多額の売掛金(借金)を抱え、若い女性が風俗店勤務などに追い込まれる「悪質ホスト」問題で、支援団体とホストクラブオーナー約20人が11月28日午後、東京・新宿区役所で初めて話し合いの機会を持った。このあと、支援団体の代表は、売掛金の請求を放棄する内容などを盛り込んだ「誓約書」をオーナーたちに手渡したことを明かした。(ジャーナリスト・富岡悠希)

●「売掛」の放棄を求める誓約書

悪質ホスト問題をめぐって被害者の親らから相談を受けている「青少年を守る父母の連絡協議会」(略称:青母連/せいぼれん)代表の玄秀盛さんが、新宿・歌舞伎町の事務所で記者会見を開いた。

誓約書では、ホストクラブとグループ店舗に対して、次の4点の順守を求めた。

(1)売掛に対しての請求は関係者(ホスト・お客様)の全てを放棄 (2)今後の売掛金営業については、限度額月額○○万円の自粛営業 (3)自粛期間は、今年12月1日からの3年間。青母連とホストクラブの合意で、1年延長の自動更新 (4)当事者と被害者家族に対して、謝罪と共に誠意ある支援として、当事者や家族の社会復帰、救済などに対して協力を惜しまな

このうち(2)は、女性1人あたりの限度額で、オーナーが自主的に決めることを求めた。

玄さんは誓約書の内容について、「売掛金を一切認めていないわけではなく、上限額も空欄。オーナーにかなり譲歩している」と説明した。

●最大手オーナーが頭を下げたという

玄さんによると、この日の話し合いの発端は、11月17日にさかのぼる。この日、地元の吉住健一・新宿区長と玄さんらは、悪質ホスト問題などに関する記者会見を実施した。

吉住区長は、ホストクラブ側に業界団体の立ち上げや、売掛についての自主ルール作りを要請したことを明らかにした。そして、この舞台裏で、区側から青母連にホストクラブとの直接対面を求められた。

歌舞伎町では現在、ホストクラブは約300店舗あるとされる。11月28日に集まったオーナー約20人はグループ経営で複数のホストクラブを持っており、彼らで歌舞伎町のほとんどの店舗をカバーしているという。

区役所での話し合いでは、冒頭、玄さんが青母連の活動の状況を報告。その後、最大手グループのオーナーが「(悪質ホストの)被害者、家族に対して迷惑をかけた」と頭を下げたという。

ただし、その後、オーナーたちが1人ずつマイクを握る場面では、自分たちのビジネススタイルの説明や釈明に終始した。「売掛金はやっているけど、教育もしている。外れたものがいるのも否めないが……」のような発言だったという。

●「その気があるのならば、すぐに持ってくる」

1時間の話し合いの最後5分で、玄さんは誓約書を渡した。そしてオーナーには個別に、署名して青母連の事務所まで持参するように求めた。

期限は設けていないが、売掛金の上限を定める自粛期間は今年12月1日からとしている。玄さんは、「その気があるのならば、すぐに持ってくるでしょう」と語る。

ただし、区役所内で、約20人のオーナー全員に名刺を配った玄さんに対して、同じように名刺を渡してきたのは、1人だけだったという。

なお、玄さんはホストに対する「売掛禁止条例」を求める署名が、6千筆を超えたことも明かした。今後も署名集めは続けるが、今月30日までに集まった分までを第1弾として、吉住区長に提出するとしている。

●前日には警察庁長官が視察するなどの社会問題

青母連は今年7月、東京・歌舞伎町に事務所を構える公益社団法人「日本駆け込み寺」内に発足。「ホストに貢ぐために、娘が風俗で働いているのを止めたい」などの相談が届いていたことを受けたもの。

玄さんは親らの相談に対応しつつ、11月に入ると連日のようにテレビ・新聞・ネットなどの各種メディアに登場。悪質ホスト問題は、特定のホストや若年女性にとどまらず、ホストクラブの儲け方自体にあると訴えてきた。

こうした動きが実り、開会中の国会で岸田文雄首相が政府として各種対策を「しっかり行ってまいります」と明言。さらに、立憲民主党11月30日午後にも、対策を盛り込んだ法案を今国会に提出する見通しとなっている。

同時に警察の動きも活発となり、11月27日夜には、全国警察トップの露木康浩・警察庁長官が異例となる歌舞伎町ホストクラブ街の視察を実施した。

悪質ホスト問題、支援団体がクラブオーナー側に「売掛金の放棄」求める誓約書