11月27日に第7話が放送された「トクメイ!警視庁特別会計係」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系)。これまでのなかでも特にシリアスな演技が光るストーリーで、思わずウルっとしてしまった。SNSでも「伏線回収がイイ…」「悪い顔になった瞬間鳥肌立った」といった声が集まっている。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】橋本環奈“円”のちょっとポンコツなドヤ顔がキュート

■「トクメイ!警視庁特別会計係」とは

同作は、経費から事件解決の糸口を見つける新しい警察エンターテインメント。緊縮財政を強いられた警察の本庁から、“特別命令(トクメイ)”を背負って派遣された特別会計係が橋本環奈演じる一円(はじめまどか)だ。

経費において一円のズレも許さない几帳面な性格の円。周囲から「疫病神」と呼ばれるほどの“凶運”を持つ円が、沢村一樹演じる湯川哲郎をはじめとしたひと癖もふた癖もある個性豊かな刑事たちとともに、“お金”の面から事件解決に迫っていく。さらに警務課長・須賀安吾を佐藤二朗、上司である副署長・中塚文雄を鶴見辰吾が演じ、脇を固める。

■一億円を拾ったのは、言葉の通じない外国人

1億円という大金を拾った外国人、ノッカー・ウォール(小久保寿人)。3カ月前に1億円の入ったカバンを拾ったことで、本当の落とし主が現れなければ間もなく1億円の所有権を獲得する男だ。その彼が、商業ビルの階段から転落したという。

事件性を感じた湯川たちが病院に駆けつけると、ノッカーには怪我こそあれど命に別条はなかった。だがどうしても日本語も英語も通じず、コミュニケーションが取れない。商業ビルの階段は手すりが腰より高く、恐らくは何者かによる傷害事件…とにらんでいた湯川は、歯噛みする。

ノッカーが話す“ハラン語”は話者が希少で、通訳は外注するほかないそうだ。だが1人だけ見つかった通訳はギリシャ旅行を計画していたらしく、外注するにはそのキャンセル費用も込みで100万円以上の費用がかかる。残り4%の予算削減が達成できなければ署員のリストラもあり得る状況のなか、円としてはなるべく取りたくない選択肢だった。

そんな苦悩する円のもとを訪ねてきたのが、ノッカーに仕事を発注したという奈倉幸子(筒井真理子)。彼女が無償で通訳の協力を買って出てくれたことで、円は物理的に飛び跳ねるほど大喜びする。

円と湯川班はさっそく奈倉を連れてノッカーの入院している病院へ向かうが、顔見知りであるはずの奈倉を見てもノッカーは興奮状態のまま。カップを投げつけられても奈倉は笑顔を絶やさず、「マウットシューダバ」と穏やかに声をかけ続ける。湯川はその光景を感心しつつ、「ノッカーさん、我々が来てからずっと“タージ”みたいなことを言っているんですけども」と単語の意味を問う。奈倉は「タージはハラン語で、ありがとうという意味です」と解説し、ノッカーは日ごろから感謝の気持ちを言葉にする人なのだと笑った。

しかし中西翔(徳重聡)がハラン語で“私は刑事”と伝えようと、奈倉に教わった「パッラーダ」と声をかけると再び興奮状態に。混乱する中西をよそに、湯川の目が鋭く光った。

奈倉によって“ビルからの転落は疲労からくる事故だった”と通訳を受けても、湯川は捜査をやめない。しかし分厚いマニュアルを作ってでも経費削減を図る円にとって無駄な捜査は厳禁。「どうして無理に事件にしようとするんですか!?」と湯川を問い詰めるも、逆に「一円!お前はなんのために経費削減してるんだ?」と逆質問が返ってくる。それに「それは…統廃合を防ぐために決まってるじゃないですか」と答えると、湯川は「お前、やっぱりなんにもわかってないな」と告げて出て行ってしまう。やっと打ち解けたと思われた2人の間に、またも暗雲がたちこめる

