三菱電機の社員で、過労などを理由とする「うつ病」で休職していた30代男性が今春、およそ9年ぶりに復職を果たした。11月28日に記者会見を開いた男性は現在、フルタイムのリモートワークで働いていると明かした。

一時は解雇されるなど、会社側との間で「敵対的関係」が長らく続いたが、労働組合や弁護士の支えもあって、今年11月に紛争が解決した。

三菱電機は、弁護士ドットコムニュースの取材に和解成立を認め、男性とその家族に謝罪したうえで、今後のサポートを約束した。

「当該従業員の方が長期療養を余儀なくされることになったことを、当社として大変重く受け止めております。すでに23年4月で復職頂いておりますが、引き続きご本人に寄り添いながら、会社としてしっかりとサポートしてまいります」

男性は記者会見で「労働者側の勝利和解による円満解決だが、今回の結果は三菱電機による変革の現れであり、使用者側にとっても勝利だと思う」と強調した。

リモート、時短スタート、細やかな上司面談で働きやすく

男性は2013年4月から研究職で働いていたが、過労などでうつ病を発症して、2014年12月から今年4月まで休職していた。

2016年に労働組合「よこはまシティユニオン」に加入。休職後に、会社から解雇されることもあったものの、長時間労働を理由とした労災認定を受けて撤回された。

その後も復職に向けた交渉を続けて、今年4月にようやく職場復帰を果たした。また、休業損害や慰謝料など求めていた損害賠償についても、会社が解決金(金額は非公表)を支払う形で合意し(11月7日付)、相互に円満解決を確認したという。

現実的な職場復帰に向けては1年以上かけて交渉し、別の部署への職場変更やリモートワーク、短時間勤務など負担軽減の取り組みが実現された。

リモートが良いという人もいれば、リモートが原因で体調を崩す人もいると思うが、私にとっては良かった。(復職にあたって)遠方の実家から職場に引っ越すのは、体力的につらいはずだった。仕事で心配なことがあっても、一緒に暮らす家族と話せる。家族の存在は大きい」

少しずつ勤務時間を延ばし、復職から3カ月後にはフルタイム勤務が可能となった。人事と上司との日々の面談や産業医面談など、復職のサポートも充実しているという。

●実家に届いた年賀状「あなたのせいで努力しない人増えた」

この9年間「三菱電機を辞めよう」と思ったことは何度もあるという。

長い休職が原因なのか、批判の対象になったこともあったと明かす。

「SNSでの批判はなかったが、わざわざ実家に嫌がらせ年賀状が匿名で送られてきたことがあった。三菱電機を名乗り、『あなたのせいで努力しない人が増えました』などと書かれていた。なぜ実家の住所を知っているのか怖かったです」(男性)

投函した人を見つけてほしいと会社に頼んだものの、結局誰がやったのかはわからなかったという。

男性の代理人をつとめた嶋﨑量弁護士は「三菱電機と男性の紛争は一区切りついた。裁判をせずとも、賠償を得たうえでしっかり復帰し、就労が続いている。労働組合に入ることでこうした取り組みができると知ってもらいたい」として、労働問題で悩んだときに組合や弁護士などを頼ってほしいと呼びかけた。

三菱電機は会見後、弁護士ドットコムニュースの取材にコメントを寄せた。

「16年11月に労災認定を受けて休職していた当社従業員の方と23年11月7日付にて本件解決金の合意に至ったことは事実です。ご本人ならびにご家族の皆様に大変なご心労をお掛けしたことを、あらためて心からお詫び申し上げます。

当該従業員の方が長期療養を余儀なくされることになったことを、当社として大変重く受け止めております。すでに23年4月で復職頂いておりますが、引き続きご本人に寄り添いながら、会社としてしっかりとサポートしてまいります」

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