帝国データバンクは自社データベースをもとに、全国約119万社の事業会社を対象に女性が社長(代表)を務める企業について分析を行った。

 いわゆる「女性管理職30%目標」が2013年に政府から明確に打ち出され、今年で10年となる。当初は2020年が目標の期限だったものの“2020年代の可能な限り早期”に修正されるなど、進捗は芳しくない。対策の一つとして、今年6月に打ち出された「女性版骨太の方針2023」では、プライム上場企業に対して2030年までに女性役員比率を30%以上にするよう求めている。このような目標設定や法整備などを含めて女性活躍に向けた施策が講じられ、これまで以上に女性リーダーを増やそうとする動きが強まっている。

 そこで帝国データバンクが国内企業の女性社長比率について調査を行ったところ、2023年10月時点で8.3%となり、前年の8.2%を上回り過去最高を更新した。小幅な上昇にとどまり依然として1ケタ台が続き、統計として遡れる1990年(4.5%)から緩やかに上昇しているものの、低水準にとどまっている。

  • 帝国データバンクは自社データベースをもとに、全国約119万社の事業会社を対象に女性が社長(代表)を務める企業について分析を行った。同調査は2022年10月に続き、今回で10回目

  • 集計対象は「株式会社」「有限会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」

1. 年齢構成比、女性社長は「60~64歳」が13.4%で最多 75歳以上が約2割を占める

 女性社長を年齢構成比でみると、「60~64歳」 が13.4%で最も高かった。次いで 「70~74歳」が 13.3%となり、僅差で続いた。

 日本全体で高齢化が進行しているなか、女性社長でも同様の傾向が表れている。60歳以上の割合は59.7%となり、1995年(42.6%)から17.1pt上昇し、全体の約6割を占めた。また、後期高齢者に該当する75歳以上の割合は20.6%となり、初めて2割を上回った。男性社長も含めた全体では60歳以上は52.5%、75歳以上は13.9%となっており、女性社長の高齢化が目立っている。

2. 都道府県別では 「徳島県」が12.0%でトップ、 四国地方を中心に西日本で高水準

 都道府県別では「徳島県」が12.0%で最も高かった。前年から0.4pt上昇し2年連続のトップとなった。さまざまな捉え方ができるなかで、古くからの言い回しで“讃岐男に阿波女”という表現もあり、地域の特色が表れているともいえるだろう。徳島県など四国地方をはじめ、西日本エリアを中心に女性社長比率が高い傾向が見られた。また、2013年以降は首位が続いていた「沖縄県」は11.6%(前年比横ばい)となり、11年ぶりにトップから退いた。

一方で、14年連続で最も低かった「岐阜県」(6.0%、同0.2pt上昇)を筆頭に、製造業が集積している中部地方では低調な結果が続いている。

3. 業種別では「不動産」が17.3%でトップ、「建設」「製造」は依然として低水準

 業種別の女性社長の比率をみると、「不動産」が17.3%になり、他業種に大きく差をつけて最も高かった。次いで「サービス」(11.2%)や「小売」(10.9%)といった、「BtoC」業態が中心の業種が続き、全体(8.3%)を上回った。

 他の7業種は8%以下で推移している。なかでも「建設」は5年連続横ばいの4.8%で低水準が続いており、18年連続の4%台、27年連続で最も低かった。次いで「製造」が5.6%で続き、25年連続で「建設」に次いで2番目に低かった。

4. 業種細分類別では「保育所」がトップ、美容関連や社会福祉関連が続く

 業種細分類別でみると、「保育所」が40.5%で唯一4割を超えた。前年に続いてトップだったものの、2019年(43.3%)からは低下している。次いで「化粧品販売」(36.2%)、「美容業」(33.7%)といった美容関連や、「老人福祉事業」(30.8%)、「身体障害者福祉事業」(28.3%)など社会福祉関連が続いた。

5. 就任経緯は女性社長の半数以上が「同族承継」、次いで「創業者」が3割で続く

 就任経緯別でみると、「同族承継」による就任が50.6%となり、全体の半数以上を占めており最も高かった。男性社長の40.2%と比較して10pt以上高く、女性社長における中心的な就任経緯となっている。

