Text:早川加奈子 Photo:橋本優

各地で幸せな競演を繰り広げているKroiの対バンツアー『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』4日目@大阪。舞台となったZepp Nambaの夜を共に盛り上げるこの日の対バン相手は、Nulbarichだ。

On and On」のダウナーでジャジーなバンドサウンドと、RUN DMCのロゴトップスを着たJQ(Vo)の歌声が場内に鳴り響いた瞬間、場内から大歓声が上がる。心地よいグルーヴに身を任せ、片手を掲げてコール&レスポンスを楽しむオーディエンスたち。冒頭1曲ですでに観客の心を鷲掴みにしながらも、JQが楽しそうに会場を煽る。

「メインのKroiがくる前にもっとしっかり上がってもらわないと、Kroiに申し訳ないので……。いいですか、みなさん? しっかり前座をやらせてもらうぜ」

話題のメロウチューン「Skyline」を挟みつつ、「NEW ERA」「STEP IT」などのグルーヴィなナンバーでひとしきり盛り上げた後も、「それ(その盛り上がり方)じゃまだKroiは出てこないな。Kroi出てきてぇ~好きぃー!」と叫び、クールなサウンドとのギャップで観客の笑いを誘う。

「大阪なのに……」と言い訳しつつ、何かをつかもうとする勇気を讃えた「TOKYO」を披露した後は、「せっかくのツーマンなんで」というJQの呼び込みでKroiの内田怜央(Vo&Gt)がステージに登場。そして、「1曲作ってきました」とJQが紹介したのはなんと、Kroiの内田をフィーチャーしたこの日初披露となる新曲「DISCO PRANK」。「ヤバ過ぎぃ~!」とはしゃぐ内田の鋭いラップも光るファンキーでポップな多幸感満載の音のイタズラ(=PRANK)に、盛り上がる場内は文字通りディスコ状態だ。

内田との競演後、歓喜の声をあげる場内に向かって、「(「DISCO PRANK」のリリースは)全然決まってないの、ごめん。いつか、ね!」と、JQ。この日限定の超サプライズ曲を最後に投下し、Kroiファンの心をしっかりと射止めてみせた。

「みなさん、Kroi始めます!」 1曲目に話題の新曲「Hyper」を披露し、そのエネルギッシュなヒップホップ×ファンクなグルーヴで場内のテンションを一気にぶち上げた直後、Kroiの内田がステージの上からそう告げる。

その宣言通り、内田のボーカルとキーボードの千葉大樹が歌うボコーダーVoがファンキーに絡み合う「Balmy Life」を皮切りに、「Network」→「HORN」と、圧倒的な演奏力で作り出すジャズファンクリズムで観客を踊らせていく。

色鮮やかな内田の歌声、長谷部悠生のギター、関将典のベース、益田英知のドラム、千葉のキーボード。それらすべてから作り出される躍動感あふれるリズムから、コロナ禍以降、着実にライブ経験を重ねてきたライブバンドとしての喜びとプライドがほとばしる。

「今回の対バンツアーは自分たちの夢がずっと叶っていくツアーなんですよ。Nulbarichなんて学生の頃に聴いてたし(そんなアーティストと対バンなんて)、ヤバくない?」

嬉しそうに語る内田に、メンバー全員が口々に「ヤバいよね」と興奮気味に同調する。あの瞬間の5人の表情は、2024年1月20日に初の日本武道館でのワンマン公演を控えている上り調子のバンドのそれではなく、純粋な“音楽少年”の輝く笑顔だったと思う。

そんな“音楽少年”たちの音楽に対する愛と絶え間ない探究心も、Kroiというバンドの本領だ。赤い照明だけが妖しくステージを照らした「Funky GUNSLINGER」→「侵攻」→「Never Ending Story」と続くディープなゾーンは、まさにそれを象徴する見どころ場面のひとつだった。あの深淵な世界をさらりと披露して見せる演奏力の高さと、音楽的なレンジの広さ。あれこそが、Kroiが彼らと同世代のオーディエンスだけでなく、彼らよりもずっと上の世代の音楽ファンの心もガッチリと掴んでいる最大の理由だろう。だからこそこの日の競演相手、Kroiにとって憧れの存在である大先輩のNulbarichも、この日の対バンに特別な思いで挑んだ模様。