■ノッカーの脱走、その意図

その後、ノッカーの拾ったカバンが犯罪組織のものであることを確認した湯川班。急いで怪しい奈倉ではなく別の通訳を呼ぼうとする班員だったが、なぜか湯川はまだ奈倉について調べるという。いつもとは違って歯切れの悪い湯川だったが、実は警務課長・須賀から円の苦悩について明かされていたのだ。リストラから署員をかばうべく経費削減に奔走する円の状況を知って、まだできることがある状態で経費を使うことをためらっていた。

一方、円は一億円の所有権に関する書類手続きをするためノッカーのいる病院へ。奈倉が代理で書類手続きを進めている間に手持ち無沙汰となった円は、ノッカーとコミュニケーションを取ってみることに。彼が飾っていた家族写真に目を付け、身振り手振りで「家族、すてき!」と伝える円。始めは強硬な態度だったノッカーだったが、円の伝えてくる言葉を読み取って最後には「ノッカー、タージ!カゾク…タージ!」と泣き顔で訴えてくるように。やはり興奮しているようだったが、その言葉が円の胸に強くひっかかる。

その後円は刑事課を訪れ、新たな通訳を呼ぼうと提案。高額な費用はかかるものの、「皆さんを守ろうとしていたこと自体、間違いだったんです。私たちが守らなくてはいけなかったのは、事件に巻き込まれた被害者の方々です」と気づいたという。「タージは“ありがとう”という意味である」と湯川たちに教えた奈倉だが、病院でのやり取りから明らかに文脈が合わないことを察した円。嘘をついている奈倉を信用せず、別の通訳を呼ぶべきだと主張した。

しかし直後、ノッカーが病院から脱走したという連絡が。探し回ってようやく見つけた湯川と月村久(前田拳太郎)だが、興奮状態のノッカーはナイフを振り回して抵抗してくる。慌てる月村に湯川はさすがベテランの貫禄で、落ち着いて交渉すれば大丈夫と豪語。だが奈倉が彼を落ち着けるために言っていた言葉を真似て「マルーダシルダバ」と声をかけたところ、ナイフを突き立てられてしまう。月村から「刺されてるじゃないですか!」とコントのようなツッコミが入るなか、そのままノッカーを確保した湯川。幸い肋骨で止まって、深くまで刺さらなかったようだ。

■小学生でもわかるルール

その後、奈倉を取調室で問い詰めた湯川。別の通訳によって「マウットシューダバ」が“逃げたら殺す”、「パッラーダ」は“逃がさない”という意味だったことを確認していることを明かすと、奈倉の表情が一変する。穏やかな顔つきが一気に陰を増し、目つきも鋭く釣りあがった。

「い~わよね~アンタたちは。お国からさあ、給料もらえちゃってるんだからさあ!」「ふざけんじゃないよ!」「私たち庶民はねえ、生きてくだけで精一杯なのよ!」つらつらと国の不備を挙げて怒りをぶちまける奈倉。しかし湯川はあくまで静かな声色で、「あんたに、小学生でもわかるルールを教えてやる。弱い者いじめをしてはいけない…そんな簡単なこともわからないとは、相当のおバカさんだな」と語る。湯川の言葉に、奈倉は言葉を発さずに怒りの涙が浮かんだ眼差しを向けるのみ。

組織的な犯罪だったこともあり、ノッカーが報復を受けないように1億円の所有権は都庁へ引き渡すことになった。だが最後の最後、金庫の中にしまわれていたカバンが空になっていることが判明。SNSでは第7話について、「奈倉の演技が鳥肌モノだった。表情1つであそこまで印象が変わるものなんだね…」「言葉ではなく目と表情で語るだけだからこそ、ノッカーと円が打ち解けたシーンは泣けた」「ふざけたシーンとシリアスシーンの緩急がスゴ過ぎるんだよなこのドラマ」といった声が寄せられている。

橋本環奈“円”と沢村一樹“湯川”の間に再び亀裂/(C)カンテレ