投資への注目が高まっている昨今、なかでも王道といえるのは株式投資でしょう。しかし「株式投資を始めたいが、どの銘柄を選べばいいかわからない」という悩みを抱える人は少なくありません。そこで本記事では、金融業界25年のキャリアを持つFP田中和紀氏による著書『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)から、株式投資における銘柄選びのコツについて、解説します。

株式投資のキホン

投資といえば株というイメージがあり、昔から人気は定着しています。株式市場はニュースでもよく取り上げられ、代表的指標である日経平均株価は毎日伝えられます。

日経平均株価とは、日本を代表する会社の株を225銘柄ピックアップした修正平均株価です。他には、TOPIXといって、プレミアム市場※1の上場株などの時価総額をあらわしたものもあります。

※1 プレミアム市場:日本を代表する会社が上場している市場のこと。

日経平均株価やTOPIXなどの動向が日本全体の経済状況を示している、ともいえます。これらの数値が上昇していれば、日本の経済が好況で、下落していれば不況になりつつある、と思ってよいでしょう。

株式市場を通して経済状況を把握するだけでなく、投資家として取引に参加することもできます。たとえば、自動車会社・トヨタの業績が今後よくなり、株価が上昇すると思えば、トヨタ株を購入します。そして上昇したあとに売却すれば利益となり、下落して売却すれば損失となりますよね。

また、トヨタ株を購入して持っている間に、配当金を受け取れます。これら値上がり益であるキャピタルゲインや、配当益であるインカムゲインを得るために、投資家は株式市場に参加するのです。

利益を得る株の購入方法

実際に株を購入する場合は、証券会社に口座を開設しなければなりません。その口座を通じて株式を売買することになります。口座を開設し入金すると、パソコンやスマホを通して取引口座にアクセスでき、気軽に売買できますよ。

株価は毎日・毎秒で動いており、1日に何回でも売買ができます。取引単位は100株単位で、株式を上場している会社であれば、どの会社でも売買可能です。

たとえば、ある会社の株価が1株1,000円であれば、10万円で100株購入し、1,200円に上昇すれば12万円になります。そこで売却すれば2万円の利益となるのです。

注文方法は、今の価格で買う「成行注文」と、値段を指定した予約注文である「指値注文」もできます。現在の価格が1,000円であれば、成行注文では1,000円ですぐに購入でき、指値注文では900円で購入したいといった予約注文が可能です。ただし、値段が下がらなければ指値注文は成立せず、購入できない場合もあります。

では、どのような株を購入すると、その後上昇して利益を得られるのでしょうか? それは誰もが望んでおり、知識や情報を駆使して予想するのですが、簡単ではありません。基本的な投資指標は、ここでお伝えしておきましょう。

まず、今後株価が上昇すると考えられる銘柄は、「PER」や「PBR」の数値が低い株です。

「PER」とは?

PERとは、株価収益率のことです。会社の利益の割には妥当な株価を付けておらず、割安な株価になっていると考えられる銘柄を探し出してくれます。会社は利益を上げているにもかかわらず、株価は低価格で見放された銘柄ということです。

計算式は「株価÷1株あたりの純利益」です。株価が1,000円で、1株あたりの純利益が100円であれば、10倍になります。この数値は低ければ低いほど、株価が割安で購入できるチャンスです。一般的に「15倍以下は割安」と判断されるケースが多いようですが、業種や時期などで上下します。PERはひとつの目安として覚えておきましょう。

ただし、これが利益に直結するわけではなく、さらに独自の分析が必要です。たとえば、PERが低い会社がわかれば、今後の動きをチェックします。PERが低い割安な会社は、その後上昇したかどうかを調べるのです。こうした調査を繰り返し、上昇するケースが多いのなら行動に移します。そしてトライアンドエラーで独自の投資手法を完成させ、勝ち組投資家になっていくのです。

PBR」とは?

PBRとは、株価純資産倍率のことです。「株価÷1株あたりの純資産」で計算できます。現在の株価はその会社の純資産から考え、妥当な価格かどうかを示します。純資産は多いが、株価は低価格で放置されているとしたら、購入チャンスでしょう。

PBRは数倍が妥当で、1倍以下となれば超割安となります。1倍以下は会社の純資産より株価が低いため、株を買い占めることで、会社という財産を安く手に入れられるのです。その後、会社にある資産を売却すれば利益となります。

ただ、純資産には時価会計になっていないもの、換金が難しいものもあるため、1倍以下がすべて解散価値※2より低いとも限りません。総合的な判断が必要でしょう。この数値も、低い株を発見したあとが大切です。割安銘柄がその後どのように動いたかをウォッチし、傾向をつかめれば売買して、トライアンドエラーで投資手法を見つけていきましょう。

※2 解散価値:企業の資産総額から負債総額を差し引いた株主資本=純資産のこと。

配当が多い株に注目

他には、配当性向や配当利回りなどもあります。これらは配当に重きを置いて、インカムゲインが期待できる会社を探す指標です。長期に株を持ち続けたい場合、配当が多い株は魅力です。

配当性向は、「1株あたりの配当÷1株あたりの利益×100」で計算できます。その会社の利益を、配当に多く割り当てているのかどうかです。数値が高ければ、株主に多くの利益を還元している会社、ということになります。配当性向が高ければ、今後も株主に利益を多く還元してくれる会社だと思われ、株の長期保有に向いていると判断できるでしょう。

配当利回りは、「1株あたりの配当÷株価×100」で計算できます。配当と株価の関係で、数値が高ければ、株価の割には配当を多く出す会社となり、購入チャンスとなります。その株を買えば、よい利回りが期待できるのです。

これら配当性向や配当利回りは、数値が高いほど、よい会社といえるでしょう。長期で株を持ち、配当をもらい続けて資産を築きたい投資家が買うのに向いています。PERやPBRを重視するキャピタルゲイン狙いの投資家と逆で、インカムゲイン重視の投資家ということになります。

他にも投資指標は多くありますが、すべて目安であって、必ずしも投資家に利益をもたらす手法ではありません。ただ土台となる考え方で、会社のファンダメンタルズを知るうえでは欠かせないものです。

私の実際の株式投資は、20年近く持ち続けている商社株が3倍ほどになり、配当金も年2~3%程度を受け取っています。これらのお陰でプラスではありますが、銀行株や不動産株などでマイナスになったりもしています。中には上場廃止になってしまったものもあり、紆余曲折です。

長期投資で分析もほどほどでしたが、アベノミクスの恩恵は得られています。ただ、実際は分析するに越したことはありません。とくに短期投資では、ファンダメンタルズ・テクニカル的要因などで上下するため、分析は必須でしょう。

田中 和紀

ファイナンシャルプランナー

※本記事は『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

(※写真はイメージです/PIXTA)