長期間にわたって安定的な家賃収入を得られることは、不動産投資の魅力の1つです。この魅力を現実のものにするためには、時間が経っても資産価値が落ちにくい物件を選び、購入することが重要です。そこで本記事では、資産価値が落ちないマンションの特徴とその選び方について解説します。

マンションの資産価値を決める2つの要素

マンションの資産価値を決める要素は多岐にわたりますが、そのなかでも特に大きな要素は「収益価値」と「売却価値」です。この2つは収益マンション物件を評価するうえでとても重要なので、ひとつずつ解説します。

1.マンションの収益価値

マンションを賃貸経営したときに得られる収益力に基づいて評価するのが、収益価値です。詳しい解説は割愛しますが、「収益還元法」や「DCF法」といった方法で評価することができます。平たくいいかえると、「そのマンションにどれだけ稼ぐ力があるか」を示すのが収益価値です。

この収益価値は、投資用物件でのみ考慮される概念です。自分で住むために不動産を購入する人は物件の収益力を評価する必要がないからです。銀行など金融機関の融資を利用してマンション物件を購入する場合は、金融機関の審査においてマンションの収益価値が重視されます。

2.マンションの売却価値

マンションの売却価値とは、「いま売ったらいくらになるか」を示す価値です。資産価値が落ちにくいマンションは、売却価値が落ちにくいマンションと言い換えることもできます。マンションの建物部分は時間の経過とともに劣化するため、どうしても価値が下がっていきます。

しかし、土地が劣化することはないため、立地条件に恵まれているマンションは土地の価格が維持、もしくは上昇することによって資産価値が落ちにくくなります。長期的に資産価値が落ちにくいマンションを選ぶには、立地条件に注目しましょう。立地条件についての詳細は、次で解説します。

資産価値が落ちないマンションの特徴

不動産投資家が購入するべき、資産価値が落ちないマンション。理想的なマンション物件を選ぶために、資産価値が落ちないマンションの特徴を項目別に解説します。

立地条件がいい

立地条件は、不動産の価値を決める最も重要な要素です。なぜなら、不動産は株式や投資信託のような金融商品と違って、動かすことのできない現物資産だからです。また、似たような物件はあっても同一物件は2つとありません。

首都圏の都心部や地方でも主要都市のターミナル駅近くの物件などは、常に人気が高く資産価値が下落しにくい特徴があります。むしろ、値上がりが期待できる物件もあるでしょう。

その一方で、人口減少が止まらないような地方や、東京であっても郊外の駅から離れた物件などは、大学や企業の大工場が近いなど、特殊な事情でもない限り、物件価格は下落してしまう可能性が高いです。

立地条件がいいといえる物件の特徴は、ほかにもあります。最寄り駅から近いことに加えて、その最寄り駅が特急や急行列車の停車駅だと駅の「格」が高いため、資産価値を押し上げます。

現在人口が多いことや今後人口の増加が見込める人気エリアであることも、賃貸経営には追い風です。周辺施設の充実や治安が良好であることなど、住環境に恵まれていることも入居者から支持される要素になるため、資産価値の維持・向上が期待できます。

中古マンション

意外に思われるかもしれませんが、新築マンションよりも中古マンションを購入するほうが資産価値を維持しやすい傾向があります。一般的に新築のマンションは、初めの売り出し価格が一番高く、その後20年間は値下がりし、それ以降は安定するといわれています。

自分が住むのであれば、値下がりするとしても新築物件がいいという考え方はあるでしょう。しかし、賃貸用の投資物件の場合は、新築よりも値崩れしない中古物件を選び、資産価値が落ちないように管理しながら、最終的に「出口」を目指すというのが一番いい選択と考える投資家は多くいます。

物件がある地域で需要が高い間取り

マンションが建っているそれぞれの地域には、需要が高い間取りの傾向があります。都心から近い、都心へのアクセスが良好なエリアであれば、若い人や単身世帯の人たちからの需要が高いのでワンルームマンションが人気を集めやすくなります。

