1963年イギリスBBCテレビで放送スタートし、世界最長のSFドラマシリーズとして知られる「ドクター・フー」。その60周年を記念したオリジナルスペシャルエピソード3本の第1弾「ドクター・フー:スター・ビースト」が11月26日(日本時間)に配信スタートした。フーヴィアン(Whovian)といわれる本作のファンが待ちわび、配信後に「#DoctorWho」がイギリスと世界のトレンド1位に輝いた作品をレビューする。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】抜群のコンビネーション!“14代目ドクター”(デヴィッド・テナント)とドナ(キャサリン・テイト)

■「ドクター・フー」とは

ドクター・フー」は、“ドクター”と名乗る異星人がポリスボックス(警察に通報などの連絡ができる公衆電話のブース)型の装置・ターディスに乗り、コンパニオンと呼ばれる人間の仲間と時空を移動しながら悪と戦い、事件を解決していくというのがベースのストーリー。

60年もの長きにわたる歴史を持つが、途切れることなく放送されていたわけではなく、1989年に一度終了し、1996年に単発のスペシャル版を経て、2005年から新シリーズが始まった。

移動する時空は、古代ローマなどの過去から銀河の果てまで幅広く、未知のエイリアンも登場するなど、SFらしさ満点の予測不能なストーリーが展開。また、主人公のドクタータイムトラベルできることからタイムロードと呼ばれる種族で、2つの心臓を持つが、危機に瀕したときは“再生”することが可能で、記憶は引き継いだまま外見や性格、性別も変化したりする。その時空と主人公変容の自在さが長寿シリーズを支え、新たな物語をどんどん楽しめるということで、子どもから大人まで裾野を広げたファンを獲得してきた。

今回の3つのオリジナルスペシャル作品では、2005年から2010年まで10代目ドクターを演じたデヴィッド・テナントが14代目ドクターとして復帰。そして、第1弾の「ドクター・フー:スター・ビースト」では、10代目ドクターコンパニオンだったキャサリン・テイト演じるドナ・ノーブルと再会して物語が繰り広げられていく。

ドクターが現代のロンドン

かつてドクターコンパニオンだったドナは、人間ながらタイムロードの知識を得て、宇宙を救った。だが、その代償は大きく、ドクターはドナの命を守るために記憶を消し去っていた。もしドクターのことを思い出せば、ドナは死んでしまう。

そんなとき、なぜか再びドナと旅していたときの顔に戻ってしまったドクターは、ターディスで現代のロンドンに不時着。街を歩いていると偶然ドナと再会し、彼女の娘ローズ(ヤスミン・フィニー)とも出会う。驚いていたのもつかの間、夜空を見上げると宇宙船が墜落していくところだった。

ドクターは宇宙船を探しに出る一方、ローズはキュートな見た目のエイリアンと遭遇。ミープという名のその生命体は、モンスターに追われていると言い、ローズは自宅敷地内にあるぬいぐるみ制作をする作業小屋でかくまうことに。

やがて、ドクターとドナは、ドナの家族もろとも戦いに巻き込まれていく。

ドクターとドナのやりとりが楽しく心強い!

ドクターは、大親友でもあったドナと二度と会えないことを寂しく思っていた。対してドナは、愛する家族と一緒で幸せだが、「何かが欠けている」という思いを抱き続けていた。そんな2人が再会したのは、ただの偶然なのか。

そんな謎を頭の片隅に置きつつ、ドクターとドナのやりとりが実に軽快で楽しい。ドクターが“親友”と言い切るドナは、おしゃべりで大胆。その性格が戦いで発揮されるときはとても心強い存在となる。

ドクターとドナのことは、作中でもドクターの言葉や会話で説明がされるため、シリーズ未見でも追いつけるのだが、知識があればということもやはりある。

まず、ドナの母シルビア(ジャクリーン・キング)はドクターのことは覚えている。危険なことから娘を守りたいと思ってきたことが言葉の端々から分かり、シリーズのつながりを感じるところだ。

そして、ドナとの再会場面で娘がローズという名前であることにドクターが驚いたのは、10代目ドクターコンパニオンの1人と同じだったから。ドクターとの記憶がないはずのドナがローズと名付けたのは…。また、今回のローズトランスジェンダーで、現代の物語に即した多様性を取り込んだ存在でありつつ、クライマックスで出てくる言葉と「ドクター・フー」の世界観につながっていく。

宇宙のエイリアンたちとの戦いシーンでは、最新の技術力が発揮され、舞台となるロンドンの街に豪快な演出が。ターディスの中も美しいデザインとなっており、SFドラマの金字塔の新作にふさわしい仕上がりにワクワクする。

本国イギリスでは、配信スタートとなった現地時間の25日にSNSのトレンドランキング1位になり、その勢いは広がって世界ランキングでも1位を獲得。日本のフーヴィアンからは「最高に面白い」「デヴィッド・テナントドクターは良い」「やっぱりドクターとドナは名コンビ」「ドナさん、あいかわらずサイコー」「王道と、多様性を持ったキャラクターがみんなかっこよくて最高だった」といった声が寄せられている。

ドクター・フー:スター・ビースト」は、ディズニープラスで独占配信中。「ドクター・フーワイルド・ブルー・ヨンダー」は12月3日(日)より、「ドクター・フー:ザ・ギグル」は12月10日(日)より独占配信開始だ。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

SFドラマの金字塔「ドクター・フー」の新エピソードが配信開始/(C)2023 Disney and its related entities