「今日のNulbarichのメンバー構成(ツインギターのスタイル)、今日が初らしいよ。レアパターン」と、ギターの長谷部が嬉しそうに話すと、「俺らのために?」と内田も笑顔で驚く。この日のNulbarichとKroiのように、世代もキャリアもジャンルも関係なく共に同じ土俵に立ち、切磋琢磨し讃えあうことができるのも“音楽”の面白さであり、醍醐味だ。

Astral Sonar」→「selva」と、ディープなKroiワールドを濃密な演奏でガッツリと聴かせた後は、「Small World」をバネに再びファンキーなパーティチューンを連発。「Page」のアウトロのインスト部分でカオスなファンクグルーヴを炸裂させ、笑顔で楽しそうに片手を掲げて身体を揺らすオーディエンスの熱を頂点まで上げていく。

「最高の日になりました。またお会いしましょう」 内田のMCの後、本編最後に披露されたのは「a force」。内田と長谷部が互いに向かい合ってギターを熱く鳴らした直後、突如、ギターを掲げて歯で引き出す長谷部。時代や国境を超えたさまざまな音楽の要素を、洗練されたセンスで自在に取り込み、歌い奏でる。そんなZ世代らしいスマートさがKroiの魅力だが、その音楽の根底にあるイナタイほどの音楽魂もまた、彼らの大きな魅力なのだと改めて思い知る。

鳴り止まない拍手とアンコールを求める観客の声に応えて、最初にステージに登場したのは、ヒップホップ世代のファンクビートを鳴らす「Mr. Foundation」で圧倒的なドラムソロを披露した益田。

「今日は地味めの衣装にしようかなって」と語る益田の衣装は、肌が大胆に透けたメッシュのタンクトップ。「いくらだったの?」とステージに登場した内田から尋ねられると、「341円。シーだよ!」とお茶目に答える益田に場内から爆笑の声が響く。

「最後にいい感じの曲やって終わりましょう」と告げた内田が「Everybody Funky!」と叫ぶと、キラーチューン「Juden」を投下。サングラスを外してパーカッションを叩きながら歌う内田。カラフルな音を奏でるキーボード。ファンキーなグルーヴを鳴らすベース、エモーショナルなギターソロジャズファンクドラム。すべてが怒涛のように重なり合って押し寄せる中、「Everybody Funky!」のコールにオーディエンスも力強いシンガロングで応える。

シャウトし尽くした内田が一足先にステージを去った後も、長谷部、関、益田、千葉が息の合ったアウトロを熱演。この演奏に対する情熱と探究心こそ、彼らの最大の武器だ。

憧れの存在や共闘する仲間たちと日々熱い対バンを繰り広げている『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』。バンドの中に脈々と流れ続ける“音楽少年”の魂と向き合う日々を通して、彼らはいったい何を見出すのか? 来る1月20日の初の日本武道館ワンマン公演への期待がさらに高まるばかりだ。

<公演情報>
Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4

2023年11月18日(土) Zepp Namba

セットリスト

■Nulbarich
01.On and On
02.Reach Out
03.Super Sonic
04.Skyline
05.NEW ERA
06.A Roller Skating Tour
07.STEP IT
08.TOKYO
09.DISCO PRANK feat. Leo Uchida (Kroi)

■Kroi
01.Hyper
02.Balmy Life
03.Network
04.HORN
05.Mr.sFoundation
06.Funky GUNSLINGER
07.侵攻
08.Never Ending Story
09.Astral Sonar
10.selva
11.Small World
12.Page
13.a force
EN.Juden

<ツアー情報>
『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』

※終了公演は割愛

12月2日(土) Zepp Sapporo
ゲスト:クリープハイプ

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kroi-t/

<ワンマンライブ情報>
『Kroi Live at日本武道館

2024年1月20日(土) 日本武道館
開場17:00 / 開演18:00

<Nulbarichツアー情報>
「The Roller Skating Tour ‘24」

2024年1月12日(金) 福岡・Zepp Fukuoka
2024年1月19日(金) 北海道・Zepp Sapporo
2024年1月25日(木) 愛知・Zepp Nagoya
2024年1月26日(金) 大阪・Zepp Namba
2024年2月3日(土) 宮城・SENDAI PIT
2024年2月7日(水) 東京・Zepp Haneda
2024年2月24日(土) 台湾・Legacy Taipei

ツアー特設サイト:
https://nulbarich.com/feature/therollerskatingtour_24

関連リンク

Kroi公式サイト:
https://kroi.net

Nulbarich公式サイト:
https://nulbarich.com/

『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』11月18日 Zepp Namba