その一方で、周辺環境や教育環境に恵まれているエリアでは子育て世帯からの人気が高くなるため、ファミリータイプのマンションが軸になるといった具合です。それぞれの地域特性を見極めて需要の高い間取りを選ぶことも、資産価値を維持するうえで重要な視点です。

住み心地がいい

不動産オーナーにとっては収益物件であるマンションですが、入居者にとっては自分の家です。住む人の視点で考えると、日当たりや窓からの眺望、階数、部屋の方角などは物件の魅力を決める大切な要素です。これらの要素において入居者から支持されやすい「売り」があるマンションは、資産価値が落ちにくいでしょう。

マンションの資産価値を調べる方法

マンションの資産価値は、株価やFXの為替レートのように現在価格が表示されているわけではないので、マンションの価値を数値化するにはそのための方法を知っておく必要があります。マンションの資産価値を知る方法には、公的なデータから算出する方法と、実勢価格から調べる方法があります。

公的データから算出する方法

公的なデータとは、固定資産税評価額や公示地価、路線価などです。これらはいずれも税金に関連するデータです。不動産の所有者には毎年4月ごろに固定資産税法勢通知書が送られてきます。

土地は公示地価に対して約6割から7割、建物は再建築費に対して約5割から7割程度の評価額になるため、この評価額からおおよその資産価値を推測することができます。

公示地価は国土交通省が、路線価は国税庁がそれぞれ発表する土地の価格データです。いずれも1平方メートルあたりの価格で表示されているので、マンションが建っている地点の地価推移を調べることで資産価値がどう推移しているのかを推測できます。

実勢価格から調べる方法

実勢価格から調べる方法は、とてもシンプルです。「SUUMO」や「athome」「LIFULL HOME’S」といった不動産ポータルサイトで該当のマンション名を検索してみて、売りに出ていれば「いくらで売ろうとしているのか」といった相場観がわかります。

もっともこれは売却実績ではなく売出し価格なので、実際の売買データから探す方法もあります。国土交通省は「不動産取引価格情報検索」というサービスを提供しており、このサービスを利用すると実際にあった不動産取引のデータを検索できます。

該当するマンションの売買情報があれば取引価格が参考になりますし、なかったとしても近隣の類似物件から売却価格(資産価値)を推測することができます。

資産価値の高いマンションを手に入れる方法

資産価値が落ちない、価値あるマンションを手に入れる方法として、ここではリノベーション戦略を紹介したいと思います。先ほど中古マンションは資産価値を維持しやすいと述べましたが、中古マンションであっても時間の経過とともに資産価値が低下することは変わりません。

そこで、価格が手ごろでありながら需要の高い中古のワンルームマンションを購入し、その物件をリノベーションすることによって価値を再生すれば、「立地条件がよく差別化されたワンルームマンション」ができあがります。

東京など大都市圏では単身世帯が増加しており、令和2年(2020年)の国勢調査では初めて東京都の世帯内訳のうち単身世帯が半数を超えました。今後もこの傾向が続くと見られ、それに伴ってワンルームマンションの需要も見込めます。

中古マンションは手ごろな価格で好立地の物件を購入できるメリットがある一方で、「古い」ことがネックになります。リノベーション戦略はこの唯一に近いデメリットを克服できるため、資産価値の落ちにくいマンションを手に入れる有効な方法といえます。

資産価値が落ちないマンションを創造する成功パターン

資産価値が落ちないマンションを選ぶことは、大切な資産の価値を守るだけでなく不動産投資の長期的な安定化につながります。資産価値が落ちないマンション物件には特徴があるので、当記事で解説した特徴を理解したうえで物件選びをしてください。

また、リノベーション戦略は資産価値を下げないだけでなく資産価値を高める効果も期待できるので、「中古+ワンルーム+リノベーション」の組み合わせはぜひとも意識しておきたい成功パターンです。

山崎 博久

リズム株式会社

アセットコンサルティング事業部長

(※写真はイメージです/PIXTA)