次いで「創業者」が35.2%で2番目に続いた。男性社長の40.1%より4.9pt低く、前年からも横ばいとなり、全体的な傾向は前年調査時点と大きくは変わっていない。

 今年発表の“女性版骨太の方針2023”では女性起業家の育成・支援が打ち出され、さまざまな施策が出始めているなかで女性の起業に関する動向が注目される。以下、「内部昇格」「出向・分社化」「買収」「外部招聘」が続いたが、いずれも男性を下回っている。

6. 資本金区分別では「1000万円未満」が9.2%でトップ、企業規模が大きいほど低水準に

 資本金別の女性社長比率をみると、「1000万円未満」が9.2%となり最も高かった。以下、「1000万円以上5000万円未満」(7.9%)、「5000万円以上1億円未満」(5.7%)、「1億円以上」(2.7%)の順となり、資本金の額が小さい企業ほど女性社長比率が高い傾向がみられた。なかでも、「1000万円未満」では1990年時点 (5.2%) から 4.0pt増加している。 対して「1億円以上」では、同時期から1.5ptの増加にとどまっている。

7. 出身大学は「日本大学」が4年連続でトップ、前年から20%以上の増加は4大学

 女性社長の出身大学別では、「日本大学」が前年比8人増の277人となり4年連続で最多となった。同大学では、過去最高の女性社長数を更新した。次いで「慶應義塾大学」(255人、前年比10人増)がトップと22人差で続き、「早稲田大学」(239人、同8人増)も含め3つの大学で200人を超えた。主に首都圏私立大学が上位を占め、上位10校の顔ぶれは前回調査から変わっていない。女子大学では、「日本女子大学」(142人、同9人減)がトップとなったものの前年比で減少。「共立女子大学」(122人、同5人増)が続き、「聖心女子大学」(98人、同3人減)は100人を下回った。

 前年から最も増加したのは「愛知大学」で、前年比23.5%増となった(今回調査時で20名以上となった大学が対象)。その他、「千葉大学」(同23.1%増、48人)や「国際基督教大学」(同22.6%増、38人)、「関東学院大学」(同21.7%増、28人)では、前年から2割を上回る増加幅となった。

今後の見通し ~ 女性リーダーの育成へ、スキル/リーダーシップ教育と柔軟な働き方の推進がカギ ~

 女性社長比率は8.3%で、前年を上回り過去最高を更新したものの、依然として1割を下回る低水準にとどまった。また、帝国データバンクが2023年7月に実施した「女性登用に関する企業の意識調査(2023年)」では、女性管理職の平均割合は前年から0.4pt上昇し9.8%となった。いずれの調査も「過去最高ながら低水準」の局面にあり、拡大こそしているものの社長や管理職などを含めた女性リーダーの輩出は芳しいとは言い難い。

 女性リーダーがこれまで以上に求められるようになった潮流は、海外ではさらに盛んである。欧州を中心にSDGsやESGの観点から重要視されており、女性活躍は企業の「見られ方」を大きく左右する時代となった。プライム上場企業では、先んじて女性役員比率の目標が設定されたが、このように大企業が先導役として女性活躍を推進する流れは、今後ますます強まるだろう。

 一方で、比率の向上を目的にした起用には落とし穴も多い。例えば、ポジションを用意したにも関わらず適材適所な起用ができず、役職が務まらず失敗に終わることでその後の登用方針が消極的に転じてしまう事例も聞かれる。政府は女性起業家の育成・支援も推進する方針であるなかで、リーダーとして「適任者」を増加させていくためには、リスキリングなどによる技能向上と組織をマネジメントできるリーダーシップ教育の両面が欠かせない。加えて、ライフイベントとキャリアを両立できる柔軟な働き方を取り入れた制度面の整備・拡充も踏まえ、次世代を担う女性リーダー育成に向けて継続した支援が必要となる。

  • <参考> 女性管理職の平均割合  ― 女性登用に関する企業の意識調査(2023年)より

配信元企業:株式会社帝国データバンク

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