組込みシステム技術協会(JASA)は11月16、17日の2日間、「ETロボコン2023チャンピオンシップ大会」を開催した。会場は、前回同様パシフィコ横浜の展示ホール。開催中のEdge Tech+ 2023内に設けた特設会場に、全193チームから予選を勝ち抜いた40チームが、全国から集まり腕を競った。16日に開いたチャンピオンシップ競技大会で見事優勝を決めたのは、プライマリークラスではパナソニックITSのチーム「ITS Labo」、アドバンストクラス・総合部門ではアドヴィックスのチーム「HELIOS」だった。

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 ETロボコンは、ET(Embedded Technology)ソフトウェアロボットコンテストの略。組み込みソフトウェアを重視する、教育的な役割も担うロボットコンテストだ。各チーム同一規格の「走行体」を使用するのが特徴。決められたコースを走らせ、設定されたミッションのクリア度合いと走行タイムを競う。なお今回は、走行体がバージョンアップする端境期。「教育版レゴマインストームEV3」をベースにした従来型の走行体「HackEV」と、「レゴエデュケーションSPIKEプライム」をベースにして「Raspberry Pi 4」を搭載した新型の「HackSPi」が並走した。勝敗を分けるのは、走行体の挙動を制御するプログラムだ。プライマリークラスでは、競技ポイントで順位を決定。高度なミッションを課す「アドバンストクラス」では、競技ポイントに、ソフトウェアの設計図ともいえる「モデル」の優劣も加味し「総合」優勝を決める。

 プライマリークラスで優勝した、チーム「ITS Labo」は南関東地区代表。競技ポイント58.2を獲得し逃げ切った。揃いの青いTシャツと新走行体で臨んだ「ITS Labo」。前半戦ではロケットスタートを決め、途中まで順調だったもののコースアウト。ゴールはできなかった。しかし、後半戦では同様にロケットスタートを決め、その後慎重にすべてのミッションをこなし、見事パーフェクトでゴールした。準優勝は東北地区代表、八戸工業大学工学部のチーム「ヒット&ラン」。57.1ポイントとわずかにトップに届かなかった。3位は九州北地区代表、九州産業大学マイナビEdgeのチーム「KERT-B3」。57.0ポイントで2位と僅差の大接戦だった。

 アドバンストクラス・総合部門で優勝した「HELIOS」は東海地区代表。競技ポイント82.2、モデルランクはA+といずれもトップの成績。文句なしの完全優勝だ。確実に走り切ることを目指したプログラミングで臨んだ「HELIOS」。前半戦は、ミッションの一つ「IoT列車」の初期位置がずれる、というトラブルが発生しスタートできなかった。競技システムの不具合によるものだったため再レースを実施。その結果、ミッションのフィギュア2体の写真撮影をしっかりこなし、ブロック移動のミッションも確実にクリア。これで82.2ポイントを獲得。後半戦も同様に健闘したが前半戦のポイントが上回り競技ポイントが確定した。準優勝は、同じく東海地区代表、デンソーのチーム「D:Drive/re」。競技ポイントが66.7と高かったため、モデルランクはB-だったものの2位に滑り込んだ。3位は、九州北地区代表、九州産業大学工学部情報科学科のチーム「Smart SPiNaCH」。競技ポイント52.0、モデルランクはC+だった。

 挨拶に立った、ETロボコン実行委員会の星光行 本部・実行委員長は「コロナ禍の2年間はこのようなリアルでの大会ができなかった。しかし、長年培った、教育の流れを止めたくないという思いから、実行委員が開発したシミュレーターを使って開催を継続してきた。企業の中には、ETロボコンを新人教育のプログラムとして採用していただいているところもある。普通の会社生活ではできないことが経験できると思う。ただ現状では、残念ながら金銭面的に苦しい状況。主旨にご賛同いただける企業にはぜひスポンサーになっていただきたい。また、チームとして参加いただいて、コンテストを盛り上げていただきたい」と話した。(BCN・道越一郎)

アドバンストクラス・総合部門で優勝した「HELIOS」の走行体