、サルの被害に実家が困っています」と話すのは、三重県の女性(50代)です。サルは群れで行動する習性がありますが、多いときで30頭もの群れが、小学校の通学路にたむろし、子どもたちの安全を脅かしたりしているそうです。

女性の実家では、庭にヤマモモやカキの木を植えたり、自家菜園もしていましたが、収穫期になるとサルに食べられてしまったため、もうやめたとのことです。

「ご近所では、有刺鉄線で囲うなどして畑を続けているところもありますが、年々、被害が増えています。

私の友人は、育てていたカボチャをサルが抱えて逃げようとしたので、爆竹で威嚇したところ、屋根の上にサルが逃げて、カボチャを投げつけてきました。友人にケガはありませんでしたが、カボチャは車のフロントガラスに落ちて割れてしまい、修理代がかかったと聞きました」

⚫️農作物の被害から引き起こされるさらなる「被害」

さまざまな体験から浮かび上がる深刻な被害。

農水省では「鳥獣の捕獲による個体群管理」「柵の設置や追い払いによる被害防除」「餌場や隠れ場をつくらないような生息環境管理」を基本的な対策としています。

中でも、シカやイノシシなどの捕獲頭数は年々、増えています。そこで農水省では、捕獲した鳥獣のジビエ利用を観光や外食、学校給食、ペットフードなどさまざまな分野で拡大する振興策を進めています。

2016年には563施設だったジビエ処理加工施設も、2022年には750施設にまで増えています。これにともない、ジビエ利用量も約2000トンと、1.6倍に増加。2年後までには、4000トンまで増やすことを目標としているそうです。

この理由として、動物による農作物への被害は、経済的損失にとどまらないと農水省は次のように指摘しています。

「鳥獣被害は、営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林下層植生の消失などによる土砂流出、希少植物の食害などの被害をもたらしており、被害額として数字に表れる以上に農山漁村に深刻な影響を及ぼしている」(令和5年11月「捕獲鳥獣を巡る最近の状況」農水省鳥獣対策・農村環境課より)

農水省では、鳥獣捕獲の強化やジビエ利用の拡大を支援するため、今年度は96億円もの予算が「鳥獣被害防止総合対策交付金」として組まれています。

カボチャを投げつけるサル、石垣を破壊するイノシシ…クマだけじゃない「野生動物」による"被害"の深刻度