高校生扶養控除を一律縮小することを検討…ニュースになるや否や、批判が殺到しています。実際、高校生、さらには大学生をもつ親の負担はどれほどのものなのか。みていきましょう。

高校生扶養控除一律縮小の報道に批判

高校生がいる世帯の扶養控除の見直しについて、政府・与党が所得税で38万円、住民税で33万円としている控除の水準を、所得に関係なく一律で引き下げて縮小し、税負担は児童手当の範囲内にとどめるようにするという案が検討中とニュースになりました。当初は2024年12月からの児童手当の高校生への拡大に合わせて廃止の方向で進めていたものの「年収によって税負担分を手当てが上回ることになる、不公平だ!」と批判が殺到し、「では縮小にとどめて、税負担を手当の範囲内に収めましょう」という流れのようです。

しかしながら検討中の案では、これまで扶養控除を受けていた高校生のいる世帯にとっては、負担増とはならないまでも児童手当拡充の恩恵にはまったく預かれないことになります。

2023年1月に岸田首相が年頭会見で検討を表明した「異次元の少子化対策」。「少子化問題は待ったなしの課題」と声高らかに宣言しました。しかし、新たに3兆円半ばの財源が必要とされ、社会保障の歳出改革や社会保険料の上乗せで調整するとの見方もありましたが、いまだに検討が続いています。

今回の報道に対しては、「扶養控除の縮小は子育て支援に逆行している」という声が多く、縮小案も現実となるかも不透明。結局、さらに「検討します」ということになる予感さえします。

実際に高校生のいる世帯からは、「高校生、大学生と、教育費が膨れ上がるタイミングで、ここからが正念場。より手厚い支援をお願いしたい」という声が多く聞かれます。

高校生~大学生…実際の教育費は?

では、高校生、さらには大学生のいる親の負担はどれほどなのでしょうか。日本政策金融公庫『教育費負担の実態調査結果』(2021年12月20日発表)でみてみましょう。

高校入学から大学卒業までにかける子供ひとり当たりの教育費用(入学・在学費用)は 平均942.5 万円。

さらに進路別にみていきます。まず高校。入学費用が35.0万円、在学費用は年間75.6万円。3年間で264.6万円になります。

国立大学へ進学したなら、入学費用が67.2万円、在学費用は年間103.5万円。4年間で481.2万円になります。

私立大学文系ならどうでしょう。入学費用は81.8万円、在学費用は年間152.0万円。4年間で689.8万円になります。

私立大学理系ならどうでしょう。入学費用は88.8万円、、在学費用は年間183.2万円。4年間で821.6万円になります。

高校の場合は、多くが自宅から通うでしょうが、大学になると一人暮らしを始めるケースも多いでしょう。月10万円前後の仕送りが平均だといわれ、その負担分も重くのしかかります。

現在、第一子の誕生時の父親の年齢は、平均33歳。そこから考えると、高校生の親の年齢は40代後半くらいでしょうか。正社員だったなら、平均給与は月収で39.5万円、年収で652.0万円というタイミングです。

50代になると、月収は42.1万円、年収は693.1万円、50代後半では月収43.1万円、年収は701.6万円とピークに達しますが、教育費はどんどん膨れ上がっていきます。給与が増えていくといっても、まったく楽にはなりません。

――異次元の少子化対策……岸田総理からは、まったく応援する気が感じない

――ちぐはぐな政策ばかり。子育てを知らない人が論じているのかしら

――岸田総理は、子育てをしたことがないのだろか?

子育て世帯から溢れる、さまざまな声。そもそも岸田総理、「聞く力」を武器に総裁選に立候補したはず。ぜひいまこそ、国民の声に耳を傾けていただきたいものです。

[参考資料]

日本政策金融公庫『教育費負担の実態調査結果』

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

(※写真はイメージです/PIXTA)